光る水面とその集い
一話と二話を編集しましたが文章の行がおかしかったのでそこを修正しただけで内容は変わっておりません!見苦しいものを失礼しました!
ん?なんだろう。暖かい。
あれ?暖かい?さっきまで俺、水の中で溺れていたはずじゃ?
目を開けた。
「・・・どこだここ。」
そこはよくわからない空間だった。感覚が水っぽかったので一瞬川底か?と思ったけれど違う。そこでは息ができた。周りでは七色のオーロラのようなものがあって上を見上げてもその光景が果てしなく続いているだけだった。
着ていた衣服もそのままだ。ペンダントもちゃんとある。でもリュックはどこかへ行ってしまったようだ。帽子も落ちている途中に多分飛んで行ってしまったのだろう。
「にしても気持ちいいなここ」
そう、そこはひどく心地が良かった。まるで幼いときにいた母さんの腕の中みたいだ。
「あ、母さん!」
思わず叫んだ。そうだ溺れていたんだ。と、いうことは……。
「ここ、天国か?」
ああ。そう考えれば考えるほど天国っぽい。どうしよう俺ほんとうに死んじゃったのか。そういえばここからどうするんだ。天使でも来るのか。
あたりを見渡す。上にも右にも左にもなにもない。
「…あ」
あった。下に。丸い形の光る水面が見えた。そこからはっきりと聞こえた。
「おいで」
「あそこだ」
俺はそう呟くと無我夢中でそこへ向かって泳ぎ始めた。不思議なことにその光る水面に近づいていくたびに、途切れ途切れに声が聞こえてきた。いや、聞こえてくるというよりも耳の中で響いている感じだ。
「ハ・・ン!こっち・・・で!」
「すご・・・き・・・だねえ。」
「きれ・・・!こ・・・一つ・・・たい・・・。」
「くろ・・・でも・・や・・・よ!」
「これ・・・み・・・しょう・・・。」
「に・・・!」
「ハ・・・ン。ど・・・い・・・あい・・・。」
「なま・・・・の?」
初めての体験に頭がくらくらする。一体何なんだろう。
でも。あそこにたどり着ければその答えもわかる気がした。あと少し。もう少しだ。
俺は最後の腕の力を振り絞って光の輪をくぐりぬけた。
「!わああああああ!」
ドスン!
次の瞬間、俺は地面に叩きつけられていた。
「……!!」
あまりの痛さにうめき声をだすこともできない。昨日から頭をぶつけてばっかりだ。しかし傍から「いててて…」という声が聞こえる。そして落ちるときも一瞬女の悲鳴が聞こえた気がした。
しばらくその場にうずくまって震えていたがやっと痛みが治まってきたころに顔をあげた。
土埃が舞っていて見えなかった視界がだんだんとひらけてくる。俺と同じくうずくまっている俺と年恰好のそんなに変わらない男がニ人、女が三人、そして奥に立っている女が一人。
「いったああ!もうっ!何よー」
奥から三番目の二つ結びの女が半泣きで叫んだ。
「どこだここ」
俺の一番手前にいるやつがあたりを見渡す。しかしその周りにはまだ土埃が舞っていた。
「誰だ!お前たち!」
そして一番奥に立っていた女が凛とした声で言った。俺はと言えば、もう何が何だかわからずにただ目をぱちぱちさせている。一番奥にいる女は手に持っていた長い銀色の杖のようなものをこちらに構えながら言った。
シャラン、と綺麗な音が鳴る。
「ここは人間が入れる場所ではないぞ!一体どうやって入った!」
あー。あれか。小説とか映画でよく見るやつ。人間が人間が住む場所じゃないところに何故か来ちゃったやつ。
というかこの台詞もよく聞くやつだ。
奥で杖を構えている女は人間のような姿をしている。しかし、一度も陽を浴びたことがないんじゃないかってくらいの白い肌に人間離れした綺麗な顔立ちと、腰まで伸びた艶やかな銀髪。
一目でわかる。
ああ。こいつは人間じゃなさそうだ。
通常の俺ならばボーっと見惚れていただろう。しかし状況が状況なだけに頭の中に?しか浮かんでこない。
「答えろ!一体どうやって入ったんだ!」
ここは何か言わなければ。何か言わないと生命の危機を感じる。その杖から強力な光線が飛び出してくる気がする。
「いや…どうもこうも、なんだか不思議な声に呼ばれてそれについていったらここに来たというか……。なんか自分でもよくわかんないっていうか……」
「同じ!なんかおいでって言われた」
「うん」
二つ結びの女と、俺の手前から二番目にいる女が同調する。染めているのか金髪でそちらも美少女だった。まわりのやつらも同じだったようでこくこくと頷く。俺は驚いた。みんなあの不思議な声が聞こえたって?銀髪の女は眉を少しひそめると
「お前たちは仲間か?」
と聞いた。
「いや?まったくの初対面」
奥から二番目の赤茶色の髪の男が肩をすくめながら言うと、銀髪の女は少しため息をついた。
「お前たち、名は」
「名前?俺の名前はカナメだ」
赤茶色の髪の男が答える。「よくわかんないけど…とりあえずよろしくな」と手を少し挙げた。気さくそうでイケメンの奴だ。流れ的に、全員がその手前にいる二つ結びの女を見た。
「私?私の名前はみお。宇地ミオです。中学三年!」
うん。可愛い。クラスにいたら一番モテるタイプだろうな。
その手前の女に目をうつす。
「つ、角田このみです。私も中学三年生です」
少しぽっちゃりした、穏やかで優しそうな雰囲気の子だ。
次に金髪の美少女が言った。
「能斗アカネ」
あー。これはあれだ。高嶺の花タイプだ。クールそうな性格もあって中々話しかけにくいやつ。
「……あきと。」
手前のやつが答える。
全体的に刺々しい雰囲気を持っているのが気になった。こっちも別の意味で話しかけにくそうだ。
なんで俺はこの全く知らない土地で全く知らない奴の性格を勝手に分析してるんだろう、と少し遠目になった。
残るは俺だけだ。
「伊岐陽杜です。中学二年。よろしくおねがいしまーす」
ばらばらの「よろしくお願いします」が返された後、二つ結びの女…いや、ミオが一番奥の女に言った。
「あなたの名前も教えてくれない?んで一体ここはどこなの?異世界?」
そろそろ土埃も舞ってないだろうと俺は改めてあたりを見回してみた。
最初に見えたのは真上にある大きな水面。俺たちは多分あそこから来た。透明で清らかな水が波紋を作っている。なんで水が落ちてこないんだろう、とかはもう考えないようにした。
それから周りの木々。昔のお伽話とかに出てきそうな幻想的な森だ。根元に生えているキノコが光っていて、あちこちで発光したコケが生えており、色とりどりの花が咲き乱れている。今にも妖精がでてきそうだ。
妖精……妖精?
一番奥の女を見る。
そうだ。この綺麗な女は、妖精という言葉が一番しっくり来る。
「君、もしかして妖精?」
そう聞くと、銀髪の美少女はこくりと頷いた。
「そうだ。私の名はルーナ。月の妖精だ。そしてここは―」
その白くて細い腕を大きく広げる。
「アース。人間以外のすべての生き物が集う場所。この世界の、生命の核だ」




