第100話 王様と高橋
高橋の耳を引っ張りながら、俺は王都を歩いて行く。まずはとりあえず王城に向かうんだ。アポが取れるかどうかは別として、とりあえず俺という存在が来たということを周知しておかないといけないからな。
「なんでそんなに急ぐんですか玄司様。もっと宿でゆっくりしていったら良かったじゃないですか。あと2週間ぐらい」
「ゆっくりしすぎだわ! 慰安旅行か! お前しかも2週間って、予約取ってもらってる期間の半分じゃねえか! 何ダラダラしてんだよ!」
「大丈夫ですよ。そこはちゃんとこの話のクライマックスを計算した上で言ってます」
「お前そろそろそのメタ発言やめてもらえる!?」
あんまりこんな発言キャラがしちゃいけねえんだよ……。何こいつ当たり前みたいに話の都合とか気にしてんだよ。
いやむしろ話の都合気にするならもっと精力的に動いてもらえねえかな。宿編が2週間続いたら、俺と高橋がずっと喋ってるだけになるじゃねえか。
「あ、玄司様。そろそろ王城に着きますよ」
「おおそうだな。よし、なんとか王様のアポを取ってくるぞ。今日じゃなくても近いうちに会っておかないとな」
「そうですね。頑張ってくださいね」
「なんでお前他人事なの!? お前も行くんだよ!?」
「では玄司様、とりあえずあの門番に話しかけましょう」
高橋はスタスタと門のところまで歩いて行く。鎧を着て槍を持った門番が、高橋の姿を見て身構える。そりゃそうか。あんな鬼みたいなやつが突然歩いて来たら、俺でも身構えるわ。
「貴様、何やつだ! この王城に何の用だ!」
「あ、高橋です」
「お前ほんとそろそろ学べよ! だからそういう時はお前の情報を言うんだよ!」
「2メートル13センチです」
「身長言ってどうすんだよ! 誰も知りたくねえわお前の身長!」
「体重は栗まんじゅう3箱分です」
「聞いたことねえ物差し! 栗まんじゅうとか個体差あるだろ!」
「栗まんじゅうはお茶に合います」
「もう栗まんじゅうの情報じゃねえか! ダメだやっぱこいつ!」
門番は槍を構え、じりじりと高橋との距離を詰める。ああもう、怪しまれてんじゃねえか。変なことばっか言うから……。
「貴様……。さてはこの王城を狙う鬼だな! そんなやつは通さん! この門番のヘッポコ、王城を狙う輩は絶対に許さん!」
「弱そうな名前! あんな屈強なのに!? ヘッポコって言うのあいつ!?」
俺の声を聞いた門番——ヘッポコは、驚いた顔で俺の方を見た。なんだ? 俺なんか変なこと言ったか?
「今のは……ツッコミ? 貴様、何故この国でツッコミを使える? この国では、ボケと一発ギャグしか許されていないはずだ!」
「一発ギャグは許されてるんだ! 確かにそれだけで完結するけども!」
「またツッコミを入れたな! 貴様、許さん! 王城の牢屋にぶち込んでくれる!」
「ええ!? そんなに罪なのツッコミって!? おい高橋、なんとかしてくれよ!」
「待ってください。今ワンセグで麻雀中継見てるんです」
「呑気か! ワンセグとか久しぶりに聞いたな!?」
「覚悟しろ罪人め!」
ヘッポコが俺の方に槍を構え、全速力で走って来る。やばいぞ! こんなのに貫かれたら間違いなく死んでしまう! 俺はこんなところで死ぬ訳にはいかねえってのに……!
ヘッポコと俺の距離が半分ほどに縮まったその時、門が開いて険しい顔の男が姿を現した。
白い髭を蓄え、眉間にシワを寄せるその男は、頭に王冠を乗せ、赤いマントを翻している。これは……まさか、王様か!?
俺の視線に気づいていない王様は、走るヘッポコを見て口を開いた。
「えーちょっと何の騒ぎー? 王様ちょっと困っちゃうんだけどー?」
「軽かった! そんな見た目なのに!? 一人称王様なんだこいつ!」
「ねーヘッポコー、そんな槍なんか構えてちゃこ・わ・い・ぞ?」
「気持ち悪いなもう! こんなノリなんだ王様!? お前の方が怖いわ!」
俺の声を聞いた王様は、ヘッポコと同じように驚いた顔で俺の方を見た。
「えー? ツッコミが聞こえるんだけどー? 王様それ禁止したよねー?」
「やっぱりお前がツッコミを禁止したのか……。俺は城金玄司。訳あって地球の日本っていうところから、この世界に転生した。一応、この世界では救世主って呼ばれてる」
「あー! あの救世主ねー! 言い伝えにあったわー! えー、王様の代で来ちゃうー? ちょっとめんどくさいんですけどー!」
「めちゃくちゃ気持ち悪いなノリが! もうちょっとなんとかならねえのかよ!」
「玄司様、私もここで名乗った方がいいですかね?」
「どうせお前高橋ですしか言わねえだろ! 黙ってろ!」
「失礼ですね玄司様。私はちゃんと座高も言いますよ」
「言わなくていいわそんな情報なら! 誰が今の時代座高気にするんだよ!」
「私の座高は2メートルです」
「えお前足の長さ13センチしかねえの!?」
高橋の衝撃の事実に目をひん剥いていると、王様は王様で高橋の方に驚きの視線を向けている。やっぱり高橋のことも知ってるんだな。高橋は救世主を導く存在。知られててもおかしくはない。
「えー、もしかしてそこの鬼さー、高橋? あの救世主を導くっていう高橋ヒデキ?」
「お前高橋ヒデキって言うの!? 桃〇郎侍!?」
「やはり私のことを知っているようですね、王よ。そうです。私は救世主を導く存在、高橋ヒデキです」
「娘が歌上手いアナウンサーだったりする!? え、お前下の名前ヒデキなの!? ほんとに言ってる!?」
「やばーい、王様と敵対する存在じゃーん。王様、許さないんだからね?」
「ちょっと一旦話止めてもらっていい!? 高橋ヒデキをまだ飲み込めてねえんだわ!」
騒ぐ俺を無視して、王様と高橋は睨み合った。いや本当にちょっと待ってもらえる? え、こいつ高橋ヒデキって言うの?




