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【完結保証】ボケルト異世界狂想曲〜手違いで死んだ俺は生き返るためにツッコミを入れる〜  作者: 仮面大将G
第四楽章 王都オオボケのコーダ

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第104話 宮廷画家シキサイ

 俺たちをじっと見ている男は、他の通行人とは違い、緑色のベレー帽を被っている。鼻下に髭を生やしてパイプを吹かす姿は、まるで画家のようだ。ていうかあれ画家だろ。実際キャンバスとイーゼルみたいなの抱えてるし。


 画家風の男は俺たちの方に近づいて来て、小さな椅子を取り出し、座ってイーゼルを組み立て始めた。


「いや何してんだよ! せめて話しかけろよ!」


「なんだね君は。こんな道の真ん中で大騒ぎするんじゃない」


「お前のせいだろ! 今絶対話しかけて来る流れだっただろ! 何イーゼル組み立ててんだ!」


「吾輩がどこでイーゼルを組み立てようが自由だろう? 騒ぐことではない」


「いきなり俺たちの真ん前でイーゼル組み立て始めたから言ってんだよ! 何を描こうとしてんだお前は!」


「もちろん、そこの鬼が持っているマヨネーズだ」


「デッサンだった! せめて俺たちのどっちかを描けよ!」


 なんでこのタイミングでデッサン始めるんだよこいつ……。まあいいや、ちょうどいいからこいつに聞き込みでもしてみるか。


「俺は城金玄司ってもんだ。訳あって王様の情報を集めてる。お前は何か知らねえか?」


「君、人に名乗ったら次はその人の名前を聞くのがマナーではないのかね?」


「確かにそうだけども! じゃあお前はなんて言うんだよ!」


「君のような人間に名乗る名前など無いね」


「名乗れよそこまで言うなら! なんで名乗らねえんだよ!」


「そこの鬼、できればマヨネーズを地面に置いてもらえないかね? 見づらくて仕方ない」


「あ、すみません。ちゃんと置きますね。逆さまでいいですか?」


「なんでだよ! 中身残りわずかか!」


「玄司様、残りわずかです」


「残りわずかだったのかよ! じゃあ逆さまでいいわ!」


 画家風の男は鉛筆を取り出し、黙々とデッサンを進めていく。なんだこいつ……。なんで俺たち……いやマヨネーズのデッサンなんか今始めたんだよ。

 まあでもこいつでもいいや。王様について何か知ってることが無いか聞いてみよう。


「なあお前、王様について知ってることはねえか?」


「生きものだよ」


「そりゃそうだろうけど! あれでロボットとかだったらびっくりだわ! もっと他にねえの!?」


「何故吾輩が君にそんなことを教えなければならないんだね? 理由は? リーズンは? タッシェンシルムは?」


「なんで何ヶ国語かで言ったんだよ! 最後のも多分理由って意味なんだろうけど何語!?」


「玄司様、タッシェンシルムはドイツ語で折り畳み傘という意味です」


「じゃあなんで今折り畳み傘の話したんだよ! 関係無さすぎるだろ!」


「吾輩がいつ何の話をしようが、吾輩と高橋の自由だろう」


「高橋は関係ねえだろ! なんでこいつ入れたんだよ! ……おいちょっと待て、なんでお前高橋のこと知ってんだよ」


 画家風の男はキャンバスから顔を上げ、俺の方をチラリと見る。


「そりゃあ知っているさ。鬼のようなバケモノが、この国にツッコミを再びもたらす救世主を連れて来てオンラインでソリティアをするっていう言い伝えがあるからね」


「最後の方余計じゃなかった!? 確かにしてたけども!」


「玄司様、最近は私リバーシの方が好きです」


「知らねえよ! 言い伝え通りにしろよ! いや待てよお前、じゃあ俺が何者かも知ってるってことか?」


 画家風の男はキャンバスに視線を戻し、興味無さげにまたデッサンを再開する。なんだこいつ、不気味だぞ……。


「もちろん君のことも知っているさ。コボケ町で有名なパン屋を営んでいるんだろう?」


「それフクラミのことだわ! 俺じゃねえよ! どこをどう見て俺をフクラミと間違えたんだよ!」


「玄司様、言い伝えでは救世主はパン屋です」


「じゃあ俺じゃねえよ救世主! パン作ったことねえし! 俺ただのピアニスト志望だし!」


 なんで救世主パン屋で言い伝えられてんだよ……。クロワッサンとかで世界救う予定だったのかな。そうなったら高橋じゃなくてフクラミが相棒だよな……。それはそれでカオスそうだけど、パンがメインならハートフルな物語になりそうで、それはそれでありだな。


「それにしてもこいつ頑固だな。なんとか名前だけでも聞き出したいところだけど……」


「玄司様、その人は宮廷画家のシキサイです」


「知ってたのかよお前! 早く言えよ!」


「玄司様がいつ聞き出すのかとタイミングを見計らっていたんですよ」


「初っ端に言ってもらえる!? 今までの時間何だったんだよ!」


「おや、高橋は吾輩のことを知っているのかね?」


「もちろん知っていますよ。夏休みの宿題で描いた風景画が、和歌山県で努力賞に入ったんですよね」


「最優秀賞とかじゃねえのかよ! 努力賞ぐらいで画家目指すな!」


 シキサイは再びキャンバスから俺の方に視線を向けると、やれやれといった様子で首を振った。


「君は何も分かっていないね。努力賞とは努力の結晶。最も努力した人に贈られる賞なのだよ」


「ちょっと違うだろ! 優秀ではないけど頑張りましたねっていう賞だろ! 誇るなそんなもん!」


「とにかく、吾輩はその実績でボケルト王国の宮廷画家になったんだ。口出しはしないでもらいたいね」


「なんでなれたんだよ宮廷画家! もっといただろ絶対!」


「玄司様、ちなみにその時の最優秀賞は深江二世です」


「王様本人じゃねえか! じゃあもう自分で自画像描けよめんどくさい!」


 しかしこのシキサイ、宮廷画家なら王様についても色々知ってるはずだよな? なんとかして情報を聞き出せればいいんだが……。

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