ユニコーンと花畑
「で、ルーナちゃーん。今日はどこに行くのー?」
ミオがハンモックにごろごろ転がりながら聞いた。
俺含め六人全員揃ってはいたが、今日はアルスがいないようだ。ムーン・ウルフの仲間たちと遊んでいるらしい。
「今日は火の妖精の住処、火原の都に出かけようと思う」
「へえー!火の妖精かあ」
カナメが身を起こした。
「火原の都は七つの柱の都のうち、もっともにぎやかなところなんだ」
「にぎやか?」
「きっと行ったら楽しめるだろう。とりあえず外に出よう」
「うん!」
「楽しみー!」
俺たちはいつもの滑り台で外に出た。
相変わらず、アースはワンダーランドだ。でもこのような景色にも少し慣れてきた。
「よお。元気か?」
「今日も来たんだね!」
「ゆっくりしてらっしゃい」
歩いていると前よりも随分様々な生き物が友好的に話しかけてくるようになった。ちょっと、いやだいぶ嬉しい。それは他のみんなも同じなようで元気に挨拶を返していた。
「それでその火原の都ってのはどこにあるの?」
「永遠の花畑のさらに向こう側の方にある。とりあえず花畑を通っていくつもりだ」
「わあ!行きたいです!永遠の花畑、この前行けなかったので気になっていたんですよね」
このみが嬉しそうに手を合わせた。そういえばこの前いったときはこのみとアカネがいなかったな、と思い返す。
ルーナはこのみの様子を見て表情を和らげながら「そうか」とだけ言った。
「ここらにはないようだけど花畑まではどうやって行くの?」
アカネが首を傾げたちょうどそのとき、見覚えのある白い鳥が視界をよぎった。
その鳥はこちらを向いて嬉しそうに叫んだ。
「あらー!ハルマちゃんじゃないの!ふつかぶり?みっかぶりかしらあ?」
スワーリンのデイジーだ。三日前、永遠の花畑まで俺を連れていってくれた不思議な鳥である。
今日はデイジーの花をたくさんつけたボンネットをかぶっていた。
「この前はありがとう。そのボンネットよく似合ってるよ」
「うふふ、うれしいわ!ありがとねハルマちゃん」
俺、ハルトなんだけどなあと思いつつもいちいち名前を間違えるデイジーが面白かったので言わないことにした。
「それでルーイ、どこにいくのだっけ?」
「火原の都だ。あと私はルーナだ」
「やだ、またまちがえちゃった。ルーナね。はなばたけまでおくっていくわ。なかまをよんでくる」
「ありがとう」
ほどなくして人数分のスワーリンがこちらにやってきた。
「わわ…すごおい」
「これ乗って大丈夫なの?」
このみとアカネがおそるおそるスワーリンの胴体を足でまたぐ。
「おもいっきりのっちゃってへいきよ。わたしたちとろーるもはこべるんですもの」
「そうよ。あなたたちなんてかるいかるい」
「え、トロールも乗せられるんですか?すごいですね!」
俺はまたデイジーにまたがった。
「じゃあ今日もよろしくおねがいします」
「まかせなさい」
デイジーはこちらを振り向くとパチリとウインクした。ボンネットのデイジーの花がはらはらと履いている短パンの上に落ちる。
そして真っ白な翼をぱっと広げると空中に飛び立った。
「すごいすごいすごいです!いい景色だなあ…」
隣を飛んでいるこのみがはしゃいでいる。少し前を飛ぶアカネも金髪をなびかせながら下の景色を見て「綺麗…」とつぶやいているのが聞こえた。
スワーリンは今まで乗ってきた生き物の中で一番飛んでいる高度が低くて速度的にも下を見る余裕があるからいいのだろう。たまにいきなり回転したり上から下にダイブするときもあるけど。
「花畑見えてきたぞー」
「わあー!あれですか?すごい花の数…」
「宮殿もあるね。あれが花の宮殿?」
「そうだよ。フローラ様とジャック、今日はいるかなあ?」
永遠の花畑に入ると、すぐにフローラ様らしき妖精を見かけた。何かの動物に乗って白い道を歩いている。
「フローラ様ー!」
ミオが大きく呼んで手を振ると、フローラ様はこちらに気づいたようで、見上げて手を振ってきた。
「あらあ~来たのね!会いたかったわ!」
「ハルオちゃん、そばでおろすわね」
「うん。ありがとう」
フローラ様は滑らかな薄桃色の毛並みに立派な一本の金色の角が生えた馬のような生き物にのっていた。その生き物にはこれでもかというほどごてごてに花が飾り付けられている。大きな黒い目をピンク色のぱさぱさの睫毛が縁取っていて、立ち姿が美しい。フローラ様が乗っているととても絵になった。
「これ…ユニコーン?」
「すごい。本物です…」
「ああ。ユニコーンか」
おとぎ話や海外のアニメでよくでてくるやつだ。ポップな絵柄で見ることが多いけど、実物はこんなに神々しいのか。
「この子はね、私の従獣になってくれた子。ユニコーンのアイリーンよ!」
「アイリーンです。よろしくお願いします」
おしとやかで綺麗な声が聞こえた。
「こちらこそよろしくー!」
「綺麗な角だね!」
「ありがとうございます」
女子たちがアイリーンをなで始めると、フローラ様がこちらを向いた。
「それで今日はどこへいくのかしら?」
「かわらのみやこにいくのだそうよ」
「あらそうなの、いいわね。あそこは賑やかで面白いわよ!私も行きたいのだけれど少し用があるから…。ぜひ楽しんできてね」
そうして宮殿の方を再び振り向いた。
「さっき通ったときジャックがいたわよ。連れていってもらったらどうかしら。なんならここに呼びましょうか?」
「「「「え」」」」
「呼び花、チア・ローズ」
俺たちが止める前にフローラ様が妖力を唱えると、空中にぱっとバラの花弁が浮かんだ。そのままそれは宮殿にまっしぐらに向かっていく。
ほどなくしてつるにのったジャックがやってきた。
「フローラ様、お呼びで…あ!みんな!」
「ジャック、みんなをあなたのつるで火原の都までつれていってもらえないかしら?」
「もちろんです!」
「ありがとう。じゃあ残念だけどまたね。楽しい時間をすごしてね」
フローラ様はそう言うと優雅に手を振りながらアイリーンに乗って白い道を歩いていった。
「じゃあわたしたちもいくわ。たのしんで」
デイジーたちもいってしまった。
「おいら、今日小人の森に遊びにいく約束があるから一緒には遊べないんだけどさ、もちろん火原の都までならちゃんとつれてくよ。」
「ああ…うん。ありがとう…」
いや、ありがたいんだけど!何しろ前回のことがあるばかりにつる乗りがトラウマになりつつある。
ただジャックの笑顔をみているとそうとも言えず、俺は諦めて肩を落とした。




