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096  人生には順番がある


 人間ならばどう考えても面白いとおもった事をやり始める。面白くない事を趣味にしている人間などいる筈も無いので、誰もが楽しいと思った物に興味を抱く。それは銀人化したチビも同じだった。初めて野球のバットとボールを触った時は感激を超えて『これがボクの仕事なんだ』と無意識に感じていた。誰から言われずとも野球をするようになり、プロのドラフトで選ばれるまでになっていた。ここまで成り上がったら満足しそうだが、チビは決してこの程度では満足しなかった。あくまでもスタート地点に立っただけだと思っているので、今のチビはまだスタート地点に立っているだけだ。まだ出発もしていない状態だからこそ上を目指せるとも言えるのだが。


「今日はあまり調子が良くなかったな」


 なんやかんやありながら、チビの打率は.280台に下がっていた。2軍の平均打率が3割を超えているので今のチビは平均以下の打率だった。しかしそれでもよりはまだ見れる数字だったので悪くはない。確実にヒットに出来る球も増えているし、四球を選べるようになっていた。積極的に振っていても四球を選べているのだから出塁率も意外と悪くなかった。それに遊撃手の守備は既に1軍レベルに達しているからいつ1軍に上がっていてもおかしくは無い。ところがその可能性は限りなく低かった。誰もが最初から1軍で試合を出来るだけではない。どうしても優劣なり順番なりがあるのでまだチビは呼ばれていなかった。


「チビちゃん。今日はあまりヒットを打てなかったね」


 ミラベルが声を掛けてきていた。彼女は自分とは違い、ヒットを3本も打っていた。これで彼女の打率は.321。ホームランこそ打っていないが、単打を多く打っていた。むかしは単打はあまり評価されていなかった。ところが今の世界は単打を多く打つ者が美しいと評価をされるようになっていた。無論、ツーベースヒットやスリーベースヒットもそれなりに評価はされているが、単打の市場価値はかなり上がっている。



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