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プロローグ
異様な空間だった。
おとなしそうな少女が本を読んでいる。
熊のような体つきをした男が筋トレをしている。
臆病そうな少年が不安げに周りを見渡し、明るい髪の色をした姉妹が声を上げて笑っている。
彼らの共通点は2つ。
まず、全員が若い。おそらくは10代、もっと若いものもいるかもしれない。
次に、
これが最も異様なことだが、
全員体の一部がない。
本を読んでいる少女は右目がない。
筋トレをやめない男は左腕がない。
落ち着きのない少年は右足がない。
笑い転げている姉妹は片耳がない。
誰もそこに義手や義足をつけることもしていない。
そして、それが当たり前かのように、誰もそのことに触れようとはしない。
やがて、そこにもう1人の男がやってくる。
白衣を着た研究者然とした男だ。
彼が現れた瞬間、
その子供たちの間の空気が一気に張り詰めたものとなる。
そして、男が言う。
「さあ、実験を始めよう。私の愛しいモルモットたち。」