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第11話 これはベラドンナの毒で間違いない

 ビカン先生にエヴァの薬のことを相談する前のことを思い出していた。


 もう何も期待しない。

 全てを諦めた。

 そう考えてるのはホントのことだ。

 だからって、家族の間に波風を立てたい訳じゃない。

 これもホントの気持ち。


 あたしはあたしで好きにやる。

 でも、それで迷惑をかけたいかというとそうじゃない。


 だから、食事も同席するし、馬車にも同乗した。

 そうしないとかえって、面倒なことになりそうって、思ったから。


 朝食の席はあたしが話を振らないからか、とても静かだった。

 静かすぎて、食器の音だけがダイニングに響くもんだから、ちょっと怖いくらい。

 お母様とマリーも何に気を遣っているのか、あたしの方をチラチラと気にするように見るだけ。

 何がしたいのか、よく分かんない。


 ユナは分かりやすい。

 あたしのことが気に入らないんだと思う。

 ずっと睨まれるから、居心地が悪いったら、ありゃしない。

 それでもダイニングは広いのでまだ、ましだった。


 馬車は狭いし、マリーとユナしかいないのでもっと大変だった。

 あたしはマリーの隣に座るのでそうなると目の前に不機嫌な顔を隠そうともしないユナがいる。

 だからって、ユナの隣に座ったら、舌打ちされそうなのでまだ、マリーの隣の方が我慢出来る。

 ユナは何が気に入らないんだろう?

 何かにつけて、あたしのやることにいちゃもんをつけてくる。


 ユナはあたしがわがままで人のことを考えてないって言う。

 あたしが愛されたいと願うのもわがままだったということらしい。


 当然のように馬車の中の空気は学校に着くまで最悪だった。

 あたしのことは気にせず、マリーとユナはお喋りすればいいのに、そうしないのだ。

 沈黙に支配された空気はまるで拷問のようだった。


 それに比べたら、先生の意地悪な言葉なんて、どうってことない。

 少なくともあたしのことを考えて、言ってくれてるのだと考えられるようになった。


「もっと詳しく、調べないとはっきりしたことは言えんが、これはベラドンナの毒で間違いない」


 先生の声で現実に戻された。


「ベラドンナはヴィシェフラドではあまり、見かけない植物だ。自生はしていなかったと思うが……私も分野外の話でね。はっきりとした確証はない」

「そのベラドンナの毒って、どういう症状が出るんですか?」

「軽い症状であれば、発疹程度だ。しかし、継続して摂取すれば、危険性が増すぞ。体温が上昇し、嘔吐と異常な興奮状態を起こす。幻覚症状を起こすのも厄介なところだ。最悪の場合は……」


 先生がやや俯くと低い声で言った次の言葉にあたしは強い衝撃を受けた。


「死に至る」


 『淑女(レディ)への子守歌(ララバイ)』の中でエヴァが竜熱(ドラゴンフィーバー)で死ぬのは五年後。

 誰かがそれよりも前にエヴァを殺そうとしてる!?

 誰なの?

 怖い。


「しっかりしたまえ、ネドヴェト嬢」


 あまりの恐怖に体が震えてきた。

 そんなあたしの両肩にそっと置かれた先生の手が、とても温かく感じる。

 不思議な感覚。

 これ以上、考えるのが怖くなってたのに……。


「詳しく話したまえ」


 薬が気になったから。

 それが何なのかを知りたかっただけ。

 そこまで頼ったらいけないし、頼ることは出来ないって思ってた。


 でも、先生の切れ長の目に宿った力強い瞳を見てるともしかしたら、って考えてしまう。

 ホントに頼ってもいいのかしら?


「話したくないのなら、それでもいい。私は教師だ。生徒の悩みを解決出来なくて、教師とは名乗れんのだよ」


 不遜とか、尊大とか。

 意味は分からないけど先生の態度は何だか、そんな単語が似合うふてぶてしい感じなのだ。

 今のあたしにとって、そんな先生が頼りになる大人にしか、見えなかった。


 『淑女(レディ)への子守歌(ララバイ)』の記憶を思い出したことはさすがに言えなかったけど、不自然に感じた家の中の出来事を先生に全て、話した。

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