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共通シナリオ1

●序章〈ゲーム世界には入れなかったよ〉


「このプラスチック画面が!!私と王子の邪魔をしないで!」


どこにでもいるゲームプレイ中の少女は携帯ゲーム機を指で弾いて、画面の中の王子をとりだそうとする。


「姉ちゃん、ゲームばっかりしてないで飯食えよ」


弟の柘榴たぐるが部屋のドアを開ける。


「お姉さまとお呼び!この三次元が!……あ、ごめんゲームの世界に入り込んでた」



少女はゲーム機の電源を切ると、ヘッドホンを机に置いて、部屋を出る。


「はいはい…怒るとこそこなんだ」

弟はいつものことだと気にせず流した。

とても小さな声で姉がノックをしないことに怒ると、弟は思っていたと呟く。




「階段で話しかけるのはやめてよね」

「ごめんごめん」

足を滑らせないようゆっくり階段を降りる。


「今日のごはんなに?」

“どうかグラタンでありますように”私は心の中で願う。


スプーンをさすまでグラタンだと思っていた。

けれど、ドリアだった。


「お姉ちゃん彼氏とかいないの?」

母はなにげなく私に聞いた。


「生身の人間に興味ない」

「うふふ仮想世界に恋してるから彼氏ができないのよ。それとも二次元はそんなにイケメンなのかしら?まあ母さんはゲームなんてしないけどね」

「……」


父は母に無言で視線をやる。


「まあいいから飯食おうぜ親父も姉ちゃんが嫁に行く事はないから泣くなよ」

「…泣いてないぞ!碧奈(へきな)も、ちゃんと嫁に行けよ!」

「だが断る」

「ま、宝貝ほうがい家は俺がなんとかするから安心しろよな」

「あー王宮に帰りたい武家屋敷でもいい」


食後、眠たくなってソファに横になった。

ここが王宮で私が姫ならもっとソファがふかふかだれうなあ。

生まれてくる時代を間違えた。


「ゲーム同時進行でもしてんの姉ちゃん?

