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051  最大の侮辱


 ミラベルとの練習が終わると、チビは寮に帰って先輩達とゲームをして遊んでいた、今まで練習の鬼だと皆から言われていたチビが楽しそうにゲームをプレイするのは非常に珍しい光景である。何が変わったのか、それはミラベルの一言が要因だった。「練習ばかりじゃ疲れが取れなくなるから、たまには楽しみなさい」と言われたから息抜き程度に先輩達とゲームをしていた。すると、久しぶりに心から楽しいと思えるようになっていたので精神的にはかなり楽になっていた。いつもは練習から帰ってきたら風呂に浸かりながら本を読んで寝るぐらいだったのだが、皆と一緒に楽しくゲームをする事で楽しいという感情に芽生えていた。これは良い兆候だとチビ自身も感じていた。


「うわっ、貧乏神引いちゃった!」


 新幹線の後ろには巨大な紫色の神様が降臨していた。それを見て先輩たちはゲラゲラと笑っている。とても平和で和みの時間だ。プロ野球という瞬間から離れて、ゲームをするという事がこんなにも面白いのかと目から鱗が出るばかりだ。


「ついてねえな。お前はAKIRAかよ!」


 無論、AKIRAとは阪海ワイルドダックスの英雄としられる人間だ。彼は類まれなる技術を持っていて日本のみならずメジャーリーグでも大活躍した伝説の名選手であるが、それと同時に、誰もが耳を疑う程の不運の持ち主だとしても知られているのだ。其れ故に、先輩はツッコミの例えとしてAKIRAの名前を挙げたのだろう。しかし、チビはその例えよりもAKIRAを呼び捨てで呼んでいる先輩に若干カチンときていた。なぜならばチビは他の誰よりもAKIRAの事を崇拝して、彼にまつわる書物は全て網羅している程のマニアである。人形、ユニフォーム、ポスターとありとあらゆる商品をネットで買い占めて自室にこれでもかと飾っているのだから恐れ入る。


「ちょっと……AKIRAじゃなくて、AKIRAさんでしょう!」


「何言ってやがる。AKIRAは昔の選手だぞ」


「そうだ、そうだ。今の野球リーグではAKIRAも大して活躍できねーよ」


 先輩達は、まるで子供のような事を言って言い訳をしていた。そしてAKIRAを侮辱されるのはチビの中で最大の侮辱行為であるのは言うまでもない。チビはこめかみに血管を浮かせて、プルプルと小刻みに震えるのだった。

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