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REALIZE2  作者: しんた☆
15/23

第5章 1 歪んだ街

投稿時間が大幅に遅れて申し訳ないです。

出勤途中で読んでくださっている方、いらっしゃったならすみません。


 大雨から3日が経った。ハワードの怪我もヒカルの体調も整い、4人は荷造りを始めた。次は北の領土を目指す。全体に気温の低い北の領土は、冬、雪深くなるので、温かい気候のうちに見ておかなければならない場所だ。

 北の果て、シュルツ侯爵領に入ると、まずは宿をとることにした。いつものようにハワードが出向くが、どういう訳かどこも受け付けてはくれない。


「ここもダメでしたね」

「どうしてかしら。満室でもなさそうなのに」

「どうも身分が高くないと泊められないと言われるのです。ヒカル、どうされますか?身分を明かしますか?」


 それでは本当の姿を見ることは叶わないだろうとヒカルが考えていると、リッキーが思い付きで言う。


「じゃあさ、ベスに侯爵令嬢として行ってもらおう。俺が付き人になるよ」


 ベスは困惑気味だったが、とりあえずは宿を取りたい。ヒカルに手伝ってもらってドレスに着替えると、ベスはしかたなくリッキーを連れて受付へと出向いた。


「こちらに泊まりたいのですが、お部屋はあるかしら」

「失礼ですが、お名前は?」

「私はエリザベス・フォリナーです。それがなにか?」

「侯爵令嬢様!これは失礼いたしました。それでは一番良いお部屋をご用意させていただきます。」

 

 馬車を止めて、3人がベスの部屋に入ろうとすると、途端にホテルマンに止められる。


「あなた方はどちらの方ですか?」

「私はフォリナー侯爵令嬢の侍女です」

「あ~、それじゃあそこの通路を右に曲がったところに従業員の部屋があるから、そっちに行ってな」

「あら、この人たちは私の旅の仲間なのよ。お部屋に入れてあげて」


 ホテルマンは目を見開いて、それから呆れたように笑ってみせた。


「いえいえ、この宿は高貴な方のみにご利用いただいております。だいたい、平民が貴族の方々と同じ部屋を使うなど、ありえないことです。この北の領土では、きちんと身分制度を守っていただいているのです」


 すっきりと胸を張って自慢げに言うホテルマンに、あきれ果てた。


「分かったわ。でも今後の打ち合わせをしたいので、席を外していただけるかしら」


 ベスは極力怒りを見せないように言うと、ホテルマンを退室させた。


「随分変わった考え方ですね。」

「う~ん、私、この土地では侍女のふりを通して、この土地について調べたいわ。」


 ベスは承服しかねるといった顔をしていたが、仕方なくヒカルのドレスを借りて、ヒカルを侍女として従えて夕食をとり、部屋に戻ってきた。そして、ヒカルたち3人は下働きが集う店で食事を摂ることになった。


 ホテルの並ぶ大通りをわきに入って、平民が暮らすエリアを歩く。大通りとは雲泥の差の古びた街並みが続いている。道行く人に、この地域は以前から身分が厳格に守られるのかと問いかければ、当然そうだと返事が返ってくる。


「北の領土はあの震災でもほとんど被害がなかったからな。魔素が流れたから仕方なく移動してきたが、まだ向こうにも家が残っているよ」

「ああ、サルビィの丘を見てきたのか。あの辺りは全部流されただろう?規制が緩く怠惰な生活をしていた罰が当たったんだよ」

「わしらは領主さまのおかげでひどい目に遭わずに来れたんだ。旅の人も、くれぐれも失礼のないようにな」


 周りを見渡すと、この土地には高齢者が多い。災害の生存率が高かったことを物語っていた。


 翌朝、宿の従業員たちがあわただしく何かを用意しているのが見えた。ハワードが店員に聞くと、王女様がこちらに向かっているというのだ。


「ヒカル王女さまだよ。王太子殿下のお嬢様だ。これは大変光栄なことだ」


 どうやらベスが名乗ったことで、シュルツ侯爵がフォリナー侯爵家に連絡を取ったらしい。その時、派手なドレスに身を包んだ令嬢が大きな馬車から降り立った。


「今日はこちらに泊まります」


 令嬢がちらっと視線を投げかけると、年老いた執事がすぐさま宿泊代金を差し出した。


「こ、これは。多すぎます。すぐにお釣りを」

「いいえ、結構よ。一番良いお部屋をお願いね」

「はっ!すぐにご用意いたします」


 従業員は慌てた様子でベスの部屋へと向かう。執事が受付に記帳しようとするが、こちらは支配人が丁重に辞退した。ぽかんとその様子を見ていた3人だったが、突然従業員に呼ばれてベスの客室に行けと言われた。高貴な方が見えたから、部屋を譲れというのだ。呆れながらも部屋を移った4人はどんな人物が来たのかしばらく様子をみることにした。  


 客人はともかく、宿側はどう考えてもヒカルと勘違いしているようだ。最高のもてなしをと、それのためにはほかの客など邪魔だと言わんばかりだった。夕食を宿内のレストランで摂りたいと言えば、王女様のためにレストランを使うので、外に行けという。4人は、馬車の中で平民の服装に着替えて下町の古ぼけたレストランに入った。

 やっと落ち着いて食事ができるとほっとしたのもつかの間、乱暴にドアを開けて、店内に男たちが入ってきた。酒が入っているのか大声で乱暴にしゃべり、ずけずけと好きな席に陣取った。隣にいるヒカルたちに目をやると、ニヤニヤしながら近づいて酌をしろと言い出す。


「見ず知らずの人間に酌をしろとはどういうことだ」

「ほお、平民のくせにずいぶんな口をきくじゃねぇか。俺はこれでも男爵家の人間だ。おとなしく言うことを聞け!」


 胸倉をつかまれて、一瞬剣に手をやったリッキーをハワードが止めた。


「失礼いたします。こちらにいらっしゃるのは、マイヤー子爵のご令息です。見聞をひろげるために身分を隠して旅をしているのです。お戯れはその辺りでおやめください」


 執事然としたハワードの振る舞いに、男たちは驚いて勢いも一気に消え去った。途端に店内もしんと静まり、店主が慌ててやってきた。


「も、申し訳ございません。大変な失礼をいたしました。我々のような店ではお口に合うものができるかどうか…」


 そういいながらも、頼んでもいない料理が次々運び込まれる。


「さっきからいただいていますが、こちらの料理はおいしいですよ。どうしてそんなに貴族におびえるのですか?」


 リッキーが問いただすと、店主は遠慮がちにシュルツ侯爵の命令だと答えた。


「王国では身分制度が緩くなり、生活が乱れている。以前のような災害が再び起こっては大変だとおっしゃって」


明日は遅れないように掲載がんばります。

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