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アース  作者: 音竹咲夜花
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雨の通り

湿っぽくて土の匂いと水の匂いが混じったようなかんじ。

俺はこの匂いが好きだ。目を閉じて深く息をすってみる。爽やかな空気が鼻を通り抜けた。

気づけば周りが雲だらけになっている。


「通りが近づいてきた。低くするぞ」


アーロンはそう言うと雲の下へと移動した。


「わぁぁぁ」


雲の下では雨が降っていた。小雨でも大雨でもなく、しとしとと降っている。


「これじゃ濡れちゃうね」


「風の妖精たちに乾かしてもらえばいい」


「あ、そうか」


「着いたぞ。降りる。落ちないように捕まれ。速さは少し緩める」


「ええ…まさか」


俺は下を見る。うん。めちゃくちゃ地面と距離あるけどさっきみたいに降りるつもりか。


「ちょっと待ってこの距離を垂直に降りるつもり!?嘘でしょ!?死んじゃうよ!」


「まあこれ落ちたら死ぬわな」


「間違いなく人間界のどのジェットコースターよりもすごいと思う」


「私絶叫系あまり乗ったことないんですけど…。すでにさっきので死にそうだったんですけど…」


「大丈夫だこのみ。さっきのに耐えられたんならどの絶叫系でも絶対に余裕だ」


「安心しろ。落ちたら雨の通りの番をしている風の妖精が助けてくれる」


「「そういう問題じゃないから!?」」


「行くぞ」


「いやちょっと待って心の準備が…」


アーロンが頭を下にもたげる。体が傾いた、と思った瞬間猛スピードで体が落ちていった。

ゴオオオオッ!!という爆風が耳元で聞こえる。


「ぎゃぁぁぁぁあ!!!」


「死んじゃうううう!」


みんなの絶叫が後ろから聞こえてくる。もちろん俺も叫んでいた。

俺が今まで乗った中で一番やばかったジェットコースターを二十倍にしたような感じだ。上下からの風圧と余りの高さに目がくらくらした。これジャックのに乗っていなかったら、俺死んでるぞ。

耳元で雨と風が唸っている。

息ができないし、落ちそうだしでもう泣きそうだ。俺はアーロンの角に捕まるだけで精一杯だった。



「死ぬかと思った…」


「ほんとに…」


アーロンから降りた後、みんなダウンしてたがルーナが持ち合わせていた月下草の薬のおかげでなんとか元気になった。

俺たちは今大きな葉っぱの下で体を休めている。アーロンはというと俺たちがお礼を言うと少しうなずいて雨の通りに去っていった。

そういえば俺、龍に乗ったんだなあ。しかも先頭で。色々とすごすぎて実感がわかないけど。


「これから雨の通りから風の里に向かう」


そう言うとルーナはちょうど傘になるようなサイズの葉っぱを取り出した。茎が太くてしっかりとしている。


「これを傘代わりにするの?」


「そうだ。アルスが来たら出発する」


ルーナがそう言ったところでちょうどアルスがこちらに走ってきた。俺たちの前で立ち止まるとぶるぶると体を振る。水滴が飛び散った。


「思ったより時間がかかったな。雨で道が滑りやすくなっていた」


「え、あの距離を走ってきたの?この短時間で?」


もうちょっと時間がかかると思っていた俺は驚いて聞く。


「昨日、私たちに乗っただろう。あの速さが早歩き程度だ。本気を出せばもっと速く走れる」


「ほえええ…」


しかもアルスは息一つ荒げていなかった。すごい。


「これは、なんの葉っぱなんだ?」


「里芋の葉っぱだ。水を弾きやすくなっている」


俺たちはその葉っぱを持って雨の通りを歩き始めた。少し下り坂のようになっている。

周りには様々な色の紫陽花(あじさい)が咲き乱れている。そばにあった池には睡蓮(すいれん)があり、その葉に座っているカエルと、睡蓮の花の妖精が戯れていた。

俺たちの他にも里芋の葉っぱの傘をさしている生き物たちが少しいる。時々アーロンのような龍が空を飛んでいて大量の水しぶきが体にかかった。傘をささないで、雨の中をはしゃぎまわっている妖精たちもいる。雨粒を散らしたような服を着ていた。


「水の妖精の一つのうちの雨の妖精だ」


ルーナと相合傘をしているアルスが言った。

雨の妖精たちは笑いながら高く跳んだり水たまりの水をかけあったりしていた。


「そういえば、俺も小さい頃は傘もささないで遊んでいたな」


カナメが言った。


「私も」


「うん」


「ずぶぬれになりながら遊ぶのが楽しかったんだよな」


そこで俺は葉っぱの傘を下ろしてみた。目を瞑って雨を浴びてみる。気持ちいいな。

そう思ったとき、俺たちの前にふわりと何かが降り立った。


雨の匂いがする。



「やあルーナ、アルス。と、」


前を見ると雨の妖精らしき二人がこちらを見ていた。


「噂の子たちじゃない。これからどこに行くの?」


「風の里に行くところだ」


「いいね。あそこは気持ちいいよ」


男の子の方の雨の妖精が言う。


「俺の名前はレーゲン。雨の妖精。こっちはシャウアだ」


女の子の方のシャウアが手を振った。


「ね、よかったら私たちと遊びながら風の里まで行かない?ここは雨が降っているから間違えて水海の都に行ってしまうことも多いし。遊びもかねて案内するわよ」


俺たちは顔を見合わせた。さっき言っていたことが数秒後に本当になるとは。


「多分、濡れるけど後で乾かすから大丈夫…か?」


ルーナがこちらに問うてきた。みんなうなずく。


「よーし!じゃあさっそく始めよう」


レーゲンの目が水滴のようにきらりと光った。

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