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第16話 芸術家って、そういうものよ

 愛されなくてもいいと諦めてから、あたしの生活は一変した気がする。

 だけど、悪い気はしない。


 愛されたいと思って、ロビー(ロベルト)のことしか見てなかった。

 それなのに周囲の目を気にしてた。

 よく思われたいと演じていたんだ。


 そんなのあたしじゃない。

 そんなあたしが愛されるはずない。


 でも、女神様とお星様に願って、よかった。

 もう無理に振る舞う必要なんて、ないんだってことに……。


 新たな友人が出来た。

 嫌いだった意地悪な先生がホントはいい人かもしれないと分かった。


 サーラとは冬期休暇の間に遊びに行くことを約束した。

 ホントは遊びに来て欲しいところだけど、毒のこともあってそうはいかない。

 彼女を巻き込みたくない。


 ビカン先生は冬期休暇でも学園にずっといるので「いつでも訪ねてくるといい」とちょっと意地悪そうな笑顔を浮かべて、言ってくれた。

 先生が学園に住み込んでいると聞いて、ビックリしたけど。


 そんなことを考えながら、馬車の窓から外の景色を眺めて、現実逃避する。

 正面を向くとユナ(ユスティーナ)から、睨まれて舌打ちされるので面倒なのだ。

 マリー(マルチナ)は少し、オロオロとしながらも何とか、空気をよくしようとして、学園であったことを話題にして、話を振ったりしてくれるがほぼ、沈黙が支配していたのはこのところ、いつものことだった。


 あたしも空気を悪くしたくないので角が立たない程度には受け答えしたけど、ユナの態度が悪すぎて、話にならない。

 マリーに話を振られても素っ気ないどころか、棘のある調子で答えていたんだから。


 それでも学園から、屋敷までそんなに時間がかからない。

 ちょっと我慢している間に着くのだ。




 しかし、よくないことは望んでないのに向こうから、手を振ってくるものみたい。

 帰宅してから、あたしは部屋でおとなしくしてた。

 エヴァのところには人目の付かない時間の方が、安全だろうと先生から、アドバイスされてたから。


 先生やサーラの話から、新たに分かったことをメモに書き加えてみたもののさっぱり、分かんない。

 犯人の狙いがまず、よく分かんないのだ。

 あたしの家に恨みがあるのなら、何でこんな回りくどい毒を使ったんだろう。

 考えれば、考えるほどに分かんないし、そもそも考えるのは嫌いだ。


 こういう時は絵を描くに限る。

 あたしが小さい頃から、みんなに褒めてもらえたのは絵だけと言っても嘘じゃないだろう。

 あのユナですら、「エミーは絵がうまいのね」と普通に褒めてくれたんだから。


 どうやら、あたしは絵を描く時に無意識で魔力を使っているらしい。

 それを教えてくれたのは先生だった。

 これまで授業を真面目に受けてなかったから、魔力を制御するのが下手だった。

 簡単な魔法すら、うまく使えなかったのだ。


 それがあの日から……髪の色が変わってから、苦労せずに出来るようになってる。

 炎の魔法しか使えなくて、それすらまともに出来なかったのに今では炎と水の魔法を自由自在とまでは言わないけど、出来るのだ。

 ただし、絵として描くことで!


 きっかけはささいな出来事だった。

 このところ、いつもお邪魔してる先生の研究室で()()()()してて、暇だったから、ノートにメラメラと燃え上がる炎を描いたのだ。

 先生のオレンジブラウンの髪を見ていたら、描きたくなった。


 「芸術家って、そういうものよ」と言ったら、「お前はアホか」と頭を小突かれた。

 理由は簡単。

 絵に描いた炎が、まさか、そのまま現実のものになるなんて思わないじゃない?

 危うく、大火災になる事態だったけど、先生がすぐに消してくれたので事なきを得た。


 先生のスゴイところはそれだけであたしが絵を描くことで魔法を具現化出来ることに気が付いたことだ。

 当の本人であるあたしが分からないのに!

 「ペップは天才なのね」と言ったら、今度は「お前はアホだな」と眉間を指で弾かれた。

 地味に痛かった……。


 そういう訳で絵を描きたくなったから、麗らかな春の花畑を飛び交う蝶々を描いた。

 部屋の中を色とりどりの美しい蝶々が舞っていて、きれい。

 冬期休暇で冬真っ盛りだけど、悪くないわ!


 具現化は仮初のものだから、消してしまえば、問題ない。

 明日からは冬期休暇。

 何をしよう。

 どうしよう。

 目の前に広がる問題は山積みですぐには片付きそうにない。


 今、蝶々を眺めているこの時だけ、自由。

 あたしも蝶々みたいに自由になりたい。


 そんな平穏な一時が破られることになろうとはあたしは知る由もなかったのだ。

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