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アース  作者: 音竹咲夜花
13/33

遊庭2

投稿遅れてすみません!

次のアスレチックに移動する間、俺は数人のビリーの小人から逃げ回っていた。アルスとルーナはあきとの方を追いかけていった。アルスはめちゃくちゃ速いから多分あきとは捕まっている。


「にしたって…」


俺は走りながら後ろを振り向く。俺のあと三歩くらいのところまで小人が迫っていた。

俺はこれでも一応クラスで足が一番速い。去年のリレ選だって出たし。

でもこいつらはそれと比べ物にならないほど速かった。多分五十メートル走四秒くらいだ。

あーこれは多分捕まるな、と息切れし始めて思った。と、そのとき体が何かに巻き取られる。


「!?」


ジャックのつるだ。やや乱暴なものの体がそのまま持ち上げられてアスレチックの方に引っ張られていく。すとんとジャックの手前に降ろされた。助けられたのは俺だけではないようでもう一人、ピクトの小人の男の子もいた。


「危なかったなー」


「ありがとうジャック」


「ありがとう。小人ってほんとに足速いんだな。危なかった」


「速いよなー。おいらも走ってちゃ叶わねえから妖力使うしかないんだよ。ほらあそこ」


ジャックが指した方を見ると確かに。フローラ様が翅で飛びながらビリーたちから逃げている。そんなフローラ様を捕まえようと小人たちは色々と試行錯誤していた。


「あ、やべ。」


喋っていると、ビリーらしき小人が向こうの張った網からつたってやってきた。


「じゃあまた!ピンチだったらなるべく助けるからさ!」


ジャックはそう言うと大きく跳ねてどこかへ行ってしまった。俺はもう一人、残った小人と目を合わせる。


「とりあえず逃げよう」


俺は頷いてその小人が走る方向に着いていった。ブロックのようなものでできた階段が連なっている。後ろにビリーが走ってきているのがわかったので必死にその階段を上った。


あと三段…二段…一段…。

やっとの思いで上りきると手前にロッククライミングそびえたっていた。わずかに下に隙間がある。

とにかく夢中でその下に滑り込んだ。その際に埃がたって咳き込みそうになったが手を口許にあてて抑える。一緒に滑り込んだ小人が完全に息を殺しているので俺もそうすることにした。

 そのすぐ後にビリーの小人が階段を上がってきた。小人の足が見える。じいっと息をこらしてその様子を見守っていた。

小人の足は少しの間そこらをうろちょろしていたが、ロッククライミングを登っていったようだ。上から振動が聞こえる。その振動が完全になくなると、俺たちはやっと息を吐いた。


「あー。危なかったな」


「ああ。もう少しで捕まるとこだった」


クライミングの下から這い出てさわやかな空気を吸いこむ。それからやっと隣の小人の名前を聞いていないことに気づいた。


「あ、そうだ。俺の名前は陽杜。よろしくな。お前は?」


「俺はモノ。よろしくな」


モノは栗色の巻き毛を眉毛の間に垂らしているのが特徴的な、かわいらしい顔立ちの小人だった。小さなオレンジ色の三角帽子を頭につけている。


「ちなみに何歳?」


「俺?俺は十三歳」


「あ、同い年だ」


この世界で初めて同い年を見つけてなんだか嬉しくなる。いい奴そうだし。小人だけど。

そのとき、またもや後ろから階段を上がってくる音がした。振り向いたら見覚えのある顔がそこに立っている。


「えーと、カナメ。お前は確か…」


「ビリーだ」


「ですよね!?」


瞬間、モノが素晴らしい速さでクライミングを登っていく。ちょっとまってくれえ!俺を置いてかないでえ。

しかしこのままではカナメに捕まってしまうので俺もクライミングを登りはじめた。モノが手や足を置いていたところをなんとか覚えてその通りに登ってみるとだいぶ速く登れた。

一番上の方までくるとモノが手を伸ばしてくれる。それをつかんでやっと上にいくことができた。


「大丈夫か?ハルト」


そういうモノは息一つ乱れていない。やっぱり小人は体力もすごいのか。俺は運動部だけどもうヘトヘトだ。


「モ、モノ…お前すごいな…」


「?あ、ああ。ありがとう?てかハルト、もうすぐビリーが来るぞ」


「え、まじ?」


見下ろすと本当だ。あと上までちょっとのところにカナメがいる。


「コイツ…イケメンで運動もできんのかよ」


「よくわかんないけどいくぞー」


「うん」


俺は息を整えて立ち上がった。

モノがまっすぐ、進んでいくのでそれに着いていく。途中、ぐるぐるしているトンネルをくぐったり、両隣に張ってある網で移動したりと中々にハードな道のりを速いスピードで進んできた。しかも途中から追ってくるビリーがカナメ以外にも増えていた。


