003 憧れ、尊敬、恋心
チビとミラベルは共に内野手だ。チビが二塁手で、ミラベルは遊撃手。そんな二人がこれから2軍戦と言えど同じフィールドで共に力を合わせて闘う。特にチビは緊張してゲロを吐きそうなぐらいだった。なんせ、テレビで見ていた憧れの選手が目の前にいるのだから。しかも相手は超絶美人で、チビのタイプである。
もはや恋愛的感情を抱くのは時間の問題だった。だからと言って、それを伝える勇気も努力も無い。ましてや1軍経験の無い自分が告白していい相手ではないと、自分自身がよく分かっていた。だからこそ、敢えて口に出す事は無い。
「いよいよ。試合が始まりますね」
チビは仕事の話しをするばかりだ。
「ええ。今日は私が1番バッターで、チビ君が2番ね」
「僕、バントは得意なので、ミラベルさんが塁に出たら確実に送りますから!」
そうなのだ。チビが唯一他の選手より優れている点はバントである。それこそ2軍戦だけだが、チビのバント数は両リーグトップである。猫は小技が得意というのが有利となっている。
「へえ、そうなんだ。それじゃその時はよろしく頼むわね」
ミラベルは、可愛らしくウインクしてきた。それを見たチビはとたんに卯らしくなって頬を赤らめて、猫耳をピクピク動かす。
「はい!」
満面の笑みで微笑み返した。
「お利口さんね」
今度はミラベルが頭を撫でてきたではないか!
これはもうタマラナイ。好きな人に頭を撫でられるなんて、こんなに嬉しいkとは無い、しかも猫は頭を撫でられるのが好きなので余計に幸福感を感じる。
「いえいえ、そんな事はないですよー」
だが、声が上ずっていた。
「それじゃ、守備に就きましょうか」
こうして二人は守備位置に向かった、試合は着々と進んでいき、1番バッターのミラベルがヒットを放ち、2番のチビがバントをするという約束が実現された。しかも試合にも勝って上機嫌な二人である。
そんな二人は勝利の余韻を感じるかの如く、飯屋に行く約束をした。誘ってきたのはミラベルの方で、無論チビは勢い良く首を縦に振るのだった。