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この世界は好きですか?  作者: ふう♪
第1章神様の手違い
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第7話 中途半端な属性魔法


 その後、俺とユーフィはクエストを受けてミール平野へと来ていた。遠くの丘の上に1本の木があるのが見える。どうやら最初に来たとこと同じ場所のようだ。


 討伐対象はチュロリア7体。なんでもこいつは比較的簡単で沢山狩れる割になかなかの美味だそうでよく料理に使われるらしい。


「んじゃ早速試してみてよ。見ててあげるから」


「お、おう」


 とりあえず少し離れた先にチュロリアが3体いる。こいつらに放つか。


 あれ? でも魔法ってどうやって放つんだ?

 うーん……しまったな。神様にその辺教え……いや、駄目だな。頼りすぎたらまた怒られる。人に聞く。いや、この状況じゃ無理だろ!

 とりあえずラノベみたいにやってみるか。


 右手を前に出し、チュロリアに向ける。


 とりあえず何かそれっぽいの唱えるか。


「赤き炎よ、きたれ」


 シーン。何も起きない。だが、しばらくすると……



 ……シュボ。まるでマッチの火、いやそれより小さい炎がゆらゆらと放出された。けどしょぼい。何が。威力も見た目も全て。今にも消えそうなんだが……諦めて次の属性魔法を使う。


「麗しき水よ、きたれ」


 シーン。何も起きない。しかし、しばらくすると……


 チョロロ……

 レモンの絞り汁程度の水が溢れ出てきた。


「大いなる風よ、きたれ」


 最初は何も起きない。だがしばらくするとーー、



ヒューー……


 ようやく埃を吹き飛ばせるほどの風が吹く。


「大地よ、きたれ」


 しばらくして石ころが手のひらに出現する。これ、自分で言うのもなんだけど何がしたかったんだ?


「せ、聖なる光よ、きたれ」


 パッ。一瞬だけ手のひらが光った。……気がする。電池切れのライトかよ!


「し、しんえんなるやみよ……」

「……もういいわ」


 顔を上げると目の前にはため息をつくユーフィ。

 その感想は……



「……どれも中途半端ね。むしろそれ以下かも」


 ですよねー。


 どうやら俺はラノベのように全属性の魔法がフルに使える最強主人公にはなれなかったようだ……

 あの神様、俺に全属性の魔法が使えるようにしてくれたはず、なんだけどなぁ……

まさかあの神様、ドジった!?


 とはいえ、一応は使えるから文句は言えない……のか?


「……まぁただでさえ複数の属性魔法を使える人は少ないから中途半端でもそんなにたくさんの属性魔法を使えるあんたはすごいんだけどね」


 くそう。嫌味か!?

 ん? そういえばこいつは属性魔法使えるのか?


 そう思っているとユーフィはチュロリアの方を向いた。


「あたしの適正は火と光の2つよ。今から火属性の魔法を見せてあげるわ」


 そう言うと彼女は右手をチュロリアへ向けた。


「炎を纏いし槍よ、敵を貫け炎弓矢ファイヤアロー


 すると、ユーフィの右手から槍のようなものが生成された。次の瞬間、その槍は炎を纏い、チュロリアへ放たれた。


「っ!? チイィーーーー!」


 それを見た3体のうち2体はそれぞれ左右へ逃げた。だが、真ん中の1体はどうしていいかわからず、その槍を腹に受けた。

 途端、その槍を中心にチュロリアの身体が燃え上がる。

 やがて、チュロリアは黒焦げになり、その場に倒れた。


「どう? 少なくともあんたよりはしっかりとした火属性の魔法よ?」


 ぐぬぬぬぬ。


 その後、ユーフィは鉄鉤爪(どうやら武闘家モンクのスタイルで戦うのが得意らしい)と火属性の魔法を、俺は召喚魔術でアーリーを呼び出し、残りのチュロリアを狩った。


「っ、はあぁぁ!」


 ユーフィが拳を突き出すたびに追加魔法攻撃として放たれる火属性の魔法。


 先に使用しておけば効果時間自身の近接攻撃と同時に自動的に放たれるため、なおかつ火属性はファイヤブレスやファイヤアローといった放つ系の技が多いため、武闘家と相性のいい属性なのかもしれない。ちなみに蹴りの場合は弧を描くように放たれる。


 飛びついたり噛み付いたりすることしか出来ないチュロリアはその追加魔法攻撃によってもはや物理攻撃を食らう前に倒されていた。

 俺はと言うと、アーリーを召喚して例のアーススパイクでチュロリアを狩った。


「ふぅ。これで7体ね」


 チュロリアの死骸を見てそう言うユーフィ。そういえば何気に本格的に戦ったのはこれが初めてだな。


 ミール平野から街までの距離はさほどなかったため、持ち帰るのにあまり苦労はしなかった。


 ギルドに行き、報告を終えるとクエストが完了した。


 その際、ギルドカードを差し出すと元の世界でいうバーコード読み取り機のような物でカードが読み取られた。すると、カードの下らへんに記載されている緑色のゲージのようなものが少し貯まった。


