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【完結】魔王様、溺愛しすぎです!  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
序章 魔王様、ただいま育児奮闘中!
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13. 魔王陛下の一大事

 夜泣きも一段落し、最近は大人しく寝てくれるようになった。数年は寝なくていい魔族の特性に感謝しながら、ルシファーは腕の中のリリスを揺らす。


 おしゃぶりが動くので、まだ寝ていないのだろう。だが瞼はおりていて、あと少しで眠ってくれそうだった。寝かしつけに失敗したせいで、2時間はこうして抱いている。彼女が大きくなって一人で眠れるまで、ルシファーと睡眠の関係は断絶状態になりそうだった。


「リリスのためならいいんだけどね」


 寝ることに執着しない魔王だが、前代勇者を倒したあとに50年ほど寝ていたことがある。まとめて寝溜めしたと本人は言い放ったが、その間の事務処理を担当したアスタロト達は大変だった。


 魔王本人の決済なら1つで済む署名が、四大大公だと3人以上の連名でようやく効力を発揮する。アスタロト一人では対処しきれず、ベールとルキフェルを巻き込んで壮大な書類整理に追われた。ぐっすり50年寝て起きた魔王へ、青ざめた顔色のアスタロトが詰め寄ったのは当然だった。


「リリスは可愛いなぁ」


 ひそめた声で告げると、すこしだけ目が開く。赤い色が覗くけれど、すぐに閉じられてしまった。反応してくれたリリスが愛しくて、瞼に触れるだけのキスを落とす。


「人族の寿命は短いらしいけど、何とでもなるさ」


 アスタロトが聞いたら頭を抱えるような発言をさらりともらし、魔王ルシファーはだらしなく美貌を緩めた。身体ごと揺すりながら、リリスを寝かしつける。


 魔王の執務室は質のいい机と椅子、膨大な知識を支える壁一面の本棚があった。重厚な作りの家具に交じり、最近は白い木製ベビーベッドと、月や星を飾ったベビーメリーが吊るされている。部屋の雰囲気は台無しだった。


 だが部屋の主は満足しているため、アスタロト含め誰も文句を言えない。


「魔王様! 大変です!!」


 ばたんと大きな音を立てて開いたドアに、魔王の周辺がぴきんと凍りついた。それは空気などという目に見えない存在ではなく、物理的に足元が凍っている。


「ふ…おぎゃああああああ」


 折角眠れそうだったのに起こされたリリスの癇癪(かんしゃく)じみた泣き声に、魔王はその称号に相応しい恐怖の表情で振り返る。しかし腕の中の赤子を揺すって宥めることは忘れない。アンバランスな視覚的情報に、飛び込んだ魔族は言葉を失った。


 どうしよう、怖いんだけど……ほのぼの映像にしかならない。


「リリスが起きちゃっただろ! もっと静かに来い。そもそも、リリスの寝起き以上の大事件はない」


 言い切った魔王は、後ろから飛び込んだ側近のセリフに眉を寄せた。


「何を馬鹿なことを……陛下、勇者らしき人族がきました」


「そ、そうです! 勇者がっ!!」


 攻め込んできたと騒ぐ兵と、訪ねてきたと気楽に言い放つ側近。対照的な2人だが、報告内容は同じだった。ただ感じ方が違うだけだ。


 どうせ魔王に一蹴されると決め付けるアスタロトは、眉をひそめたルシファーへ手を差し出す。


「なんだ、この手は?」


「リリス嬢を預ります」


「預けるわけないだろ」


「「は?」」


 報告に飛び込んだ兵とアスタロトの声がハモった。


「勇者か、仕方ない。すぐに片付けて帰ってもらおう」


 友人に「用があるからまた今度」と話しに行くような態度で、ルシファーは黒いローブの裾を揺らして歩き出す。その左腕にぐずるリリスを抱いたまま。

いつもお読みいただき、ありがとうございます(o´-ω-)o)ペコッ

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