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アース  作者: 音竹咲夜花
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雨の通り2

前話のサブタイトルを間違えて「アース」にしてしまっていました。

正しくは「雨の通り」です。申し訳ありません!

このお話を読んでくださってありがとうございます。これからも頑張ります。


レーゲンが高く手を広げて宙をかくように雨を弾いた。


チョン…ロロロン…


「え?音楽?」


ミオが辺りを見る。


「雨の(かなで)だ」


ルーナが手を伸ばしてレーゲンと同じように雨を弾いた。

俺もやってみる。

雨の雫の音と琴の音が混ざりあったような感じだ。聞いていて、心地いい。


「じゃあこれから妖力をあなたたちにかけるわ。かけたら跳んでみて」


シャウアはそう言うとチョン、と前にいた俺の胸を指先で押した。


チャポ…と音がしたかと思うと急に体が軽くなったように感じた。跳んでみて、と言われたのでジャンプしてみる。


「わ、わ、わぁぁ!」


体がめちゃくちゃ跳ねた。雨が降る中、三メートルほど身体が地面から離れている。他のみんなも同じようになっていた。


「なにこれすごーい!」


「俺たちは雨の中だったら自由自在に動きまわれるんだ。その妖力を少し君たちにわけたのさ。どうだい?」


「楽しい!」


昨日のトランポリンのおかげもあって三メートル上に跳ぶのは全然平気になっていた。

ずぶ濡れだけれど、めちゃくちゃ楽しい。


「本当は俺たちは雨の中だったら宙を飛べるんだけど今は妖力を分けたから高く跳ぶことしかできない」


レーゲンが言った。


「そこで勝負。君たちの中で一番早く風の里に着いた人にはこの杖をあげよう」


シャウアが懐から透明なステッキのようなものを出した。


「これは?」


「これは雨杖(あめじょう)。三回までなら雨を降らすこともやますこともできるんだ。俺たち雨の妖精が作った特別な杖だよ」


「へえー。それって人間の世界でも使えるの?」


「うん」


「すごーい!」


「ルーナには雨の花をあげるよ。前、欲しがっていただろう?」


「ああ、ありがとう。研究に使いたい」


「アルス、君は?」


「私の分の雨の花もルーナに渡してくれ」


「わかった」


「ねえ、この葉っぱの傘どうする?」


「そこの池に浮かばせておけばカエルたちが喜んでくれるわよ」


空気が潤いに満ちている。シャウアが胸の前で手を組んで空を見上げた。長い睫毛に水滴が落ちている。ずぶぬれになっている服の重さがなくなっていくように感じた。体が雨と一体化しているようだ。


「あそこに崖みたいなものが見えるだろ?」


レーゲンが示した方向を見ると確かに、雨の向こうにうっすら高い崖のようなものが見えた。宮殿のような建物も見える。


「あそこが風の里だ。あそこに向かって行けばいい」


「わかった」


「行くよ。よーい、どん!」



片足で大きく跳んだ。雨音と共に体が舞い上がる。

空中で足を前にだすと体が一気に前に進んだ。お、これはいける気がする…。

と思った矢先、俺の横をミオがすごい勢いですり抜けていった。


「!?」


「あははは!これ楽しい!」


雨の中を自由に泳ぐように移動している。しなやかに両腕を伸ばして、時々回転してシャワーを浴びているかのように気持ちよさそうにしていた。トン、と軽い音をたてて地面を蹴っている。ミオが跳ぶたびに雨の奏が聞こえる。


ミオが今、雨と遊んでいる。


「うわ、あの子速い!」


「ルーナもアルスも相変わらず速いな」


ルーナはこの遊びに慣れているようで、一蹴りで長い距離を移動している。アルスも力強く後ろ足で地面を蹴って宙を舞っていた。いつもは静かなアルスの目が雨のせいかきらきらしていた。

レーゲンとシャウアも本気をだしてしまったようですいすい行ってしまう。俺たち五人は取り残されてしまったようで、地面に降りて顔を見合わせた。


「みんな速いね…」


「私、雨杖欲しいです。昔からそういうのやってみたかったんですよね」


「うーん」


あきとが顎に手を当てた。そしてこちらを向く。


「これをやればもしかしたら、いけるかも」




「どういうこと?」


「つまり、レーゲンとシャウアは元々持っていた力から俺たちに同じくらいの妖力を分けて与えただろ?雨の中で雨の妖精が自由に動ける力。もしそれが一個体に働く力だったとすれば…」


「五人で手を繋いで移動したらその分、働く妖力も強くなる?」


アカネが言うとあきとがうなずいた。


「そういうこと。まあ、妖力の原理なんて全然わからないし五人で手をつないだところで変わらないかもしれないけどな」


「でも少なくともビリはいなくなるかもな」


と、いうことでミオはいないけど初日の風乗りの時のように俺たちは手をつないで横並びになった。


「いっせーのーせ!」



ドンピシャだ。体が雨の中で浮いていた。


「おお、浮いている」


「そのまま、空を蹴って。一気に進むぞ」




そのまま五人でものすごいスピードのまま、雨の中を通り抜けていった。雨の奏が激しく鳴っている。

自分の顔が興奮と喜びで生き生きと輝いているのが分かった。ただひたすら楽しい。雨の濃い匂いを思いっきり吸い込みながらまた宙を蹴った。


「あ、あれミオじゃね?」


「ルーナとアルスとレーゲンもシャウアもいるよ」


「追いつきましたね!」


「ねえ、このままミオもルーナもアルスも捕まえて皆で一番にならない?」


「そうだね」


もう一蹴りで一気にルーナとアルスに近づいた。はじにいたアカネがルーナの手を、あきとがアルスにまたがる。

一人と一匹が加わったせいか、妖力はますます強くなった。ミオに追いつく。


「え?追いつかれちゃった?」


「ミオ!一緒に行こう!」


最後にミオも加わる。一際強い力が増えたような気がした。

崖も宮殿もすぐそこに見える。


「よし!もう一蹴り!」


せーので声を合わせて大きくジャンプした。





「はあ…はあ…」


雨が降っていないその場所で、俺たちはへなへなと崩れ落ちた。


「うわあ…服ぐっしょぐしょだ」


「なんか雨が降っていないと逆に気になるね」


ミオがそう言ったちょうどそのとき、レーゲンとシャウアがその場に降り立った。


「いやあ…やられたよ。まさかみんなで一番になるなんてね」


レーゲンが笑いながら言った。


「すごいわ。約束の雨杖よ。ルーナには雨の花ね」


シャウアが杖を渡してくれた。不思議だ。手触りは水のようなのにちゃんとした固体になっている。

ルーナの雨の花も同じようだ。


「ありがとう」


「服、濡らしちゃったね。ごめんね。俺たちの遊びに付き合ってくれてありがとう」


「ううん。こちらこそ楽しかったよ。風の里で乾かしてもらえばいいしね」


「じゃあ、妖力は返してもらうわね」



妖力を返すとレーゲンとシャウアは「また遊ぼうね」と言いながら手を振りながら雨の通りに消えていった。


「でも、すぐそこに雨が降っているのにここでは降っていないなんて、なんだか不思議ですね」


「そうだな」


「あと少し歩いたら風の里につく。服が濡れているのは、それまで我慢してくれ」


「うん。わかった」


そうしていよいよ俺たちは風の里に向かって歩きだした。



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