遊庭
そこは様々な遊具やアスレチックが集まったとても大きな公園のようなところだった。広い草原に長い長い滑り台、普通のものより三倍ほど高いジャングルジム、太鼓橋にトンネルネットにグラビティ。まだまだある。どれも木や鉄でできていて、周りに花が飾られていた。この花もフローラ様寄付のものか?
そしてたくさんの小人が遊んでいる。
「小人は小さくてそのぶん危険が多いから、ここで遊びながら運動能力をつけるために作られたの」
ハンナが説明してくれた。
「懐かしー!小さい頃よくこんなところで遊んだな」
ミオが頬をゆるませる。
「せっかくだし何かするか」
ハンナはそう言うと胸元から笛を取り出して上を向いて吹いた。
ピィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!
思ったよりも全然大きな音が出て思わずしゃがんで耳を塞ぐ。すると何故か一斉に小人たちがこちらにわらわらと集まってきた。
「ル、ルーナ。な、なにこれ…」
「こ、小人笛だ。仲間を呼ぶときや踏まれそうになったときとかに吹くんだ。大きな音だから気づくだろう」
「た、確かに…」
ルーナも顔をしかめながら耳を塞いでいる。
あれよあれよという間に百人ほどの小人が集まっていた。みんなざわざわしている。
「よし」
ハンナが腰に手を当てて言った。
「これから隠れビリーをしようと思う」
か、隠れビリー?なんだそれ。
「隠れビリーはビリーから隠れながら逃げるゲームのことだ」
ルーナが言う。人間界でいう隠れ鬼だな。
「ごめんなさあい!遅れちゃったわ!」
そのとき、丁度遊庭にフローラ様が飛びながら入ってきた。きょろきょろと辺りを見回す。
「よかった、まだ始まっていないみたいね」
「フローラ様、花分けをやってくださいませんか」
ハンナが聞く。フローラ様はうなずいて手を宙に掲げた。
「もちろんよー。エプロフローラ!」
ボンッ!
フローラ様の手から桃色の光があがる。そして上の方で一度止まると、一気に爆発した。
「わっ!なになになに?」
ミオが怯えるなか小人たちが歓声をあげる。
その瞬間、上から大量の赤と白の花弁が降ってきた。
「なんだなんだ!?」
すると小人たちが手を伸ばして花弁を取り始めた。俺も真似してとりあえず上から降ってきた花弁を手に取る。
ハンナが言った。
「みんな取れた?取れたら手をあけて。赤がビリー。白がピクトよ。ピクトはビリーに捕まったらビリーになるわ。確認したら服に花をつけて。ビリーかピクトかわかるようにね」
うん、なんだか頭がこんがらがるな。多分ピクトは逃げる側のことを言うのだろう。俺は…。
手を開けてみた。白の花弁がある。ピクトだ。
「あ!陽杜くん!私もピクトだよ」
「俺もだな」
ミオとあきとが白の花弁を見せながら言った。
「おいらもピクトだ」
「私もー」
ジャックとフローラ様が言う。ルーナ、カナメ、アルスはビリーだった。
相変わらず小人たちは花弁の色を見て悲鳴をあげたり喜んだりしている。ハンナが再び笛を吹き、しずまりかえったところで大きな声をあげた。
「じゃあ私たちは百秒数えているから、ピクトたちはみんな隠れて」
ハンナはビリーらしい。ジャックが少ししょんぼりしている。俺は思わず笑ってしまった。
ビリーたちがぞろぞろ集まって数を数え始めた。こうしている場合じゃない。早く隠れないとな。
とりあえずピクトの小人たちが走り出した方向に行く。遊具がたくさんあるところだ。
五十人の小人がそれぞれ色んなところに隠れ始める。網とロープの細い隙間隠れる奴、滑り台の真ん中部分で体を倒して隠している奴、遊具ではなく傍にある木を高くのぼって葉で見えなくなっている奴。
ちょっと待て隠れるのうますぎないか。まあ確かにアースはともかく、人間界では隠れるのが上手くないと小人たちは生きていけないかもしれないけど…。
どこに隠れようか。なるべく見つからないかつ、見つかってもつかまらないように逃げられる場所。
もんもんと考えていたらさっきの方向から十!九!八!と聞こえ始めた。
まずい!ビリーたちがもうすぐ探しに来る!
あたりをきょろきょろしていると穴がたくさん開いた半球体の遊具からあきとが頭を出してこっちに手招いていた。いそいでそちらに走り、穴から中に潜り込んだ。
「助かったよー。ありがとう」
「ああ」
その遊具は穴が六つあいていた。まあかくれやすい場所だし、絶対に探しにはこられると思うけれどつかまらなければいい話だ。六つの穴から同時に入ってこられたら終わりだけど、そうじゃなかったらあいた穴から逃げればいい。
さっそくビリーたちが動き始めたようだ。外から足音や叫び声が聞こえてくる。それは昔小学校でクラスでやった鬼ごっこの雰囲気と似ていた。なつかしいなあ。あ、そういえば。
「あきとってさ。狼好きなの?」
「え?ああ、うん」
普段無表情のあきとが少し目が輝かせる。ほんとに好きなんだな。
「どうして、狼が好きなの?」
「え?うーん」
あきとが深く何かを考え始める。
「なんでだろ…」
そのとき、一番大きな穴からアルスに乗ったルーナが勢いよく入ってきた。
「ええええええ!?はやっ!」
「逃げるぞ」
ああ、そういえば狼は嗅覚がするどいんだっけ…。絶対勝てないじゃん!
穴からでると外も大混乱になっていた。数人のビリーの小人もまたこちらを追いかけてくる。
俺は次の隠れ場所を探しながら必死に走りつづけるのであった―。




