表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/56

第45話 心のむこうに

(ユスティーナ視点)


叔母様(ジャネタ)。今、なんと?」

「ああ。可哀想なユスティーナ」


 叔母様はそう言うとわたしを抱き寄せた。

 まるで幼子をあやすようで心がむずがゆく感じるのに満たされるような不思議な感覚に全てを忘れそうになる。


 長かった戦争がようやく終わった。

 お父様ミロスラフ・ネドヴェトが死んだ。

 叔父様(ダニエル・コラー)が死んだ。

 お兄様(グスタフ・コラー)が死んだ。

 叔母様は事もなげに言った。


 彼女にとってお兄様は目に入れても痛くない存在だった。

 姪であるわたし達にも惜しみなく、愛を与えてくれた叔母様だ。

 自分の家族である叔父様とお兄様を失った悲しみがどれほどに深いものか、わたしには図りようがない。


 それなのにわたしのことを気にかけてくれる叔母様の愛を確かに感じる。




 わたしにとって、お父様は特別な存在だ。

 お父様が戦場に旅立ったのは随分と昔のことのように思い出される。


 お母様は「お父様は立派な人なの。弱い人々を救うべく戦いに行かれるのだから」とまだ、小さかったマリー(マルチナ)とわたしを抱き寄せた。

 お母様は震えていたから、泣いている顔をわたし達に見せて、不安にさせないように考えてくれたのだろう。

 別れの際にお父様は「ユナ(ユスティーナ)。強い子になれ」と言ってくれたのを覚えている。


 だから、それがわたしの全てになった。

 お父様がいない間、お母様とマリーを守らなくてはいけない。

 わたしがお父様の代わりになる。

 そう決めたのだ。


 わたしは元々、頑固な性格だった。

 こうと決めたら、絶対に譲らない。


 誰に何を言われようとどう思われようともかまわない。

 女で騎士になれるものかと笑われ、揶揄われもしたが負けるものかと歯を食いしばって、耐えた。

 わたしはわたしの信じる道をただ、進むだけ。


 お父様との約束。

 愛する家族を守るのはわたししか、いないのだから。

 そう思っていた。


 わたしの夢を応援してくれたのは()()だけ。

 ロビー(ロベルト)とお兄様が剣の修練に付き合ってくれたから、今がある。

 叔母様が「ユナが信じる道を進むといいわ」と背中を押してくれたからだ。




 戦争が終わったのにお父様は帰ってこない。

 お母様はその報せを聞いて、卒倒してから目を覚ましていない。

 張りつめていた糸が切れたようにやつれて、寝込んでいる姿を見ると涙がにじんでくる。

 マリーも帰ってこない。

 エミー(アマーリエ)も帰ってこない。

 エヴァ(エヴェリーナ)もいない。

 誰もいない。


「大丈夫よ。ユナ。あなたは強い子よ。ワタシには分かる。ワタシを信じて」

「はい。叔母様」

「そう。ワタシと一緒に行きましょう。あなたの願いですもの。きっと叶うわ」


 心が黒く、淀んでいく。

 黒雲に遮られて、太陽が翳っていくようにわたしの心が死んでいく。

 そんなわたしに光を感じさせてくれるのは叔母様だけだ。


 待っていてください、お母様。

 叔母様と一緒にお父様を迎えに行ってきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