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【完結】魔王様、溺愛しすぎです!  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
15章 卒園式も大騒ぎ!?

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180. 卒園式のラストは薔薇のシャワーで

「……疲れたぁ」


 ぼやく声と同時に、鶏サイズの青い鳥が炎の中から出る。尾羽がまだ短いが、もう少し成長したら孔雀程度になりそうだった。色鮮やかな5色の尾羽をふりふりしながら歩いてくる。


「ピヨ?」


 指差しながら首をかしげるリリスと同様、ルシファーも首をかしげた。


「たぶん」


「おそらく、ピヨでしょうね」


 アスタロトも不確定な言い方をする。再生した鳳凰は成長すると聞いたが、それが大きさなのか、中身を示した表現かもわからない。ただ、疲れた発言がピヨだとすると……中も外も成長したようだった。


「あ、ママだ!」


 ヤンを見るなり全力で駆けて来る姿から、間違いなくピヨの再生後だ。炎の中から飛び出したピヨに焦げた部分はなく、逆に羽毛は艶があって健康状態は良好そのものだった。


「ピヨは話せるようになったね」


 リリスがはしゃいで身体を揺する。手を伸ばそうとする娘を抑えながら、ルシファーは目で合図した。溜め息をついたアスタロトが手を伸ばし、ヤンの前で踊るピヨを回収する。ひょいっと摘まれたピヨはきょとんとしていた。


「熱くない?」


「ええ、平気ですよ」


 アスタロトの答えを待って、ようやくルシファーがリリスを近づけた。手を触れて、首のあたりから尾羽の手前まで丁寧に撫でるリリスの動きに、ピヨはうっとり目を細める。攻撃的でもないし、今までどおり飼っても大丈夫そうだ。


「燃えてもピヨはピヨだもん」


「そうだな、ヤンの後ろを歩くピヨは可愛いから人気があるし」


 観客席の一部を燃やしたが、劇の終演後だったので大した問題ではない。ピヨが大人しく抱っこされているため、リリスは嬉しそうに頬を寄せて羽毛を堪能し始めた。足元でヤンの目が羨ましそうだが、彼はあとでゆっくり撫でればいいだろう。


「中庭に移動するか」


「私は完全に火が消えたのを確認してから追います」


「任せた」


 魔法陣を描いて、ヤンもピヨも忘れずに回収する。転移した中庭は……大騒ぎだった。


「ああ! リリスちゃん、無事でよかった」


「リリスちゃん!!」


「ケガしていない?」


 取り乱して泣くミュルミュール園長を筆頭に、ガミジン先生や友人達も駆け寄ってきた。あっという間に取り囲まれたリリスは、涙を流して無事を喜ぶ人達に感化されて涙ぐんでいる。


「うん、平気よ。ありがとう」


 涙で頬を濡らしたまま笑うリリスに、ルシファーが眉尻を下げる。本来はこういう感動的な卒園式になるはずだったのに、最後がピヨのボヤ騒ぎでいまいち締まらなかった。


「パパ、降りる」


「ああ」


 降りると女友達と手を繋いで喜び、次に先生に挨拶をする。今までより大人びて見えるリリスの成長を目にして、ルシファーはほっと肩から力を抜いた。追いついたアスタロトが目立たぬよう近づき、声をかける。


「もう問題はありません」


「ご苦労さん」


 労うルシファーが見回す先は、あちこちで次の約束をしている子供達の姿が見られた。もちろん、その中にはリリスと女友達も含まれる。


 貴族の子供は、15歳前後まで学校での集団生活の経験がなかった。そのため高等院と呼ばれる学校へ通うまで、家庭教師を招いて自宅で勉強を行う。親同士が親密ならば、幼馴染が一緒に勉強することもあるが、同族が中心となる珍しい事例だった。


 卒園する子供達が次に同じように集うのは、高等院へ入学するときだ。


「なんだか可哀想だな」


「ええ。今までは気にしませんでしたが」


 複雑な感情を乗せた響きに、主従は顔を見合わせた。小さな子供を集めた学校を作る手もあるが、現実的ではない。人族のように統一された種族ならばいいが、魔族は種族が多すぎた。特徴も違うし勉強すべき内容も異なる。


 同じ学校に閉じ込めて、画一的な教育をしても役に立たないのだ。こればかりは政で何とかなる話ではなかった。


「ですが以前と違い、子供同士が友人になっています。きっと休みを使って、互いに顔を合わせるのではないですか?」


 今までの貴族は種族ごとに縦割りだったが、こうして幼児期を一緒に過ごすことで絆が生まれた。横のつながりは今後の魔族のあり方を左右するだろう。


「パパ、難しいお話してる?」


「大丈夫だ。どうした? お友達に挨拶は済んだのか」


 足元に駆け寄ってきたリリスが無邪気に首をかしげる。まだ女勇者の衣装のままで、結い上げた黒髪が背で大きく揺れた。その頭を撫でてやると、猫のように目を細めて笑う。


「いいの! だってルーシアもアリッサもサリーも、みんなお泊りに来れる約束してくれたもん」


 だから今はパパにくっついていたいと腕を回して、ルシファーの足に抱き着いた。


 手を繋いで仲良く歩き、感激しすぎて顔が真っ赤になったミュルミュール先生や、担任だった大泣き中のガミジン先生に挨拶をする。お友達に手を振って、卒園式は魔王城の中庭で解散となった。


「卒園式だもん、このくらいいいよね」


 そう笑ったルキフェルが、薔薇の花びらを空に舞い上げて散らす。赤、黄、白、青……様々な色が混じった花びらが舞う美しい光景に、誰もが拍手で笑顔を浮かべた。

いつもお読みいただき、ありがとうございます(o´-ω-)o)ペコッ

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