第103話 聞き込み
王様のことをもっと探るためには、まず何をしたらいいんだろうか……。王城に侵入できたらいいんだけど、捕まるリスクもある。
なら、やっぱり王都の人間に話を聞くのがいいのか? 聞き込みってやつだな。王様がどんなやつなのか、人柄でも政策でもなんでもいい。とりあえず王様に関する情報を得ることが、今俺がやるべきことだ。
「おい高橋、お前王都に知り合いとかいねえのか?」
「ああ、もちろんです。いませんよ」
「いねえのかよ! いる感じで言うなよ!」
「だって私、王都に来る時は基本的に声をかけられないんですよ。何故か私を見るとみんな避けていってしまいます」
「そりゃそうだろお前見た目鬼なんだから! 突然現れたら怖くて仕方ねえわ!」
「でも私は普段『触るな危険』という看板を持ち歩いていますよ」
「じゃあそれが原因だわ! なんでそんなもん持ち歩いてんのお前!?」
「私人に触られると毒性の体液を分泌する体質なんです」
「うん俺もうお前と行動するのやめようかな!?」
なんだその体質……。今まで割と触れ合ってきたけど、そんなもん分泌されてたのかよ。まあまあ触られてたぞ俺。なんでそういう大事なことを先に言わねえんだよ。使命果たす前に死んでたかもしれねえだろ。
「まあいいや。とりあえず高橋に知り合いがいないなら、手当り次第に聞き込みしていくか」
「マヨネーズの好感度調査ですか?」
「そんなわけねえだろ! なんだマヨネーズの好感度って! 王様の情報を集めに行くんだよ!」
「ああなるほど、そういうことですね。頑張ってくださいね。私も頑張ってソリティアします」
「お前も行くんだよ!? 何のんびりしようとしてんのお前!?」
「え、私も行くんですか? それぐらい1人で行ってくださいよ。子どもじゃないんですから」
「別に俺お使いに行くわけじゃねえぞ!? 聞き込みに行くんだから頭数はいた方がいいだろ!」
「本当に言ってます? 私を連れ出すなら『触るな危険』の看板持って行きますよ?」
「せめて貢献しようとしてくれよ! なんで自ら避けられに行くんだよ!」
ブーブー文句を言う高橋を引っ張……いや今引っ張ったら毒性の体液出そうだな。清掃の人からビニール手袋借りるか。
ビニール手袋を借りてきた俺は高橋を引っ張って外に出し、王都の人間に聞き込みを開始した。
高橋が道行く人に声をかける。
「マッチ……マッチを買ってくださいませんか?」
「なんでマッチ売りの少女なんだよ! ちゃんと聞き込みしろよ!」
「玄司様、私は少女ではありません。鬼です」
「分かってるわ! なんだマッチ売りの鬼って! めちゃくちゃ営業上手いやつみたいじゃねえか!」
「王都では私はいつもこうやってマッチを売るんです。そうすれば多少なりとも儲かりますからね」
「なんで売るもんマッチなの!? お前アンデルセン原作じゃねえだろ!」
高橋からマッチを没収し、改めて道行く人に目を向ける。やはり王都だけあって煌びやか……というわけでもなく、みんな忍者頭巾を被っている。そういやここテーマパークみたいな感じだったな。そんで人気キャラが忍者なんだっけか。それでみんな頭巾被ってんだな……。
ふと隣を見ると、どこから持って来たのか高橋も赤い頭巾を被っていた。
「なんでお前まで被るんだよ! お前忍者にやられる側みたいな見た目だろ!」
「ああ違いますよ。私のこれは忍者じゃありません。私はこの赤い頭巾を被って、オオカミに食べられたおばあさんを助けに行くんです」
「そっちの赤ずきんかよ! お前グリム童話に出て来ねえだろ!」
もうめんどくさいから頭巾はそのままでいいや。しかしみんな忍者頭巾被ってるから、誰に声をかければいいか目星が付けづらいな……。
「なあ高橋、王様に近い人とかいねえのか?」
「いるんじゃないですか? ニアリーイコール王様とか」
「そんな近いやついんの!? いやそういう意味の近い人じゃねえよバカ!」
「あと玉様とかいうのがいた気がします」
「王様のモノマネ芸人だろそれ! なんでツッコミは禁止してそいつは許容してんだよ!」
相変わらずツッコミどころの多いやつばっかりだなあ……。もうとりあえず次通った人に声かけてみるか? いきなり王様のことを知りたいなんて言って、不審がられないかが不安だけど……。
うん不審だな。俺1人でも不審なのに、鬼みたいなバケモノが一緒にいるんだもん。もうこいつ置いて来たら良かったかな。
そんなことを考えている間に、高橋が通行人に声をかけていた。
「お前何やってんだよ! お前が先陣切ったら不審が過ぎるだろ!」
「あなたは神を信じますか?」
「ほんとに不審だった! お前何宗教勧誘してんだよ! やめろ今すぐ!」
「神を信じてくれた方には現金6万円をプレゼントします」
「混ざってる混ざってる! それ脱毛サロンの詐欺だろ! 色々混ぜんなお前!」
「なんですか玄司様。せっかく私が声をかけているというのに」
「お前が変な声のかけ方するからだろ! めちゃくちゃじゃねえか!」
「ですが玄司様、最初にこうやって印象を下げておいて後から良い人間性を見せれば、ギャップで好感度は上がりやすくなりますよ」
「知らねえよ! お前に後はねえよ!」
高橋と言い合っていると、1人の男が俺たちの方をじっと見ているのに気づいた。なんだあいつ……?