 不思議そうに見る俺に受付のお姉さんが話してくれた。


「それはクエストゲージと言って一定のゲージが貯まると次のランクにランクアップします。受けるクエストや難易度によってもらえるポイントも違いますし、ランクアップすると受けられるクエストの種類が増えます。ランクはその冒険者の名声のようなものです。それと、こちらはクエスト報酬の銅貨8枚になります」


 俺はそれを受け取り、ユーフィと4枚ずつ分けた。なるほど。クエストってこんな感じなんだな。ゲームでしかやったことなかったからか新鮮さが感じられる。


「今日はありがとうユーフィ。おかげで助かった」


 するとユーフィは気を良くしたのか、自慢げに胸をはった。今気づいたんだけど結構大きい。


「ふふん、あたしがいなかったら今頃あんたは苦労してたわね」


 ぎくっ。痛いところをついてくるな……事実だが。

 そうだ。


「そういえば属性魔法ってどうしたらユーフィみたいにちゃんと扱えるようになるんだ?」


 それを聞いた彼女は首を傾げた。


「うーん……あたしの場合適正があって小さい時からよく使ってたらいつの間にか簡単に扱えるようになってたわね」


 ようするに慣れか。はぁ、中途半端というかほとんど扱えない俺はこれから大変だな。


「よければ今度会った時は光属性の魔法を見せてあげるわ。それはそうとあんたの召喚したモンスター……あーりーだっけ? 凄かったわね。あんた、召喚の方に向いてるんじゃないの?」

「うーん、確かに……?」

 いや、あれは単にアーリーが凄いだけな気がする。

 モンスターにはそれぞれ属性があるらしいのだが多分アーリーは地属性だ。


 先ほどの地面の岩を触覚で掘り起こして空へ投げ飛ばすアースインパクトとか足元の地面を砕いて相手に岩を飛ばすアーススパイクとかとにかく地属性の技が多い。


 あんなに小さいのに凄いと思う。あれ、俺何もしてねえ……


「でも一つ問題があるわね。なんか見てて思ったんだけどあなた達意思疎通が測れてない気がする。あんたは何か必死にアーリーに言ってたけどアーリーはそれに解釈するのに時間かかってたし」


「確かに……」


「召喚魔術って、魔物との絆や信頼性が大事だって聞いたことあるし、その辺しっかりした方がいいわ」


「そうだな、そうするわ」


 その後日も暮れ、俺たちは解散する。


「って、ユーフィも同じ宿だったのか」

「みたいね。って、そもそもこの街には宿泊の建物が1つしかないんだから当然でしょ」


「てことはユーフィは別の町から来たのか?」

「ええそうよ。バルへイム王国の南にあるフロンティスっていう街から来たの」


 何か決意を持った表情でユーフィは話す。


「あたしの両親は小さい頃に亡くなってね。おじいちゃんとおばあちゃんに育ててもらったの。……いつか凄い冒険者になって2人に恩返しをすることがあたしの目標かな」


 そう言い照れるユーフィ。

「すごいなユーフィは」

 対して俺は……


「いやいや、そんなことないわよ! 和樹だって何か……」

「いや、俺はないさ。なんとなく旅をしてるって感じだ」

「そっか……」


 まぁ当然だな。少しでも元の世界に帰れる可能性があったらそっちを目標に頑張ってたんだろうけどあの時言われたしなぁ……


 もう元の世界には戻れないって。


 ……寂しいな。時間が経てば経つほど、そしてこの世界を見ればみるほどここが夢ではなく異世界だと実感してしまう。


 そんな俺の表情が暗く見えたのか、ユーフィは慌てて言った。

「だ、大丈夫だって! 和樹にもそのうち目標が見つかる! あたしが保証するよ!」

 心の底からそう思ってくれているように見えた俺は思わず笑いそうになった。

「っ……だな」


 他人思いだなユーフィは。


「じゃあ、またね和樹」

「あぁ、またなユーフィ」


 宿に入り、彼女と別れる。


 晩飯と風呂を終わらせ、ベッドに腰掛けた俺は箱からカードを取り出す。


「……全部で50枚もあるのか。ん?」


 俺はふと、アーリーのカードを見た。するとそこにはシルエットではなく、アーリーの色や姿など全て描かれていた。どうやら召喚出来るようになるとシルエットが解放されるようだ。


 あと49枚。なんとなく2枚目のカードを見る。


 そこには何やらランプのようなシルエットが描かれていた。早く解放しないとな。あと、アーリーとの意思疎通だが、これもどうにかしなければ今後魔物と戦うにあたって不利だ。


「とりあえずどんどん召喚レベルを上げるか……」


 そんなことを考えているうちに俺はいつの間にか眠りについた。


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