037 チビが活躍できない理由
いかにして、このスランプを脱出するかそれが今のチビの課題だった。スランプ克服は孤独な闘いと言っても過言では無い。なぜならば人によってスランプを脱出する方法は違うし、いつ終わるかの期間も無い。そんな中で必死に努力をしていかなければいけないのだから実に大変な事だ。しかし、スランプが目の前に現れたというのはすなわち成長する道が現れた事を意味する。なので、一歩先の成長した自分になれると思えば、心はちょっぴり楽になる。
そしてチビはひたすら素振りをしていた。2軍の環境は劣悪であり、他に手伝ってくれる選手など数名入ればいい方だ。他の皆は遊びほうけて銀座の夜に消えている。唯一と言ってもいい友達のパコでさえ、クラブの姉ちゃんとイチャイチャタイムをしているのだから今のチビは屋内運動場で一人素振りをせざる終えないのだ。
投げても捕ってくれるファーストなどいないし、守備練習など困難だ。なのでストレッチや走り込みなど、一人出来る練習メニューを黙々とこなしていた。しかも毎日夜になるとこのように一人で練習しているのだ。それで、結果が出ないのだから懸念に思っても仕方ないだろう。なんせ、チームで人一倍努力を重ねているのに、チームで一番結果が出ていない。これでは一軍出場も夢のまた夢である。
いくら練習で結果が出たとしても、試合で結果が出なければ意味が無い。せっかくの努力が無駄に思えるのも、今のチビにとっては当然なのかもしれない。しかし、彼は汗を流してせっせと素振りをしていた。自分は究極の凡人であると自負しているため、誰よりも努力しないと成果は出ないと心得ているからだ。そもそも、種族が猫という時点で他の皆より一歩で遅れているのだから。
猫で成功した野球選手は今のところ皆無だ。どう考えても、他の動物の方が良いポテンシャルを持っているのでどうしても力負けしてしまうのだ。




