059 劣悪な環境に文句を言わない
どんなに劣悪な環境だとしても野球が出来るだけで幸せだという感情を持てるのは最初だけであり、その考え方を持続させるのはハッキリ言って困難を極める。人は誰しも心の中では楽をしたいという気持ちがどうしても芽生えてしまうので、1軍の環境に嫉妬してしまい次第に2軍で野球をプレーするのがあんなに楽しかったのに、いつの間にか全く楽しめない自分がそこにいる、なんてことは日常茶飯事だ。それぐらい人は環境に慣れてくると、更に上の環境を羨ましく思って今の環境にありがたみを失くすというのが人間の考え方だ。この考え方を失くすためには戦力外通告された時ぐらいだろう。「もっと努力をすれば良かった」「今思えば、2軍での生活も楽しかった」という気持ちがとたんに芽生えて、あの時に戻りたいのだと身勝手な考え方をしがちだが、これは人間の性質なので仕方がないと言えば仕方がないのかもしれない。だからこそ今の現状にも不平不満を言わずに頑張って野球を続けないといけないのだが、そう簡単にいけば困らないのだ。誰しもがそういう考え方を根本に持っているからこそ変われない人がたくさんいるのが事実なので、とにかくがむしゃらに頑張っていくしかない。取り敢えずは、頑張らないよりも頑張る方がよっぽど大事なので諦めない事が大事だと、チビは再確認していた。ミラベルのひたむきな姿勢を見ているこっちまで粉骨砕身の勢いで野球を続けようという気持ちになれる。衰えたミラベルがここまで頑張っているのに、未来が無限に広がっている若者が諦めていたのではどうしようもない。やはり年配者が若者を過大評価をするのはここにあるのだろう。日本は特に若い世代が会社なり組織なりを引っ張っていくという思想のようなものがあるので、若い世代は素晴らしいという認識が年配者には固定されてしまっているのだろうと、チビは内心そう考えていた。




