第116話 作戦会議
「よし、じゃあ俺たちの作戦を話すぞ。まずは王城に」
「なるほど……。しかしそれでは王城にいるスタイリストに見つかりはしないか?」
「まだ何も言ってねえよ! 何あの王城スタイリストいんの!?」
「そうだ。主にシキサイのスタイリングを担当している」
「なんで王様じゃねえんだよ! シキサイの服とかどうでもいいだろ!」
「ああ違うぞ。服の方のスタイリストではなく、髪を切る方のスタイリストだ」
「そっちだったのかよ! なら尚更どうでもいいだろ! シキサイベレー帽被ってるから多分髪型気にしねえわ!」
「ですが玄司様、シキサイはベレー帽を脱ぐと髷を結っていますよ」
「そうなの!? 画家なのに!? 何前世が武士だったとかそういうこと!?」
「そうではありませんが、前職が力士だったらしいです」
「ああ鬢付け油とかでヘアセットしてもらってんだ! なんで当たり前みたいに日本の国技伝わってんだよ!」
「よく知りませんが、噂によると私の祖先が伝えたそうです」
「まあ余計なことしてんなお前の一族! お前の祖先も力士なの!?」
「いえ、行司だったらしいです」
「そっちなんだ! 珍しい家系! 鬼のくせに!」
ちょっと待ってくれ、こいつらに真面目な話するのってこのペースだと無理なんじゃねえか!? 全然まともに取り合ってくれねえし、作戦伝えるのもひと苦労だぞこれは……。
「ちょっと本当にお前ら1回黙れ! とりあえず聞け!」
「分かりました。ヘッポコ、この聴診器を使ってください」
「心拍音聞いてどうすんだよ! 話を聞けっつってんの!」
「だが城金玄司よ、お前の心拍音は大切だぞ。もしお前の心臓に異常があったら王に対峙する時にも不安になる」
「うん大丈夫だよ多分! 俺のこの体神様が作ってんだから! 健康上の問題はねえよ!」
「玄司様、どちらかと言うとマヨネーズを大量に摂取している私の方が健康上危ないのでは?」
「やっと気づいたのお前!? 分かったらもうマヨネーズやめろよ!?」
「分かりました。1日18本に減らします」
「待ってお前今まで何本摂取してたの!? 怖いんだけど!?」
ほらまた高橋のマヨネーズの話になってるじゃねえか。いつ作戦言えんだよ本当に……。ああもういいや、とりあえず話を聞いてもらうのは諦めて、作戦を話すだけ話そう。断片的にでも聞いてくれんだろ。
「俺たちの作戦ってのは、とりあえずヘッポコに捕まったフリをして王城の牢屋に入るんだ。その後兵隊たちに協力してもらって、牢屋からこっそり出してもらう。で、王城に詳しいヘッポコに王様の部屋まで見つからねえルートで案内してもらって侵入。王様と直接話す機会を無理やり作るってことだ」
「ああすまん聞いてなかった。かまぼこが何だって?」
「ちょっとでも期待した俺がバカだったわ! お前もそのボケ方すんの!? ボケルト人に真面目な話すると絶対こうなる感じ!?」
「玄司様大丈夫です。ヘッポコのこれは本当は聞いていた上でのボケであって、私のように本当に聞いていなかったわけではありません。それで私は本当に聞いていなかったのですが、素麺が何ですって?」
「お前は聞いてろよ! 2回目だろ! なんで俺が今素麺の話するんだよ!」
「すみません、聞いてはいたのですが、集中できなくて素麺と一緒に流してしまいました」
「やかましいわ! 流し素麺すんな!」
まあとりあえずヘッポコが聞いてたならそれでいいか。そういや高橋と作戦会議した時も、こいつだけ何にも関係無い話してたな。じゃあもうこいつはいいわ。王城の外で逆立ちでもしとけよもう。
「作戦は承知した。だが問題は、王の部屋まで行くルートだな……」
「屋根裏でも地下でも隠し通路でも、なんかあんだろ? お前なら知ってると思ったんだけど」
「いやそれが、王城はワンルームなんだ」
「まじで言ってんのお前!? あんなデカいし高いのに!?」
「玄司様、王城は賃貸じゃないので家賃とかありませんよ」
「分かってるわ! 家賃の高さの話じゃなくて背の高さの話してたんだよ!」
「ああそういうことですか。ややこしいことを言わないでくださいよ」
「いやでもワンルームなら家賃あってもおかしくねえけどな……。なんで王城ワンルームなのまじで!? みんなバカデカい1部屋に暮らしてんの!?」
「その通りだ。つまり、王の部屋イコール王城全部だ。王のプライベート空間は存在しないから、気付かれずに王のところまで行くのは不可能に近い」
「もうそれに関しては王城建設したやつらがバカだわ! なんであの城ワンルームなんだよ! 部屋割りもっとどうにかなっただろ!」
「牢屋もワンルームの一角に設置されてるから、上手く抜け出すのも難しいはずだ。つまり、正面から俺たちと来た方が早い」
「じゃあ最初っからそう言ってもらえる!? 作戦考えた時間何だったんだよ! さっさと俺ら連れていけよ!」
ヘッポコは俺と高橋を見て頷き、席から立ち上がった。いやそんなかっこいいシーンじゃねえよこれ? どっちかって言うとマヌケなシーンだぞ?
「お前たちならそう言ってくれると思っていた。正面から王との面会を申し込みに行くぞ。覚悟は決めたか?」
「ちょっと待ってください。今天かすをおかわりして来るので」
「うどん出汁を天かすで味わおうとすんな! お前いつの間にうどん完食してたんだよ!?」
高橋がうどん出汁に浸した天かすを食べ終わるのを待って、俺たちは王城へ向かうためにうどん屋を出た。




