[第1話] 追放撲滅組合創立話 壱
次話から本編入ります。
いつからだろうか。
この世界に追放というものが蔓延るようになったのは。
勇者パーティーの僧侶と将来を誓い合っていた幼なじみの荷物持ちが勇者に僧侶を寝取られて追放され、
またある冒険者パーティーでは汚名を着せられ追放、能力が足りないから追放、本当の実力を隠していてそれがわからないやつに追放され、人間以外でも魔族では魔王の継承者争い、弱いから追放、変な格好をしているから追放、何でもかんでも何処に行っても追放追放追放追放。
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おかしいとは思わないか。
特に何があった訳でもないのに日々1つまた1つと確実に追放が相次いでいる。
そう。まるで神がそうあれと言っているかのように。
確かにパーティーのレベルに合っておらず、これ以上連れて行くとパーティー全体の被害が出てしまうのなら分かる。
順風満帆な商会がたった一人の幹部の能力不足のせいで倒産してしまうのならば誰だってそいつを切るだろう。私だってそうだ。
しかしだ。
どう考えてもそいつが領地の運営などのほぼ全てを司っていたのにそれに気づかないで追放するようなバカに領地なんぞ収められる訳がない。
オムサスの件でもそうだ。
オムサス領の領主リーサム=アンゼル。以前までは勤勉で民のことを思い、息子らのことを妻が亡くなってからでも愛情を注いでいたはずだ。決して自らの息子を剣術の才能がないからと追放したりなぞするような男ではない。
だがどうだ。
まるで人が変わったかのようではないか。
いや、人だけが変わったと言うよりは領地のある世界が何者かによって書き換えられたと言った方が正しいかもしれない。
領民は急に変わった領主の態度に何も思っていない。
追放されそうな当の息子ですら変化になんの疑問も抱いていない。まるで最初からそうであったかのように。
上書きされているのだ。
私にはどうにも神々が私たちの世界を好き勝手に弄り回しているようにしか思えない。
そう思う私は不敬なのだろうか。背信者といわれるのだろうか。
私を嘲笑うかのように酷く立派で陽の光に照らされ純白と清廉さを演出している建物がそこにある。
ここは私たちの世界だ。神々の娯楽のための箱庭では決してない。
神々に私たちの居場所を弄られてたまるか。私たちの記憶を、思い出、愛情を世界を穢されてたまるか。
再び決意を固め、私は踵を返して元来た道へと歩いていった。
追放撲滅組会創始者 リーサム=アンゼル
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