第12話 君の方がベラドンナに気を付けた方がいいだろう
「ふむ。だいたいのことは把握出来た。私に相談したのは悪くない判断だ」
「は、はい」
ビカン先生に褒められたのは初めてかもしれない。
たいてい、「アマーリエ・ネドヴェト。また、君か」と怒られた記憶しかなかったから。
先生が笑うとかっこいいなんて、知らなかった。
「ベラドンナが魔女の毒と呼ばれる理由を知っているかね?」
「分かりません」
「そうか。令嬢が知っておくべき知識ではないが、ネドヴェト嬢の家に関わることだから、知っておくべきだろう」
「あの……先生。言いにくそうですよね?」
「そんなことはないぞ、ネドヴェト嬢」
「エミーと呼んでください。家族からはそう呼ばれてるのでその方が楽ですし」
「そ、そうか。ならば、君も私のことをペップと呼ぶがいい」
あたしが知らないだけ。
知ろうとしなかっただけで先生は意外と気さくな人だったらしい。
意地悪じゃなくて、不器用なのだと考えたら、今までのことも許せそうだ。
「エミー。君は今、失礼なことを考えていなかったかね?」
「そ、そんなこと考えてませんよ、ペップ」
「ペップ。ベラドンナのこと、教えてください」
「いいだろう。勉強が嫌いな君が勉強したいと言うんだ。覚悟はいいかね?」
「え、えぇ」
「ベラドンナがある女性の名ということは知って……いないようだな」
口を半開きにして、ポカーンとしてるあたしの反応で先生は全てを悟ったんだろう。
悟ったというよりも諦めたが正しいかしら?
「ベラドンナは魔女だった。魔女に善き魔女と悪しき魔女がいるのは……知らんだろうな。分かっていたとも君にも分かりやすく、説明するとしようか」
先生は半ば呆れてるような表情をしてた。
その割にホントに分かりやすく、説明してくれたのだから、いい人なのは間違いない。
勉強嫌いなあたしがどうにか、分かったのは次のことだけ。
魔女になれるのは特殊な血が必要。
一番、偉い魔女は女神フレイア。
女神様に愛された者がなれる。
魔女にはいい人と悪い人がいる。
聖女も魔女である。
ベラドンナは『蟲の乙女』というあだ名があった毒に詳しい魔女。
彼女の体がベラドンナという花になったという伝説を残して。
重要なのはこのベラドンナの毒とドラゴンの血の相性が悪いということ。
竜による障りにはベラドンナが効いて、ベラドンナの障りには竜の血が有効。
でも、それには正しい分量と用法を守ることが大事。
ベラドンナの血を混ぜては決して、いけない。
ここまでをどうにか、理解した。
「つまりだ。何者かがネドヴェト家に忍び込み、ベラドンナの毒を盛っているのはもはや、疑いようがない。だが、犯人にとって、誤算があったようだな」
「え?」
「エミーの家系が竜の血を引いていることは周知の事実だ。これは分かるね?」
「はい」
「しかし、聖女の血も引いている。これがどういうことか、分かるかな」
聖女も魔女で竜の血と魔女の血は相性が悪いから……えっと?
何のことか、分かんない。
「分かっていなかったか。簡単なことだ。聖女の血が毒を抑えていた。そういうことだ」
「そうだったんだぁ。知らなかった」
「そして、覚えておくといい。エミー。姉よりも君の方がベラドンナに気を付けた方がいいだろう」
「へ?」
そこから、先生のお説教交じりの授業が再び、始まって大変だった……。




