005 寝不足の理由
野球選手と言えど、必ずしも野球だけの人生という訳ではない。皆誰もが趣味というものを持っており、時には野球の練習そっちのけで趣味に時間を費やす選手も少なくは無い。特に擬人化された動物達は身体能力だけでプレーしているようなものなので、練習さえしない選手もいる。無論、練習はした方がいいに決まっているのが、どうしても自分の能力に過信してしまい、努力不足になってしまう。
ところが、このチビという選手は身体能力が並なので練習を重ねて努力することで自分の技術を磨こうとしていた。これは何もチビの考えで始めたことでは無い。チビが崇拝している伝説の名選手も、毎日血を滲ませる努力をしていたという事で、それに影響されて努力をするようになった。
そのおかげで、最近は少しだけプレーが上手くなったような気がしているチビだ。いつも夜中の22時近くまで練習して寮に帰宅した頃には23時。それから風呂と御飯を食べていたら0時を超える。趣味の時間などあまり残されていないのだ。
しかし。
この男にはどうしてもやりたい趣味がある。それこそが読書だ。彼は本を読んで知識を蓄えるタイプなので、たとえ寝不足になろうとも本を読もうとする。そうすると翌日に疲れが持ち越されるのは当たり前で、最近の彼は目の下にクマを作って試合に臨んでいる。
そんな彼を心配している表情で見つめるのがミラベルだった。昨日、飯屋に行ってからすっかり仲が良くなっただけに、彼の調子が悪いことを気になって仕方がないようだ。
「チビちゃん」
試合終了後、球場から外に出たところで、ミラベルが話しかけてきた。すっかり寝不足で疲れ果てていたチビも彼女の声を聞くと目を真ん丸にさせ、猫耳を立てて振り返る。
「ミラベルさん。ど、ど、どどうしたんですか!」
少し仲が良くなったからと言って好きな人にいきなり後ろから話し掛けられると困惑するのは当たり前である。チビはビックリした様子で声が裏返っていた。
「ちょっと、そこのベンチでお話ししない?」
ミラベルが指差した場所は噴水近くに設置されているベンチだった。そこの近くには等身大のAKIRA像も置かれている。彼の熱狂的なファンであるチビは大きく首を縦に振って了承するのだった。