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008  銭湯にて


 憧れの選手と同じ事をやっても本当の意味で成長しない事を教えられたチビは帰りの道中に銭湯によってちゃぽんと顔だけ出して浮かんでいた。あまりにも自分が恥ずべき事をやっていたと知らされたので、彼の猫耳は閉じたままである。


「はあ……」


 もはや溜め息しか出ない。それぐらい彼の心には強く響いた。


「よう、チビちゃん」


 するとだ。隣にはカンガルーを擬人化させた選手のパコがいた。パコはアルファダックスの2軍選手であり、チビの同僚である。チビとは違い、期待の若手として注目を浴びている。彼と一緒にいると自分の劣等感が浮き彫りになるので、あまり一緒にいる事は好きじゃなかった。別にパコが嫌いという訳ではないが。


「パコ君……」


「どうしたよ。猫耳垂らして、元気なさそうだな」


「うん。ミラベルさんに注意されて落ち込んでる」


 チビは素直に答えた。今の僕は落ち込んでいるのだと。


「おいおい、なんで注意されたんだよ」


「夜中まで練習するのは駄目だってさ」


「そうか今までの努力を否定されたんだな」


 二人は顔だけ出して会話をしている。


「うん」


「しかも2000本安打のベテランに言われたんじゃ傷つくよな」


 そうなのだ。人はベテランに褒められると極端に嬉しくなり、ベテランに叱られると極端に傷つく生き物なのだ。


「今までの努力は無駄だったのかな?」


「そうでもないだろ。努力は体に染みついてる筈だ」


 パコはそうだと言うのだ。


「本当に?」


「俺だって努力をせずにここまで来たわけじゃない。君の気持は分かるさ」


「でも、パコ君はなんでいっぱいヒット打てるの?」


 チビは小首を傾げながら、打撃の秘訣を問いかけた。


「今まで、必死に努力を続けた自分を信じているからさ」


 確かな顔でそう言っていた。







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