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クリパという名のゲーム大会

 今日は十二月二十四日ということで、クリスマスパーティーを決行する日である。

 俺と推川ちゃんがスーパーへと買い出しに行っている間、残りの三人はリビングの飾り付けをしていた。


 俺と推川ちゃんが帰宅すると、リビングには色鮮やかな風船や電飾が飾り付けてあった。テレビの上にはデカデカと画用紙が貼りつけてあり、ピンク色の文字で『メリークリスマス』と書かれていた。

 すっかりクリスマスの雰囲気となったリビングを見ながらパーティーの準備を終えると、とっくに夕日は沈み時計の針は十八時に迫っていた。


「それじゃあクリスマスパーティー始めようか! みんなグラス持った?」


 ひな先輩はオレンジジュースの入ったグラスを片手に尋ねると、四人は首を縦に振った。

 テーブルにはスーパーで買ってきたチキンやピザなど、様々な料理が並んでいる。


「それじゃあ始めるよ! 今日はわたしのために旅行に着いて来てくれてありがとう! みんな愛してるぜ! それでは〜、メリークリスマース!」


「「「「メリークリスマース!」」」」


 ひな先輩の掛け声に皆がそれぞれ声を上げて、グラス同士をくっつけて乾杯をした。推川ちゃんは缶チューハイを飲んでいて、生徒は皆オレンジジュースを飲んでいる。

 乾杯したグラスをテーブルの上に置いて、それぞれが自分の紙皿に食べたい食べ物を乗せ始めた。こうして俺たち五人のクリスマスパーティーが幕を開けたのだった。


 ☆


 料理もあらかた食べ終わり、今はショートケーキを食べながら皆でスゴロクのテレビゲームをしている。

 テレビにはそれぞれが操作するキャラクターが映っていて、俺は緑色で二足歩行をする恐竜のようなキャラを使用している。


「推川ちゃんの番だよ」


 自分のターンが終わったので、コントローラーを置いてケーキを食べ始める。


「はいはい」


 ソファーに座っている推川ちゃんは四本目となる缶チューハイをテーブルに置いて、テレビに映る黄色い帽子を被っている太ったおじさんのキャラクターを操作して、サイコロを転がした。


「お、やったー、スター三つだ」


 このスゴロクゲームは、手に入れたスターの数を競うゲームなのだ。今の皆のスターの数は、推川ちゃんと柊が三個、俺とひな先輩が二個、桜瀬が一個だ。


「推川ちゃんすごい! これで瑠愛ちゃんと並んだね!」


「あはは、ありがとー」


 ひな先輩は自分のことのように喜びながら、隣に座っている推川ちゃんの肩をバンバンと叩いた。一応推川ちゃんは先生という立場ではあるが、ひな先輩のスキンシップは容赦ない。


「次は柊ちゃんの番ね」


 推川ちゃんはそう言ってコントローラーを膝の上に置くと、休む間もなく缶チューハイを口にした。彼女は家でも一人で晩酌をするくらい、お酒が好きなのだと言っていた。しかしお酒に強いわけではないらしく、今も彼女の頬は薄らと桃色をしている。


「はい」


 柊はずっと手に持っていたコントローラーを操作して、キノコを頭に被ったキャラクターでサイコロを転がした。出た目は四。キノコを被ったキャラクターは駆けながらマスを四つ進むと、怪獣の顔をした不気味なマスに止まった。


「これグッパのマークじゃない? 絶対いいことないでしょ」


 桜瀬がそう言った直後、緑色の甲羅を背負った怪獣が現れた。するとその怪獣がキノコを被ったキャラを殴りつけ、スターをひとつだけ奪っていった。

 これには柊以外の四人は大爆笑。柊は一位の座から下りることとなった。


「アイツ、嫌い」


 両方の頬を膨らませた柊は、コントローラーを置いてケーキのお皿を手に取った。


「次はわたしの番だね! よーし、一発逆転するぞー!」


 ひな先輩はそう言ってコントローラーを握ると、赤い帽子を被ったキャラクターを操作してサイコロを振った。出た目は二。コインが三枚失われただけで、特に面白みもないマスに止まった。


「ぶー、わたしにも面白いこと起きてよー」


 柊を真似てなのか、ひな先輩も頬を膨らませている。そんな彼女を横目に、桜瀬がコントローラーを握る。


「よーし、アタシも逆転してやるんだから」


 そう意気込み、緑色の帽子を被ったキャラクターを操作してサイコロを振った。出た目は三。緑色の帽子を被ったキャラが止まったマスは、ラッキーマスと言われるボーナスステージへと行けるマスだった。ボーナスステージでは、確実にスターをゲット出来るのだ。


「お! やった! ついにアタシにも運が回って来たのかな〜」


 ご機嫌な様子で鼻歌を歌いながら、桜瀬はコントローラーを置いた。


「次は俺の番だな」


 ようやく俺のターンが回ってきた。俺は緑色で二足歩行をしている恐竜を操作してサイコロを振る。出た目は五。止まったマスは、はてなマークが描かれたマスだった。


「これ、何が起こるか分からないやつだよな?」


「そうだと思う。さっき瑠愛がスターを貰ってたマスだよね」


「そうだな。これは期待出来るかも」


 俺もようやく推川ちゃんに追いつくのか。そう思い期待で胸を膨らませていると、またも甲羅を背負った怪獣が現れた。そいつは俺の操作するキャラクターに、『誰かにスターを渡せ』と命令を出した。すると画面には、緑色の恐竜以外のキャラクターが映し出された。どうやら本当に、俺は誰かにスターをあげなければならないらしい。


「湊! アタシにスターちょうだい! 最下位だからいいでしょ!」


「湊、私にスターちょうだい。さっき取られたから」


「湊くん! わたしだよわたし! あとでスターあげれるってなったら湊くんにあげるから!」


「佐野くーん、あとで飲み物買ってあげるよー」


 四人からスターを迫られる。

 俺としては柊にスターをあげたいが、それでは人を選んでいることがバレる。それでは自然と選択肢はひとつしかないのかもしれない。

 俺はコントローラーを操作して、緑色の帽子を被っていたキャラクターを選ぶ。スターをあげる相手は、最下位の桜瀬に決めた。


「え、やったー! ありがとう湊! 絶対あとでお返しするから」


「おう」


 こうして俺は最下位に成り下がり、桜瀬が柊とひな先輩と同じ順位に立った。

 桜瀬以外の三人からはブーイングが寄せられたが、一番泣きたいのは俺だ。

 このままゲームは後半戦に突入して、巻き返せるはずもなくゲームセットとなった。優勝したのは推川ちゃんで、二位が桜瀬、三位が柊、四位がひな先輩、最下位が俺だった。

 この順位に納得しない俺とひな先輩の熱い要望により、第二回戦が幕を開けるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言]  アレですね、フォーブスに総資産10億はあるとゲーム界で最も裕福なちょび髭の兄貴のゲームですね。  感謝されても文句を言われても羨ましさしか残らない作品をありがとうございますm(_ _)m…
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