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074  前向きな考え方だけでは意味がない


 どこまでも自分は飛翔し続けられると自負しているからこそ、今のチビは孤独な日々にも耐えられる。ひたすらストイックな毎日を続けていたとしても内なる力を感じるだけの余裕がそこにあった。もしも余裕が無ければ今のチビは存在していなかったかもしれない。それだけ、心が満たされている状態というのは人間として正常に活動するために必要な事であると、良く分かる。どんなに疲れていても心が方向性を見失っていない限りは、とにかく前に進められる。その前に進む姿勢が大事じゃないかと思うようになっているのはチビにとっては悪くは無かった。それぐらいの気持ちを抱いていないととてもじゃないが過酷なシーズンを耐えるだけの気持ちは湧いてこないのだ。本来ならばシーズンを終わって「ボールもバットも触りたくない!」と拒否反応を示す者で溢れかえるのだが、少なくともチビはそうじゃない。野生時代にもっと過酷で辛い目にあっているから今の現状にも幸せを感じて仕方がないのだ。少なくとも、辛いと思っているよりかは楽しいと思っている方が何倍もマシなので、わざわざ自分を追い込まなくても、楽観的に物事を考えられるのであればその方が効率的だし、生産性もあると思うのがチビの流儀だった。


 しかしだからと言って、精神状態がいくら安定していたとしても結果が出なければまるで意味が無かった。口先だけビックマウスでは人脈を失うだけで何も生み出されないのは分かっているので、こういう次世代の子供達に訴えかけるような心の叫びは自分の心の中にしまい込んで、取り敢えず結果を残せるように努力を続ける必要があった。そのためにはまず、何をするのかと言えばバットを振り続けるだけだ。いくらそれ相応のバント技術があったとしても打球が前に飛ばなければ意味が無いので、とにかく打球が内野を超えるようにならないと話しにならないと感じていた。勿論、あそこまで飛ばすためにはパワーが必要となってくるので今の日本野球界では単打を放つためにも相応のパワーがいるのだった。



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