「まずいな、このままだと捕まる」


「はあっはあっ…え、まじ?俺もう疲れた」


少し道が開けたところで俺が倒れているとモノが俺を見下ろして言った。


「よし、じゃあ俺におぶされ」


「え?おんぶ?なんで?」


「疲れたんだろ?これから少し危ない道を行くから」


「そ、そーなんだ…」


俺はげっそりしながらもモノの背中に乗った。体格差はそんなにないので重いかなあと思ったけれどモノはあっさりと俺を持ち上げた。

そして走り出した。


「はっっや!!」


結構速いスピードで走っているのに全く体がぶれない。安定感があってとても乗りやすい。


「俺は小人の走り屋なんだ。小人に頼まれたらおぶってどこまでも連れていく」


モノの少し得意気な声が聞こえてきた。


少し走った後でモノが一度立ち止まった。不思議に思って前方を見てみる。


そこには大きなキノコがぽんぽんぽんぽん生えていた。前方にいる小人がそれを軽々と飛んでいる。その先には滑り台の乗り口があった。が、


「これ…下手すりゃ落ちて死ぬ…」


ここはだいぶ高い場所だ。下の地面がめちゃくちゃ遠い位置にある。落ちたら終わりだ。


「じゃ、ハルト行くぞ。しっかり捕まってろよー」


「モノ…落ちるなよ。俺まだ死にたくない…」


「ははは、お前面白いな」


軽口を叩いた後、モノは大きく飛んだ。

手前のキノコに着地したかと思えばまた次のキノコに飛ぶ。あっという間に滑り台の入り口まで来ていた。

モノはそこで俺を下ろした。


「ありがと~助かったよ」


「いいんだよ。よし、俺が先に滑るからハルトはその後で来てな」


「うん、わかった」


モノが滑りだしてから三分後くらいに俺も滑り出す。長いしスピード感もちょうど良い。


汗びっしょりになっちゃったな。

でも楽しかった。


滑り台の最後は大きく斜面が上に反り上がっていた。反動で大きく飛び出したけど、キノコのトランポリンが俺を支えてくれた。

ちょうどそのとき、小人笛の音が聞こえた。


「終わったのか?」


「終わったよ。やったな」


モノとハイタッチをかわす。その後、さっき居た場所に再び集まった。

結果はピクトの勝ちだった。ピクトが残り五人以上だったらピクト側の勝ちらしい。

味方の小人たちと喜びあっていると、遊庭に大きなジュースの瓶をもった恰幅のいい小人のお母さんたちが入ってきた。


「喉乾いたでしょう。たくさん飲みなさい」


そう言うとみんなにグラスを配り、その後にジュースをついでいく。もちろん俺にもグラスとジュースが回ってきた。グラスは固めた花びらのようなものでできている。その中に小人のお母さんがなみなみとジュースを注いでくれた。


「なんだこれ…。色が変わってる…」


そのジュースは初めは紫色だったのに、桃色、水色、黄色とどんどん色が変化していた。わずかに透明な泡がたっている。


「アースの実のジュースだ。色によって味がどんどん変わる。私が好きなのは黄色だ」


ルーナが簡潔に説明してくれた。それから黄色のジュースを喉をならして美味しそうに飲む。

俺は水色の時にそっと口に運んだ。


「わ、サイダーだ」


甘くてよく冷えている。アースの実すごいなと思いながら俺はおかわりをした。


その後も二回戦三回戦と隠れビリーを続けた。

四回戦目をしようとしたときに、ふとルーナが言った。


「お前たち、もう帰らないとダメじゃないのか?」


「あ」


「やっばー!楽しすぎてすっかり忘れてた!」


ミオが頭を抱えると周りの小人たちが笑った。

遊庭にも結の泉があると言う。俺たちが帰るというとみんな連れ立って見送りにきてくれた。


「今日はとても楽しかったわあ。また遊びましょう!」


フローラ様がにこにこしながら言った。


「ぜひ、また遊庭に来てね」


「またつる乗りしたかったら言ってなー」


「またな」


今日一緒に遊んだ仲間たちにも手を振ると最後に俺はルーナに聞いた。


「俺たち今小人サイズなわけだけど元の世界に帰ったら戻ってんのか?」


「ああ。戻っているはずだ。その体は小人の森から出たら自然と元の姿に戻れる妖力になっているからな」


「そっか。よかった」


ルーナはうなずいて、少しためらってからこちらに聞いてきた。


「明日も来るか?」


「え?うん。もちろん行くよ」


「俺も行くよ」

「私もー」

「俺も。暇だし」


「そうか」


ルーナは心無しか少し嬉しそうな顔をした。側にたっているアルスもそんなルーナの様子を見て微笑んでいる。

それからルーナ、フローラ様、ジャック、モノ、ハンナとジュースをくれたお母さんたちにもう一度お礼を言うと俺たちはまた元の世界に帰っていった―。






「ただいまー」


「あら、おかえりなさい」


「ん?なに?」


母さんが顔をまじまじと近づけてくる。なんだと思ったらそのあとににっこりと笑った。


「なんかいい顔してるじゃない。楽しいことでもあったの?」


「え?いや、別に…」


「スマホ持っていかなかったから心配してたのよ。あぶないところ行ってたらどうしようって。でもまあ大丈夫…みたいね?」


そのとき、なぜか母さんは一瞬居間の方を振り向いた。そこには揺り椅子に座って眠っているおばあちゃんがいた。


「とにかく、危ないところには行かないこと。陽杜が死んじゃったら、母さんショックで生きていけなくなっちゃうからね?」


「わかってるわかってる。大丈夫だって」


「まったく…あ、もうすぐ夜ご飯できるから、手洗ってきなさい」


「はーい」









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