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【完結】魔王様、溺愛しすぎです!  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
18章 魔王城改築の意外な効果

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240. 魔王城の城門への攻撃

 魔王城の改築を兼ねた復興事業は、地方の経済活動を活発化させるのに一役買っているらしい。それらの利点を考えると、定期的な公共事業を行うのも執政者の役目だろう。


 竜の街を出て、暮れ始めた空を飛びながら眼下の光景に目を細めた。民の暮らしが上向いたのは、よい傾向だ。


 予定通り街での買い食いはしたし、リリスに群がる羽虫のような小ドラゴンの駆除も終えた。リリスがくれた小さな花束は、きっちり隔離して封印の中で保管している。サタナキア公爵令嬢イポスを愛娘の専属騎士として得た、という副産物もあった。


 今回の視察で得た様々な成果に満足したルシファーは、腕の中ですやすや眠るリリスを見つめる。空の旅は冷えるので、しっかり包んだリリスは毛布に埋もれていた。可愛い寝顔に癒される。


 こうしていると、赤子の頃を思い出す。世話の仕方ひとつ知らなかったルシファーが、ここまで育てるとは誰も想像出来なかっただろう。


「陛下、報告があります」


 影から生まれるように、暗闇から現れたアスタロトが声をかける。彼が陛下と呼称するのは、仕事で魔王であるルシファーを必要とする場合のみだ。普段はルシファー様と呼ぶのだから。


「急ぎか?」


「はい」


 長い付き合いだ。この声と表情で状況を察した。何か魔王としての判断を仰ぐような事態が起きている。


「……戻るぞ」


 空中に転移魔法陣を描いた。もう少し視察を楽しめると思っていたが、トラブルなら仕方ない。先に闇に溶け込んだ側近を追う形で、魔王城の中庭に転移した。








 雲母の入った銀龍石が転がる中庭に、ベール達大公が揃っている。転移したルシファーへ一斉に礼をとった。


「何があった?」


「城の門が攻撃され、鳳凰のヒナが拐われました」


「ピヨが?」


 刷り込み現象(インプリティング)でヤンを親だと思い込んだ青い鳳凰の子だ。確かに最近見かけなかったが、燃えて再生した後はヤンを追いかける頻度も減ったと聞いていた。ヤンの仕事場である城門に住み着いたはずだが。


「犯人はわかっているのか」


「鳳凰です」


 意味を捉えかねて、内容を反芻(はんすう)する。鳳凰のヒナが鳳凰に連れ去られた?  それは誘拐なのか。


「なんだ、親が迎えに来たのか」


 良かったと言いかけたところで、ベールが遮った。青い瞳がいつになく鋭い。


「親の迎えではなく誘拐です。ピヨは襲われ必死に抵抗しましたが、連れ去られました。報告では、大きな傷を負っています。鳳凰の攻撃を受けたヤンも重傷でした」


「ヤンが……」


 城門にいるヤンが応戦したのは当然だった。魔王城の入り口で魔族が暴れたのだから、咄嗟に応戦する。ましてや懐いていたヒナを攻撃されれば、役目を抜きにしても戦うだろう。


 しかし灰色魔狼(フェンリル)が戦う相手として、空を飛ぶ種族は相性が悪い。頭上から一方的に攻撃できる鳳凰に、彼は不利な防戦を強いられたはずだ。


「ヤンの傷は?」


 ルシファーの問いかけに、アスタロトは落ち着いた声で応じた。


「治癒が間に合いました。あと少し遅れていたら手遅れになるところでした。暴れるので、今は隔離し拘束しています」


 ヒナの親代わりを務めるヤンは、誘拐されたピヨを助けに行こうと暴れたのだ。治癒をしても失われた血と魔力はしばらく回復しない。アスタロトによる影を縛る拘束で、ヤンは動けなくされていた。


「あたくしが気づいて駆けつけたときには、遅かったの」


 申し訳なさそうに、ベルゼビュートが唇を噛む。ベールの隣に立つルキフェルが、呟いた。


「僕も感知出来なかったんだ」


 それぞれに己を責める配下に、ルシファーは溜め息をついた。腕の中のリリスが眠っていることに感謝する。こんな話は聞かせたくない。


「ぐずぐず悩んでる暇があるなら、ピヨと鳳凰を探せ! これは最優先だ」


 命令として告げることで、大公達を自由にしてやる。


「「「「はっ」」」」


 武器を手に飛び出すベルゼビュート、ルキフェルは城門へ走った。残された痕跡から情報を集めるのは、分析の得意なルキフェルの仕事だ。ベールは魔物狩りに出た軍の一部を情報収集に使うため、執務室へ戻った。


 残ったアスタロトの案内で、ルシファーは城門へ向かう。転移したため通過しなかった門は焼け焦げ、周囲も炎が燻っていた。


 煙と焼け焦げた臭いが漂う城門前に、小山のような毛皮が蹲る。その背中は大きく焼けただれ、尻尾の先も焦げていた。


「ヤン」


 声をかけると、影を縛られたフェンリルはびくりと震えた。

いつもお読みいただき、ありがとうございます(o´-ω-)o)ペコッ

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☆・゜:*(人´ω`*)。。☆

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