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アース  作者: 音竹咲夜花
33/33

火原の都

「え?え?」


俺が混乱して動転した声を出しているとみんなが「どうしたー?」と振り返った。


「いや、カナメが…」


みんなの視線がカナメに集まる。 自分でも戸惑っているようでカナメはどこか緊張した顔になっていた。


「ありゃ?火の妖力が強すぎたのかな?」


「うち、あの男前な子に妖力わけたけどそんなに多くしてないよ」


「ルーナ、確かここの子たちは妖精の気もあるんだよね?」


「ああ。じゃあやっぱり…」


ルーナ、リャマ、フォティアが何やらよくわからないことを話している。


「カナメ。一旦こちらへ来い」


ルーナが呼びかける。カナメは頷いておそるおそると言った感じでこちらに歩いてきた。

リャマがカナメの胸の部分にそっと手を当てる。そしてこくりとうなずいた。


「うん。やっぱり、この子は火属性だ。しかもだいぶ強力」


そして肩をすくめる。


「まあ、ずっと人間界にいたっぽいから今はだいぶ弱まっているけどね」


「火属性?」


「そうだ。おそらくカナメの先祖に強い妖力を持つ火の妖精がいたんだろう」


「そう、なのか…」


カナメは不思議そうに自分の胸をみていた。


「俺、孤児院育ちで両親のことも全く知らないんだ。先生に一度聞いたことがあるけど、先生も全然わからないらしくて…。多分道端とかに捨てられていたんだろうな。だからご先祖さんについては調べようがないわけ」


「え」


ルーナが少し声を漏らした。俺にしか聞こえないような小さな小さな声だった。


「どうした?」


「あ…。ああ、なんでもない」


ルーナは何かを打ち消すように横に首を振った。


「なあ、疑問があるんだけど」


あきとが言った。


「カナメに火の妖精の先祖がいたとするだろ?つまり火の妖精が人間の男か女かと子供をつくったことになる。それってありなのか?」


「ああ。まあ一応ありだ。しかし、人間と子供を作った場合二度とアースに戻ってこれなくなる。それは絶対だ。妖精は生き物の中で一番人間と離れているようで、体の構造は近い。人間の世界で暮らしていると妖力も弱くなってしまう。アースに戻ってこなければアースのこともじきに忘れてしまう。人間に恋をしてアースのことも忘れて人間として暮らした妖精たちがいる。その子孫がお前たちということだ。おそらくこれが正しい」


「なるほど」


「まあ、アースを追放されたがる生き物なんてほぼ皆無に等しいから超レアケースではあるんだけどね」


フォティアが肩をすくめた。


「だからカナメは火の妖精の妖力を受け継いでいたけど、人間界にいたからそれが発現しなかった。でもアースの中にある火原の都に来たから妖力が反応して発現した。そういうわけだな?」


「多分な」


あきとは納得していた様子だが、俺はまだあやふやだった。でも大体のことはわかった気がする。ん?でも待てよ。ということは…。


「カナメは火属性だったんだろ?ということはカナメ以外の俺たち全員、何かしら属性があるってことだよな?」


ルーナがうなずいた。


「そういうことになる。今まで行った花、月、風の属性ではない可能性が高い。先祖の妖力が弱かったのかもしれないがな。これから行くところで発現するかもしれないな」


「え!ということは、妖力が発現した場合その属性の妖力が使えるようになるかもしれないってことですか?」


「もしかしたらな。ところでカナメ、何か妖力は使えるか?」


「んー。どうだろ」


カナメは手を交互に閉じたり開いたりしている。


「妖力ってどうやってだすんだ?」


「そーだな…妖力っていってもいろいろあるけど…。空を飛ぶときや火を焚くときは大きな力を、さっきみたいな幻影を作るときは繊細な力を…。でも俺たちは特に意識しないでやっているからな。言葉にするのが難しい」


