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【完結】魔王様、溺愛しすぎです!  作者: 綾雅「私だけが知らない2巻」9/25発売
序章 魔王様、ただいま育児奮闘中!
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01. 散歩すら自由に出来ないのか 

 魔の森と呼ばれる樹海を背に、銀龍石で作られた古城が建っている。森が護るように包む城は、『魔王城』と呼ばれていた。人族が住む地から離れた魔王領の奥深く、朝日が昇る気持ちよい朝を引き裂く無粋な声が響き渡った。


「死ね! 魔王!!」


 魔術師が最高の炎を練り上げて叩きつける。巨大な炎の塊が飛来し、魔王城の前に立つ黒衣の青年に襲い掛かった。純白の髪とシミひとつない肌に銀の瞳が輝く美貌の青年は、物憂げに左手を振る。


「散歩に出ただけで、オレは攻撃されるのか」


 溜め息を吐いた青年の数メートル上で、魔法により生み出された炎は消えた。散るのではなく、まるで存在しなかったように忽然(こつぜん)と消えたのだ。圧倒的な魔力差で、魔法を打ち消した魔王は大きな溜め息を吐いた。


「非礼にも程がある」


 ぼやきながら、「ばかなっ」と定番の言葉を吐く魔術師を指差す。その瞬間、魔術師も消えた。城へ向かい丘になっている草原を、朝日が照らし出す。


 遥かかなたへ転送した人族の悲鳴も届かない。無事に森の中で着地できたか、確認してやる必要も感じなかった。礼を欠いた輩に配慮など無用だ。


「……爽やかな朝の空気が台無しだ」


 ここ数十年の日課である朝の散歩を切り上げる。むすっとした態度で吐き捨て、ローブを翻したところで、彼は足を止めた。斜め後ろの何もない空間へ声をかける。


「アスタロト、いたなら顔を出せ」


「失礼しました。でも邪魔をしたら怒られますからね」


 あなた様の邪魔をする気はなかったのですよ。そう告げる青年は消えた魔術師と対照的に、何もない空間から浮かび上がる。半透明の姿が色を濃くして、足元に影が出来た。


「残りは任せる」


「かしこまりました」


 一礼したアスタロトが残忍な笑みを浮かべた。波打つ金の髪を風に(なび)かせ、アスタロトは空中を右手で握りこむ。その手の中に現れた(つか)から剣が生えていく。魔力によって生成された刃が、虹色の光を放った。


「ルシファー様のお言葉に従い、侵入者を排除しますか」


「ああそうだ。アスタロト、そこらに死体を残すなよ」


「承知しております」


 魔王という名称から人族が想像する魔王城とは、殺された人々の髑髏(どくろ)や骨が転がる石造りの殺伐(さつばつ)とした城だろう。だが目の前にある城は、確かに石造りが基本だが人族の城とほとんど変わらない。古城に分類される長い年月の証として、(つた)(こけ)に覆われている程度だった。


 城の北側にある大きな森に溶け込んで、風景としては森の古城だ。おどろおどろしい感じは微塵(みじん)もなかった。古いながらも手入れの行き届いた城へ向かって歩き出す。純白の髪が光を弾いて銀色に光っていた。

いつもお読みいただき、ありがとうございます(o´-ω-)o)ペコッ

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☆・゜:*(人´ω`*)。。☆

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