第4話 神様と召喚術
「あれ? ここは……?」
目を開けると俺はまた真っ白な空間にいた。ひょっとしてここは……
「っ……まさかまたここにくるとはね」
俺を見てため息をつく金髪の女性。でも以前より髪が長いような……気のせいか。
「あ、よく涙目になる神様」
思わずそう言う。
「誰が泣き虫よ!?」
即座に否定する神様。いや、そこまで言ってないんだが。
てかここは天界……
「……もしかして俺、死にました?」
有りもしないことを言ってみる。途端、目をクワッと開く彼女。
「死んでません! 私が呼んだんです!」
即座に否定する神様。しかもどこか怒っているようにみえる。
「えーと、俺……何かしましたか?」
心当たりがあるとすればたった今彼女をおちょくったことぐらいだ。
神様はジロリと俺を睨む。あれ? なんか最初に会った時より雰囲気変わっているような……ただ、顔は似ている。
「……ここからあなたを見守っていましたがなんですかあれは。モンスターと遭遇した時の対処もおかしいですし、ましてや何も食べずに道に迷うなんて何してるんですか!? 空腹で死ぬ気ですか!? そうなんですか!? えぇ!?」
「ちょっ、ちょっとあの……その、ごめんなさい!」
神様の罵倒に土下座する俺。あれ? なんで土下座してんだ俺。あっ、多分元の世界で妹を怒らした時と似てるんだ。癖でやったな、うん。
「えと、あなたは……?」
「私は恋愛神ガイシアと申します」
恋愛神? なんで恋愛神がこんな所に俺を……?
「あなた、ミラシィと会いましたよね? あの子は私の妹です」
「えっ!?」
確かに。そう言われれば納得出来る。道理で似てるわけだ。俺がそう独りごちているとガイシア様は腰に手を当てた。
「まったく。私が興味本位に様子を見に来てみれば……いいですか和樹さん。あなたにはこの世界に持ち込みたい物をあの子が転送しました。なんでそれらを使わないんですか! ? そんなんじゃ生きていけませんよ!」
「といってもカードの召喚方法が分からないですし……(しかも1枚目のカードしか使えなさそうだし)?」
「っ……!」
そう言い神様の様子を伺う。
「……なるほど。あの子ったら全く……いいでしょう」
長い金髪の女性は溜飲を下げた。
「……なら私がこれからあなたに教えましょう。この世界での召喚方法を」
こうして長い金髪の女性がカードの召喚方法を教えてくれることになった。
「本来、召喚術とは魔法陣を描き、その魔法陣に魔力を注いで唱え対象を召喚するのが通例です。そして何が召喚されるのかは完全にランダムのため、特定のモンスターを召喚することは非常に難しいです」
ですが、と神様は間をおく。
「あなたの場合、もう1つの方法があります。それはあなたが持つカードの中から召喚する術です。この場合、魔法陣を描く必要は全くありません。あなたが呪文を唱え、カードをかざせばそこに描かれているモンスターが召喚されますので確実に特定のモンスターを召喚することができます」
おお、すげぇなそれ。俺にしか出来ない召喚術か。魔法陣描く手間省けるとか楽だし。
「しかし、デメリットがあります。それは今のあなたの召喚出来る魔物が限られているという点です。この世界での召喚術は召喚方法が何であれ、レベルに応じて召喚できるカードが増えていくため、最初は限られたモンスターの召喚しかできません」
「……なるほど。だから他のカードには何も描かれていないのか」
「……召喚レベルの上げ方はとにかく何度も召喚すること。これが1番効率的です。ですが、その度に魔力を消費しますので充分に注意して下さい」
これでお話しは終わりです。と、神様は長い髪を揺らしながらそう言う。
そんな彼女に俺は深く頭を下げた。
なんだかんだこの神様は俺を見ていてくれて必要に応じて手助けしてくれる。そのことが充分伝わってきたからだ。
「分かりました。ありがとうございます」
「ん。ではさっきいた場所に戻します。……今度はちゃんとしてくださいよ」
「はい」
俺が返事すると彼女は満足したのか微笑んでいた。そしてだんだん俺の意識は遠のいていく。
完全に遠のく直前、神様は口を開いた。
そんな彼女の言葉に俺は意外に思った。こんな言葉も言えるんだなと。直接言ったらやばいから言わないが。
“妹を責めないでくれてありがとう”
その言葉を最後に俺の意識は完全に失った。