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アース  作者: 音竹咲夜花
19/33

月の憩い場2

「…ハル…!」


「…ハルー…!」


「ハルト!」


「わ!何?」


目を開けると、ルーナが心配そうな顔で覗き込んでいた。このハンモックに上るのに使った糸でできたはしごに立っている。


「大丈夫か?」


「え?何が?」


「いや、泣いているから」


「え!?」


慌てて自分の顔に手をあてる。確かに冷たい雫がながれていた。あれ、そういえば夢でも泣いていたような…。


「何の夢見てたんだっけ」


そう呟くと、ルーナは何も言わずに懐からハンカチを取り出すと顔を拭いてくれた。

柔らかくて懐かしい匂いのするハンカチだった。


「ルーナって意外と優しいよな」


「うるさい」


「ふあぁぁよく寝た」


カナメがあくびをしながら起きる。


「俺どれくらい寝てた?」


「昼時はとっくに過ぎてると思うぞー」


あきとが下から声をかける。心無しか、その顔は嬉しそうだ。一体何をしていたんだろう。


「もうそんな時間ですかー。このハンモックとても気持ちよかったです」


このみはまだぼんやりとした声をしている。


「お腹がすいたろう。何か食べよう」


ノイが言った。


その後、俺たちは近くにあった家に通された。さっき茶を入れてくれたアマルが料理も作ってくれるようだ。

家に入るとルーナがランプを付けてくれた。

部屋の真ん中に大食堂にあるような長いテーブルに椅子がそれぞれ置かれていた。

奥にももう一つ部屋があるようだ。


「じゃあ私がこれから料理を作るけど、そこの四人、手伝ってくれないかしら?」


奥の部屋からアマルがルーナ、ミオ、このみ、アカネに声をかける。女子たちは快くうなずいて奥の部屋に入っていった。多分調理場があるのだろう。


「料理って、アースの実じゃないの?」


カナメが聞く。


「そうだね。まあアースの実って言っても食べ方にもいろいろある。アースの実はとても美味いけど、毎日同じ食べ方をしていたら飽きるからね」


ノイが言った。俺はあの実を毎日食べても飽きない自身があるけどなあ。めちゃくちゃ美味しいし。


調理場の方から何かを焼いている音が聞こえた。


「ここでも火が使えるんだな」


「アマルは月と火の妖精の子なんだ。だから火の妖力も使える。他にも別の種類の妖精との子供はたくさんいるよ」


そこからそう時間がたたないうちに嗅いだこともないような良い匂いが立ち込めてきた。このみとアカネが料理の乗った皿を運んでくる。

そこにはごろごろと具材がある赤いシチューのようなものがあった。


「これは何?」


「アースの実は調理の仕方で味や食感まで変わるらしいです。これはそれを生かして作ったシチューですね」


「なるほど」


見た目はボルシチに少し近いかもしれない。全員に配りおえると、エルア様が指を組んで顔の前に近づけた。ルーナとノイ、アマルもそうしたので俺たちも真似をする。


「すべての自然に感謝を。エイメン」


「「「エイメン」」」


「「「「「「エイメン」」」」」」


この世界にもいただきますみたいな言葉があったのか、と思う隣の先のカナメは早速スプーンをシチューに入れて口に運ぶ。もぐもぐと咀嚼した。


「………」


「…どうかな?美味しい?」


「めっっっちゃ美味しいです」


「ほんと?やった!」


自分の分を食べないでこちらの様子を窺っていたアマルがその言葉を聞くと飛び上がって喜んだ。

その言葉を聞いた俺も早速スプーンでシチューをすくった。

湯気がたっていたので、軽く息を吹きかけたから食べてみる。


「……」


芋のようなものがあるかと思えば、お肉のような食感もする。スープは塩味と酸味が混ざり合ったような味がした。昨日と同様、よくわからない味だ。

でも、


「めっちゃ美味しい…」


思わずつぶやいてしまうほどのおいしさだった。


「おいしいです!」


「こんなおいしい物食べたことない」


アースの実初体験のこのみとアカネも感動している。


「アースの実はそのまま食べても美味いが、やはりお主が調理すると絶品になる。のう?アマル」


「とんでもないことでございます。ありがとうございます」



それからすっかりお皿を空にすると再び憩い場に戻った。

エルア様はまだ見回りを続けるという。どうしようかと思っているところでノイが言った。


「みんなでトランポリン行かない?」


「トランポリン?」


「そう。月の憩い場の子供の妖精たちが遊ぶ場所だよ。大きな大きなトランポリンがあるんだけど、それが普通とはちょっと違くて面白いんだ。そのトランポリンも月の糸でできているんだよ」


「行きたい!」


「アースは本当に遊び場所が充実しているよなあ」


「遊ぶことは肉体の成長や心の安定を保つうえで大事なことだ。それに、知識も得られる」


「確かに。俺、家庭科の授業でそれ習った」


「カテイカ?」


「家庭科っていうのはねえ…」






楽しく話ながらの道中を、満月が明るく照らしていた。


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