004.猫ちゃんとして登録!『コミック1巻発売記念SS』
エルフ達がすでに「猫ちゃん」と呼称しているため、種族名は猫族で確定した。子を生せることも判明し、ケットシーと意思疎通可能な魔力持ち。魔獣ではなく魔族として正式に認められる。
ルシファーの宣言を持って、猫達は魔の森の住人となった。二つに割れた尻尾を揺らしながら歩く母猫の後ろを、白、黒、灰色の縞模様、茶色の縞模様が歩いていく。見事に色がばらばらだが、個体の区別がつきやすいと好評だった。
「個体名はいいよね」
「色だけで判別がつくでしょう」
魔王史編纂の情報を記録するルキフェルが首を傾げる。水色の髪がさらりと流れた。その毛先を指で摘まみながら、ベールが同意する。
「長くなりましたね、切りますか?」
「うーん。どうしようかな。研究の時は後ろで結んでるんだよね」
迷うルキフェルの視線が、執務室にいる面々へ向けられる。ルシファーは膝裏まで長く、アスタロトも首筋を覆う。ベルゼビュートやベールは腰近くまで長かった。魔力量と髪の長さに因果関係はないが、魔力の強大な者ほど長い傾向があった。
ルシファーはただ面倒くさいだけだし、大公達は正装用に伸ばした経緯がある。一番年若いが一万五千歳の瑠璃竜王ルキフェルは、取り出した紐をベールに渡した。
「結んで」
「わかりました」
まだ切らないらしい。文句を言わず世話を焼くベールは、手慣れた様子でルキフェルの水色の髪を一纏めにした。
「相変わらず甘やかすなぁ」
ルシファーがにやにやと指摘すると、ベールが冷たい声で切り返した。
「あなた様よりマシでは?」
言葉通り、ルシファーの膝の上のリリスは凝った髪形をしている。耳の上で左右に三つ編みを作り、それを輪になるよう丸めてリボンで固定した。手間のかかる髪形が気に入ったリリスは、両手でお菓子を頬張っていた。
「やぁよ!」
あげない! お菓子を隠す仕草をするリリスに、ルシファーが眉尻を下げる。食い意地が張っているというか、最近誰かと分け合うことを嫌がるのだ。保育園ではお友達と仲良くしているが、城に帰ってくるとこんな感じだった。
「オレにもか?」
「ん……」
握りしめて原形のないお菓子を差し出す。リリスの左手から直接食べるルシファーの姿に「本当に感心します」とベールが顔を引きつらせた。真似できないとばかり貶すが、ルキフェルが同じことをしたら……案外、素直に食べそうである。
「書類を汚さないでください」
アスタロトは嫌そうな顔で指摘する。執務室は基本的に魔法禁止だ。改ざん防止のために書類の署名用インクは、魔力で消えてしまう。すでに署名済みの書類を回収しながら、アスタロトの視線が予算計画書に向けられた。
ルシファーが手で払うが、バターのシミが出来ていた。落とすために魔法を使えば、半日かけた仕事の成果が消える。唸ったあと、丁寧にハンカチで染み抜きを始めた。リリスは気にした様子なく、首にかけたスタイのお菓子を握り潰して口に入れる。
まあ、と手を口に当てたベルゼビュートが大袈裟に目を丸くする。
「リリスちゃんったら、お姫様なのにお行儀悪いのね。憧れのお姫様には程遠いわ」
皆が憧れるお姫様のフレーズに、リリスの手が止まった。握る前のお菓子を、そっと足元へ差し出す。小型化して寝転がっていたフェンリルのヤンがぺろりと舐めた。手に付いたお菓子のカスを綺麗に舐めてもらい、リリスはにこりと笑う。
「きれぇ、きれぇ」
得意げに手を広げて見せた。いろいろ言いたい言葉を吞み込んだベルゼビュートが「綺麗ね」と褒める。嬉しくなったリリスは、その手でお菓子を掴んだ。
「あい!」
差し出されたベルゼビュートが受け取ると、食べるよう促す。うっかり指摘したばかりに、フェンリルの唾液まみれの指で掴んだお菓子を……食べる振りで消した。ベルゼビュートのズルで漏れた魔力がもたらした被害は……甚大で。その日の夜は、執務室の明かりが消えることはなかったとか。
ようやく書類を処理し終えたところへ、猫達の生活状況が報告された。エルフの膝に乗って喉をゴロゴロ鳴らし、その音で意思表示を始めている。小動物や小鳥を捕まえるが食べない。日向があると寝転がり、何もしない……。好き勝手しているようだが、エルフ達はそれも受け入れて可愛がっているらしい。
「ちょっと羨ましい」
ぼやいたルシファーに、疲れた顔の大公達が無言で頷いた。
終
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お付き合いありがとうございました(o_ _)o))
4/10にコミック1巻が発売されます。是非ともご予約いただき、または店頭で手に取ってくださいますようお願いいたします_( _*´ ꒳ `*)_




