第115話 合流
高橋とある程度作戦を擦り合わせ、俺たちはヘッポコが待つうどん屋へと向かっていた。
うんなんでうどん屋なんだよ。カフェとかで良かっただろ。確かうどん屋の隣イタリアンカフェだったし。なんでそんな回転率重視の店で作戦会議するんだよ。バカなのかよ。
まあとりあえずなんでもいいや。ヘッポコが門番の仕事を上手く抜けて来てたらいいんだけど……。
「どうしたんですか玄司様? そんな遠足に行くバスの中みたいな顔をして」
「俺そんな楽しそうな顔してる!? そこまでワクワクしてねえんだけど!?」
「いえ違いますよ玄司様。バス酔いで気分が悪い顔です」
「そっちだったのかよ! それはそれで別にそんな顔してねえだろ!」
「本当に大丈夫ですか? 今強めのテキーラとか持って来ましょうか」
「せめて酔い止め持って来てもらえる!? 酒にも酔わせてどうすんだよ!」
高橋はこんな時でもマイペースだ。いよいよ王様と対峙するための準備をするってのに。もうちょっと緊張感があって欲しいとは思うが、ある意味このマイペースさに安心できる部分もある。俺もあまり構えずに行こう。
うどん屋に着くと、槍を持ったヘッポコが俺たちを見つけたようだ。槍を振りかざし、俺たちの方へ向かって来る。
……え? なんで?
「貴様らあ! 見つけたぞ! 今すぐ牢屋にぶち込んでくれる!」
「え、なんでなんで!? 昨日和解しただろ!? え、本当になんで!?」
「玄司様、王様に疑われないように、ヘッポコは私たちを捕まえて事情聴取するフリをするという手筈になっています」
「先に言えよそんなこと! なんで決行中に言うのお前!?」
「そんなこと言われても困りますよ。すっかり忘れてたんですから」
「忘れないでもらえるそんな大事なこと!? 俺何も知らねえからビビっただろ!」
ヘッポコは俺たちの前に来ると、手早く縄で俺たちの手首を縛る。そのまま顔を寄せ、俺たちの耳に囁いた。
「隣の客は良く柿食う客だった……」
「何の話だよ! なんでお前故人みたいに隣の客の話してんの!? そんな重い早口言葉聞いたことねえよ!」
「救世主城金玄司、そして高橋、このまま捕まったフリをしてうどん屋に入ってもらう。奥の座敷を確保してあるから、そこで確変タイム……間違えた作戦だ」
「お前普段パチンコ行ってんだろ!?」
俺たちの手首を縛った縄を引くヘッポコは、周りを警戒しながらうどん屋に入る。そしてそのまま、ヘッポコは注文口へと向かった。
「店主、カルボナーラ風うどんの特盛を3人前頼む」
「重いって! 話しながら食べるもんにしては重すぎるって! せめて並盛にして欲しかったわ!」
「玄司様、トッピングでマヨネーズがありますが、何本要りますか?」
「えお前もう何本単位なの!? 1本も要らねえんだけど!」
「何……!? 城金玄司、まさかマヨネーズをかけないのか?」
「え、そんなに驚くこと!? 普通の人はカルボナーラ風うどんにマヨネーズかけねえよ!?」
「玄司様、ボケルト王国では普通カルボナーラ風うどんにマヨネーズはかけません」
「かけねえのかよ! じゃあなんでお前本単位で聞いてきたんだよ! あとヘッポコのリアクションもおかしいだろそれじゃ!」
「すまんな、俺はマヨラーだ。実はオトボケ村の出身でな」
「ああお前オトボケ村の人なの!? だからマヨラーなんだ!」
「そう言えば、お前たちもオトボケ村を通ったと聞いた。俺の父にも会っていたりしてな」
「お前の親父……? オトボケ村の人には割と会ったと思うけど……。ちなみに親父の名前はなんて言うんだよ?」
「俺の父の名は、ハラマキだ」
「ああ会ったわ! 門番のハラマキ! 最初のやつじゃねえか! そういやあいつもパチンコ台役所に持ち込もうとしてたな! 血は争えないってほんとなんだ!?」
「ちなみに母の名はイドバタだ」
「えそこ夫婦なの!? 衝撃の事実なんだけど!?」
ここに来てオトボケ村の新情報が出て来たが、とりあえず今はそんなことを言っている場合じゃない。ヘッポコは俺たちを捕まえるという名目で、門番の仕事を抜けて来てるんだ。俺たちが捕まったフリをして合流した以上、ヘッポコは俺たちを連れて王城に帰らないといけない。時間は限られてるんだ。さっさと話し合わないとな。
「さて……。お前たちがある程度作戦を考えて来るという話だったな。俺は王城に精通している。お前たちの作戦に粗が無いか、王城の内情も含めて確認してやろう」
「お前門番なのに王城に精通してるんだな。もしかして配置転換とかあったのか?」
「ああ……。実は俺は、元々は王城の中でも王を守る位の高い兵隊だった。だが、ある日王城にパチンコ台を持ち込んだのがバレ、門番に降格になってしまった」
「親父と同じことしてんなお前! 遺伝子とギャンブル癖強すぎるだろ!」
「だが元々は俺があの兵隊たちのトップだったようなもの。ギャンブル癖以外は信頼されているから、今日もこうして門番の仕事を他の兵隊に任せ、抜けて来ることができている」
「待てよお前、まさかパチンコのために抜けたと思われてねえか……?」
「作戦会議のためと説明はしたのだが……。どうもみんなそう思っているみたいでな。俺はただ作戦会議を早く終えて新装開店した行きつけのパチンコ屋に行きたいだけだと言うのに」
「じゃあ間違ってねえじゃねえか! 何お前パチンコメインのつもりで抜け出してんだよ! だとしたらお前はただのサボりだよ!」
「玄司様、私も学校をサボって勉強していたことがあります」
「それは何の理由でサボったの!? 素直に学校で勉強すれば良くねえ!?」
「学校では足し算を教えていたんですが、私はまずアラビア数字について調べるところからだったので、着いていけなかったんです」
「それむしろお前の方が高度なことしてんだろ! 大学行け大学!」
「大学ってあれですよね、1番悪いことですよね」
「それは最悪だろ! やっぱバカじゃねえかお前! 幼稚園行ってろもう!」
「玄司様、私は幼稚園から産婦人科に戻されていますよ」
「ああそうだったわめんどくせえな! ちょっともういいから黙っててもらえるお前!?」
高橋を黙らせた俺は、ようやくヘッポコに俺たちの作戦を伝え始めた。




