表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】魔王様、溺愛しすぎです!  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
9章 遠足ってこんなんだっけ?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

110/1398

108. 称号が姫になりました

 ご機嫌でお風呂の薔薇を千切って遊ぶリリスを抱いて、湯船に浸かる。最初の頃は女の子だからと侍女のアデーレに頼んでいた入浴だが、リリスが保育園に通うようになって一緒に入り出した。なんでも友達のアリッサ嬢が「パパと一緒に入ってる」と自慢げにのたまったらしい。


 突然「パパと入る」とリリスが言い出したときは、アリッサ嬢に何か褒美を与えようと真剣に考えたほど嬉しかった。なぜか青い顔のアスタロトに必死で止められたが……権威がどうとか。アイツの考えることはよくわからない。


 ピンク色の花弁が散らばる湯は、ほんのりと良い香りがした。膝の上でばしゃばしゃと湯を揺らすリリスは、お気に入りのひよこを沈めて遊んでいる。


 以前に聞いたら、湯船の底から飛び出すのが楽しいらしい。子供の感覚はよくわからないが、リリスが言うのなら楽しいのだろう。5回ほど沈めたひよこを受けとめたリリスが振り返った。


「パパ、おなかすいた」


「そろそろ出るか」


 ひよこを放り出すリリスへ「ちゃんとお片づけして」と声をかける。愛らしい返事をして、湯船の脇にある籠へ玩具のひよこを入れた。両手を出して待っているリリスを魔法で乾かして、タオルに包む。手早く自分も乾かして服を纏うと、タオル姿の幼女を抱き上げた。


 やっと腕の痛みに慣れてきて、落とす心配がなくなった。痛みが消えたわけではないが、慣れれば力の入れ方や痛む角度がわかる。今までのように抱き上げるルシファーに、リリスは首に手を回した。


「パパのお手手、少しお月様色になってきた」


「そうか。リリスが言うなら間違いないな」


 何度も撫でるリリスの手は心地よく、痛みが和らぐ気がする。気の所為だと思っていたが、ベールに指摘されて気付いた。ペンを持ってもさほど痛くないのだ。魔力の流れが徐々に整えられ、先日の謁見では翼を広げても平気だった。


 リリス自身は理解していないが、何らかの治癒系の能力を持っている可能性が高い。無意識に使っているのだろう。撫でる仕草に目をこらしたが、ルシファーにもよく分からない。こういった分析が得意なルキフェルに近々頼んでみよう。


「リリスのお陰だ。さすがパパのお嫁さん」


 最近のリリスは「娘」という単語より、「お嫁さん」や「お姫様」という呼ばれ方を好む。にこにこ笑う幼女と頬をくっつけ合って、額をごつんこする。彼女のお気に入りのルーティーンを終えると、薔薇と同じピンクのワンピースを着せた。


「リリス、お姫様?」


「ああ、パパの大事な大事なお姫様だ」


 事実、王妃候補は姫と呼ばれるらしい。知らない間に称号が決まっていた。確かに妙齢の貴族女性を候補として預ったなら、姫と呼ばれる可能性が高かったので、なるほどと頷いて受け入れる。大公らは今までどおり『リリス嬢』と呼んでいるが、公式の場では『リリス姫』が正式な呼び名だ。


「今日はアスタロトやヤンと外で食べようか」


「やった!」


 大喜びするリリスが先に走り出した。小型になったヤンが付き従うため、転んだ際は彼が下敷きになって守ってくれるだろう。微笑ましく見守ってついていくと、途中で立ち止まったリリスが振り返った。思わず同じように立ち止まったルシファーへ駆け戻り、右手を差し出す。


「お手手つなぐの!」


「じゃあ、パパを連れて行ってくれるか?」


 お願いされることが嬉しい幼子の気持ちを汲んで、役目を与える。満面の笑みで頷いたリリスが指先を掴んで、先導するように歩き出した。速度を合わせて歩きながら、黒髪の旋毛を見つめる。今日は梳かしただけで結ばなかったのだが、一部の毛先がくるんと外を向いていた。


 気になって指で触れると、リリスが振り返る。


「パパ、悪戯はめっ!」


「ごめん、リリスに触りたかったんだ」


「それならいいの」


 何がいいのかわからないが、リリスが好きな答えを返す。まあ偽りない本心なので構わないが、アスタロトがいれば大きな溜め息を吐かれただろう。

いつもお読みいただき、ありがとうございます(o´-ω-)o)ペコッ

感想やコメント、評価をいただけると飛び上がって喜びます!

☆・゜:*(人´ω`*)。。☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