第47話 お嬢様には退屈なお話でしたかな
おじい様の離宮にこんな部屋があるなんて、知らなかった。
大きな円卓が中央に置いてある。
飾り気は全くないし、どこか冷たく感じるのはそれが石で出来ているせいかしら?
何か、難しい謂れだかがあるらしいけど、よく分からなかった。
話が難しくて、あたしには無理なのだ。
セバスさんは根気よく丁寧に教えてくれたんだけど、頭の中身の許容量を超えてる。
体と心が拒否しちゃうのだから、しょうがない。
セバスさんはそこのところも分かってくれてるから、好きだ。
「お嬢様には退屈なお話でしたかな」とあたしが夢の世界に旅立つ前にやめてくれた。
円卓がどこかの聖なる山から、切り出された石で作られていて、あーだこーだなんだと思う。
多分、スゴイってことだろう。
「それでは始めようか」
おじい様の発言に円卓に着いていたみんなが無言で頷いた。
緊急で招集したおじい様が発案者で円卓だから、円卓会議みたいな感じだろうか。
読み物にある騎士の物語にもこんな場面があった気がする。
どこか、重苦しい空気が立ち込めてるのは、明るい顔をしてる人が誰もいないせいだろう。
参加者はネドヴェト家のあたし、マリー、エヴァ。
王家のおじい様、ロビー。
ここまでは分かる。
血の繋がりがあるし、関りのある人達だから。
ビカン先生とユリアンは巻き込まれてしまった気がしてならないのだ。
ユリアンはここまで深く、関わってよかったんだろうか。
ロビーとの付き合が長いのは分かる。
でも、エヴァのことがなければ、ここまで深入りすることはなかったんじゃないだろうか。
ビカン先生はあたしが相談したせいだ。
そのせいでこんなことに巻き込まれてしまった。
先生はホントは一人で静かに生きていたい人なんだと思う。
学園に住んで本に囲まれて、魔法を研究してるのが好きな人なんだから。
ごめんなさいと謝ったところで先生のことだ。
「子供は大人を頼るものだ」と言って、意地悪そうな笑みを浮かべる姿が想像出来る。
巻き込まれたとはいえ、二人がいるのは何となくだけど、理解出来た。
理解出来ないのはそうではない人がいるからだ。
室内なのに頭から顔までを隠す黒塗りの兜を被ってる。
確か、バシネットっていう名前の兜だ。
戦場に立つ騎士が装着するものであって、こういう場所では脱ぐものだと思う。
辛うじて、分かるのは目だけで孔雀石の瞳がきれいだなってことくらい。
そして、名前がトムっていうことだ。
あたしがポボルスキー伯爵家に泊めてもらったのと同じようにマリーもある家に泊めてもらった。
それがマソプスト公爵家。
そこで出会ったのがトムさんだったらしい。
マリーの話では黒い髪のちょっとふざけたところはあるけど、好青年と聞いていた。
兜も脱がないのはさすがに変だと思う。
それに兜だけじゃないみたい。
しっかりと甲冑まで着込んでるのだ。
兜と同じ黒塗り。
まるで黒騎士みたいじゃない。
うん? 黒騎士?
狂える黒いなんたらみたいな呼び方をされてる人がいた気がするんだけど……。




