『りゅうくん』
20161114
一部のみ加筆
りゅうくんはほんとうはたつやくん、というな前です。
でも、じこしょうかいの時に、「おれのたつはりゅうのたつだからりゅうってよんでください!」と言っていたので、みんなりゅうくんとよんでいます。
わたしは、そのじこしょうかいを見ながらばかなひとだなぁ、っておもっていたけど、そのわらったかおからふしぎと目がはなせませんでした。
たぶん、ひとめぼれだったんだとおもいます。
私はじぶんの恋を感じてからがんばりました。
りゅうくんが好きなサッカーのルールを学ん、走るのもたくさんしました。
りゅうくんが好きな給食の時にとうばんだった時には、少しだけたくさん入れてあげました。
そうするとりゅうくんが私の名前をよんで、ありがとな!って!
その時の気持ちと言ったらもう、このまましんでもいいとおもいました!
りゅうくん!りゅうくんが私の名前をよんだのです!
でも、しんだらりゅうくんにあえないのでしなないことにしました。
そういう風に私はゆっくりと、ゆっくりとりゅうくんにきにいられるようにがんばりました。
そうすると今まで見えてなかったことが見えてきます。りゅうくんは、とても女の子に好かれるのです。
でも、私がいちばんでした。
いちばんちかくに私が!いました。
お昼やすみも、ほうかごも、土ようびも日ようびも。
私はりゅうくんといっしょにいることがおおかったです。
けれど、まんぞくはしていませんでした。
だって私は、りゅうくんのお嫁さんになりたかったからです。
それが私にとっての一番だったからです。
でも。でも。夏休みのあと、9月に入ると、あの女が来ました。
すっかりそのころには日焼けした、私とはちがう、白いはだで、かみが長くて、おしとやかな女が、てんこうしてきた。
――やさしいりゅうくんは先生にたのまれて私といっしょに女のこを見るようになりました。
そうするとりゅうくんは近くにいた私じゃなくて、女をきにするようになりました。
どうして?私がずっとそばにいたのに。
どうして?私にそんなかおを赤くしなかったのに。
りゅうくんは、あの女を、好きになってしまったのです。
それは、がまんできないことでした。
でも、そのころになると、私も女の子とは友だちとみられるようになっていました。
りゅうくんのことさえなければ、私はかのじょのことを好きでした。
でも、りゅうくんに、好きな男の子に好かれる女の子とどうして友だちになれるんでしょう。
ある日のかえりに。私は、女の子に「友だちになろう」と言われて、その手をたたきました。
りゅうくんは、それを見て、とてもきずついたかおをしました。
その時、私の頭がひらめいたのです。
りゅうくんをすきにさせるのではなく、りゅうくんをほねぬきにすればいいんだ、と!りゅうくんのめのまんなかにわたしだけを写すようにすればいいんだ、と!
どうしてこんなかんたんなことを思いつかなかったんでしょう!
りゅうくんさえ手に入るなら、それいがいはそれほどだいじではありません。
りゅうくん。りゅうくん。
わたしは、きずついたかおをしたりゅうくんにこえをかけました。
なんだよ。すねたこえ。
わたしは、その口に、キスをしました。
りゅうくん。大好き!
りゅうくんは、かおを赤くして私を、私だけを見ます!
もう、女の子が好きなことなんてわすれたように、私をみています!
それはなんて!
『――りゅうくん? なにをみてるの?』
妻の声が、耳元でした。