Spice with armoredgirl
順不同です
20150424
香辛料の用途は多岐に及ぶ。それは香水であったり、肌にすりこむ乳液に浮かべるなどの美容に関してはもちろん、食料の保存や面白い所では恋の薬に使われたりもする。
香辛料は軍需物資であり、嗜好品であり、薬効物資であり、富の結晶体であった。
胡椒一粒は同じ大きさの砂金に匹敵し、さらさらの香辛料は夏空に写る天銀の河の如し。たっぷりの瓶に詰まった香料も忘れてはならない。これは倍の金塊へと売りようによっては変化するのだ。
右天秤に落ちる香辛料と左天秤に落ちる硬貨のエンブレムはスパイス取扱い認可の証。それを誇示する様に幌へと縫い付けた馬車は護衛も無く順調に次の市街へと――
「疑問。これは何? 」
「あん? そらお前……って何エプロシカの瓶開けてやがんだよこの野郎! 」
順調には進んでいないようだ。怒鳴っているのは手綱を握っている商人らしき男。その頭には冠の如く黒く長い三角の耳が戴かれており、一目で人ならぬとわかるほどであった。
「反駁。私は女性形であり、野郎は不適切。訂正を要求する」
むっとした無表情で反論するのは男の黒い耳とは対照的な淡雪の如く光をすり抜ける肌をした少女。
「良いからその瓶のコルクをさっさと詰めろって!あああもったいねえ……! 」
「疑問。 ――訂正は?」
「申し訳ありませんでしたお姫様! さっさとコルクを戻してくれやがりませ! 」
「肯定。」
ぱん、と勢いよく戻されたコルクの勢いは余すところなく瓶に伝わり、罅となってぱりんと大本を砕け散らせた。中身事。
「ああああああああ!!! 」
黒毛の尻尾をぴんと立たせた商人は絶叫しながら手綱を固定し、少女の胸ぐらをつかんでぶんぶんと振り回そうとして重そうな荷物を持ったようによろめいた。即座に足を踏み抜き憮然とした雰囲気で少女は蹲る男を見下して、一言。
「――失礼。」
「いきなり足踏み抜く機巧人間も大概だと思うんだがな……! 」
『Spice with armoredgirl』