リャマがうーん、と唸っているとカナメが片手を広げた。


「ちょっとわかったかも」


カナメの(てのひら)にぱちぱちと火花が飛び散る。そして次の瞬間にはポッと赤色の火がともっていた。

その火は最初は不安そうに少しだけ蠢くだけだったがやがてぼんやりと形を見せるようになった。

火で形作られた植物の芽のようなものが見える。その先端から光が飛び出してカナメの周りをくるくるとまわった。カナメはくすぐったそうに笑った。


「あっはは!すっげえ」


「妖力は使えるようだな。今は火原の都の中だけかもしれないがじきに外でも使えるようになる」


「えー!いいなあ。私も使えるようになりたい」


ミオとこのみが羨ましそうにカナメの妖力を見る。俺だって妖力を使うのは厨二心がくすぐられる。


「まあまあ、これからアースをまわっていくうちに自分の属性がわかるかもしれないしね」


「そうだな、属性儀式もあるけど…今は難しいしな…」


「まあ今は火原の都に来てるんだから!さ、行こー!」




火の妖精の家は不思議なものだった。

ルーナの家と同じで木の中に扉があるような感じだったが、その木の葉っぱの部分が火になっているのだ。色は赤色、黄色、オレンジ色、青色など様々だ。

アースの実が丸の右上に矢印をくわえた不思議な印にくりぬかれてその中にろうそくの火がともっている。まるでハロウィンのジャックオーランタンのようだ。

たくさんのそれに見とれているとふいにミオが声をあげた。


「ね!ね!あれドラゴンだよ!ちかっ!すご!」」


映画でよく見るような焦げ茶色のたくましい体がしなやかに夕空に駆け上がってゆく。頭上にドラゴンの尖った爪がすれすれまで来たので思わず身体をかがめた。


「あのライオンみたいな生き物、たてがみが燃えてる」


「ああ。フーライオンのことか。あいつらは強そうな見た目しているけど意外と気が弱くて優しい奴が多いんだ。面白いよな」


俺の頭の中にムーン・ウルフのバルーの姿が浮かび上がった。


「あの光っている小さなトカゲはサラマンダーですか?」


「そうだよ。よく知っているね」



リャマとフォティアは火原の都にいる不思議な生き物たちを一つ一つ丁寧に説明してくれた。

ひととおり終わったところでカナメが聞いた。


「火の宮殿は七つの宮殿の内の一つだからここにはないんだろ?長様はよくいらっしゃるのか?」


「ああ。よくいらっしゃるよ」


リャマが頷くとフォティアが言った。


「リャマのお父上だよ。フレイム様は」


「ええ!?そうなの?」


「まあ長様だからなあ…。敬いの態度が大事なんだよ。しないと怒られる」


そういえばノイやルーナも月の長であるエルア様の子供だけれど敬語を使っていたしちゃんと様をつけていた。ノイは時々口が滑っていたけれど。

すると今度はアカネが口をはさんだ。


「長様ってどうやって決めるの?普通にリャマが次の長様になるの?」


「その場合もあるがそうとも限らないな」


そう言ってリャマは考え込むように空を見上げた。


「妖力の強さ…とか周りに慕われているか…とか長としての適正があるか…あ、あとこれは絶対だ」


リャマが何かを言おうとして口を開きかけたところで、さっきよりも爆音で音楽がスタートした。驚いて体がビクリと揺れる。


「え、なになになに?」


「何事?」


周りを見渡すとさっきよりも遥かに多い火の妖精たちがみんなノリノリで踊っていた。


「あー。着いたようだな」


ルーナが少し呆れたように苦笑する。


「そうだね。みんな。とにかく踊って」


フォティアが近くにいたアカネの手を取ると優雅に踊り始めた。


「…また!?」


何がなんだかわからず目をぱちくりさせるとリャマがにっかりと笑った。


「ここは火の(さか)り場だ。楽しんでいってくれ」

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