色々ジャンル混ざってる」

「ううん、過去の思い出が毎日ふつふつとしてるだけ。今は王道の王子様が出てくるやつ」


今攻略中のヒーローは王女である主人公と敵対する国の王子。ベタ過ぎるけど王子はとってもかっこいい。


「王道って言われてもわかんねえよ」

「主人公はお姫様で早く王子のダイヤの指輪がほしいんだけど敵対国だから無理!な状況」


内容を聞かれたのでかいつまんで話す。


「わかった確かに王道って感じだな?…なんか王道がゲシュタルト崩壊しそうだ」


―――なんだか途端にケーキが食べたくなった。


「コンビニいってくる」

「タルトでも買ってくるのか?」

「うん」


ダッシュで近くのコンビニに行く。


シフォンケーキとチョコクッキーを買って、店を出る。


「あ?なにジロジロみてんだ?」

「みせもんじゃねーぞ金払え金!!」


マジモンのヤンキーだ。

リアルで遭遇するなんて、というか全然視界に入ってなかった。


「うーん攻略キャラっていうよりあんた達に絡まれる私を攻略キャラが颯爽と助けるシチュエーション?」

「なに言ってるかわかんねーよ」

「こいつヤバイ女だぜ」

「アニキに報告だ!!」


ヤンキーはなぜか逃げていく。

攻略キャラらしきイケメンはまったく現れなかった。


「ただいまー」

「おー」

風呂あがりなのか柘榴はタンクトップと短パンのままタオルで頭をふいている。


「コンビニから出たときにヤンキーにバッタリ遭遇してね」

「そこで姉ちゃん好みのイケメンがヤンキーをぼこぼこにした妄想か、よかったな」

柘榴はまともに相手にしてくれない。


「ヤンキーが絡んできたのは本当だけどイケメンが助けには来なかったよみんな勝手に逃げてった」

そこまで変な事を言ったかな不思議。


「ずいぶん幸せな頭をしてんだなー」

「うん私は幸せだよ」

入浴後、部屋に戻ると、いつも締めきっているはずの窓が空いていた。


「換気は敵だ!!」

開けていない窓を閉める手間、無性にイラついて窓を勢いよく閉める。


「姉ちゃんおやすみー」

「うん」

窓を開けただれかのせいでなにもやる気がない。

起きてても体に悪いし私も寝よう。


「嗚呼…画面の中に入りたい願わくば、永遠に彼女と水いらずで暮らしたい」


目にクマを作った白髪の青年が薄暗い部屋で一人。

コンピューターの画面を眺めながら呟き、そのまま意識を手放し眠りに落ちる。



――――なにかがチカチカ輝いていて、目をつむってもなかなか寝付けない。


「ああもうなんなの!!」


ベッドから起き上がると私は目を疑った。それは仕方がないことだと思う。

だってSFに出てくる異空間のようなものが、部屋の真ん中にあったのだから。


「異世界に行って王子と合うパターン!?」


ウキウキしながら変な光に手を伸ばす。目を閉じて、開けばきっと―――――


「あれ?」


異世界に行けたわけでもなくいつもの自分の部屋で、変な空間は消えていた。


「寝よ」





目を閉じて、すぐに眠ることができた。




「姉ちゃーん早くいこーぜ」

「うん」

余裕で電車に乗り、柘榴は端、私はその隣に座る。

私は鞄からゲームをとり出し、イヤホンを装着。


隣に誰かが座っておなじ携帯ゲーム機を持ってヘッドホンをしている。


画面に集中して、にやにやしそうになるのを必死にこらえてようやくエンディングを向かえられた。


「…バッドエンドだった」

柘榴に言ったけどスルーされてしまった。

「僕もバッドエンドだったよ」

急に隣の席に座っていた男性に話しかけられた。


よく見ると若い、けど髪が白い、ハーフかな。

目の下にうっすらクマがあるけど、不健康そう。

クマはともかくゲームでは銀髪とかよくいるし、そんなに驚くことでもないか。


「へこみますよね」

「頑張ったのにね」

初対面だけど、共通の話題だったから話せてしまった。


「好きなメーカーってある?」

「女性向けの恋愛だったら特に気にしません…あ、violet社は一番かもです」

「僕は恋愛といっても男性向けだけど、violetは好きなんだ」

「男女別版もありますしね」

目的の駅に着き、柘榴が‘降りるぞ’いって、と手をひく。


「これ僕のアドレス…」

メアドの書かれた紙をもらった。


「はー初めてメアドもらっちゃったよー」

(クマあるけどけっこう格好よかったし)


「よかったなーそこそこよさげな若者で。

目の下クマあって死にそうな感じだったけど」

「若者って…柘榴よりは年上でしょ

オッサンくさいこと言わないでよ」

弟がオッサンなら私はオバサンになっちゃう。


「小学生から見れば、高校生もあと二、三年して大学生になればオッサンオバサンだからなって近所の悪ガキが言ってた」

「まったく今時の小学生は」

やばい、自分から年寄り臭くなっていく。


「じゃ、中等部あっちだから」

「また放課後ね」


柘榴に手を降りながら自分のクラスへ向かった。


――――



「―――この公式は――であるからして―――」


一人の男子生徒は、教室の授業を聞き流していた。


《あー授業つまんねー

早く家に帰って格ゲーしてー》


男子生徒は退屈のあまり、教室を見渡した。


《お、授業中にゲームしてるやつ発見》


女子生徒が携帯型ゲームを机の下に隠しながらプレイしている姿を目にする。


そして次の授業になってもやめない。


「硫酸、カリウム、マグネシウムの中でもっとも危険なものは?では宝貝さん!」


ゲーム中の女子生徒があてられた。


「硫酸!(恋する科学者で見た)」

「はい正解です」


見てるこっちがヒヤヒヤしたぜ。


●第1章〈ついに異世界に来てしまった〉



パキンと、なんだか変な音がしたけど気のせいだよね。



「お、姉ちゃん」

学校も終わり、まっすぐ駅のある方向に歩いていると、柘榴にバッタリ会った。

私も拓榴も帰宅部だからたいして驚くことじゃないけど、なんで部活やらないんだろ。


「一人?一緒に帰る?」

「ああ。なあ、姉ちゃんはあそこのやつらみたいにクレープとか買わなくていいのか?」


柘榴が楽しげにクレープやパフェを食べる女子達を指差す。


「も~人に指差しちゃだめでしょ」

「あ、わるい。つい」


「クレープはいいや、私甘いものそんな好きじゃないし」

「そうだったのか!?……けど姉ちゃん昨日ケーキとクッキー買ってきてたじゃん」


甘いものは頭では食べたいけど、口の中に入れると甘すぎて丁度いい味がない。


「甘さ控えめのオレノケェキを買おうと思ったら、オレサマケーキがあってね。流行りのキャラのイラストがあったから買ったんだ。冷蔵庫で冷やしてあるよ。クッキーはキャラ付きだからカードとって柘榴にあげようかと思って。」


「へーそうだったのか……って! そうじゃなくてさ、俺、姉ちゃんが友達といる姿を見たことねーんだけど」


「私に友達がいるとでも思ったのかねワテスンくん」

「俺がモテない~のぼこっちにもいるんだから一人くらいいるんじゃねーの?」

「残念。いないんだなこれが」


別にポリシーとかないし、作らないから作らないでもない。

たんに人が寄って来ないだけなのである。


「なんで?」

「人が寄ってこないんだよね」

「いやいや、友達くらい自分で作れよ」

「なんで?」


「いや、なんでって言われても」

「友達って無理矢理作るものなの? なんかちがくない?やっぱさ、運命的な出会いとか、THE親友みたいなのがいい」


「あるわけねーよ」

「考えてみてよ、下手なあたしたち友達タイプなんかとあったら最後、悪い仲間とつるみスケバン化するよ?」


「もういい、姉ちゃんは友達いなくても大丈夫だ。野生に放ってもヘキーナ文化作れるくらいに」

「なにそれ―――」



パキン、また変な音がした。


きにせず歩いていると、知らない人にぶつかった。


「すみません!」

「……こちらこそ」


朝の電車の人だった。


またパキりと何かの割れる音が頭の中でした。


「おいなにやって……」


どこかで見覚えのある男子高校生がこちらに走ってくる。


「お前、授業中ゲーム女!」

「なっなぜそれを……!?まさか、貴方は私を組織に勧誘しに学校に潜り込んだエージェント?」

「……同じクラスだからな」

「姉ちゃん……」


「なに?」


「ここどこだ?」


――――私達は気がつけば、知らない場所にいた。

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