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066  徹夜で元旦を迎える


 色々と考えている内に、ついに元旦を迎えてしまった。これだから徹夜は駄目なんだと窓から登る日差しを見ながら思っているチビだったが、時間は限りなく早く進んでいくので嘆いている暇は無い。そしてチビは今、微かな希望の光を感じていた所でそれを書道の形として表現しようとしていた。筆を右手で持ち、流れるように動かすと、納得のいく文字がそこに浮かび上がった。チビはとても嬉しそうに半紙を両手で持ちあがてウキウキな表情で部屋の中を駆け回る。それはまるで無垢な少年のようだ。


「うん! これで完璧だ」


 チビが書いた文字は『極める』だった。この極めるの言葉には様々な言葉の意味が隠れていて、練習を極めるとか野球そのものを極めるとか恋愛を極めるとか様々な意味がそこに含まれているので、自分でも称賛したい程の出来栄えとなっていた。こうなったら、この作品を誰かに見せたい感情が芽生えてくる。これは芸術家なら誰しもが思った事のある感情だと思うが、とにかく自分の作品が瓦礫の中に埋もれてしまうのは勿体ないと自画自賛に似た感情はどうしても芽生えてしまう。そもそも作品は誰かの目に触れて初めて意味があるので、いつまでも自分の部屋の中にしまいこんでいては意味が無いのだ。積極的に他人の目に触れさせる事によって、自分自身も芸術家としての成長が促進されると言っても過言では無い。そしてある意味では野球選手も芸術家なので、ファンの人達に自分のプレーを観てもらって、初めて給料が発生する職業なのだ。


 そしてチビが最初に見てもらいたい人物は決まっている。密かに恋心を抱いているミラベルにこの渾身の一作を見て欲しかった。本当は心から尊敬の念を抱いているAKIRAに見て欲しかったが、そもそも彼は存命していないので見てもらえない。もう少し自分が早く生まれていればなと後悔しそうになっていたが、後悔で時間を割くのは非常にもったいない行為だとAKIRAの自伝にも書いてあったので、チビはクヨクヨせずに靴を履いて玄関を飛び出したと思うと、次の瞬間にはミラベルの部屋をドンドンと叩いていた。



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