028 独自の哲学
誰にでも心の内には哲学が存在する。それは幼稚園生だろうが、総理大臣だろうが関係ない。人生には自分なりの哲学が必要であり、実存主義の考え方が理想とされる。実存主義を平たく言えば、自分が主人公であるという考え方が真理だという事だ。すなわち、人は誰しも生まれた時から主人公であり、人生は自分の力で切り開かなければならない。これはどんな人間にも共通していえる哲学だ。
チビが尊敬しているAKIRAは哲学者としての一面を持っていたので、野球に自分流の哲学を混ぜ込んでプレーを続けていた。チビが思うに、野球人として成功するには独自の哲学が必要だと感じている。
目の前で打席に立っているミラベルだって、きっと心の内には自分だけの考え方を持っている筈だ。他人の話しには決して惑わされず、自我を保っていられたからこそ2000本安打という記録を打ち出せたに違いない。
だからチビも何も考えないのではなく、意識的に野球をする事で更なる高みへと目指していた。今でこそ打率はあまり良くないが、きっと事態は向上すると信じている。そう考えるだけでも大分精神的に違うのだ。
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強烈な音が聞こえたと思うと、打球はセンター前の転がっていた。そう、ミラベルがヒットを打ったのである。いつものように美しいヒットであり、チビも内心ホッとしていた。勝負の世界だからこそ、尊敬する人にも結果を残してほしいというのが本音である。
「よっし。ゴリスケも続けよ!」
監督がそう言って声を出していた。
「う……うん」
だが、ゴリスケという男はプレッシャーに弱いので応援は逆効果になるのだ。監督の一声が彼の結果にどうつながるのか、見物である。




