023 成功率100パーセントの送りバント
各選手は特殊能力という程ではないが、それに近いとっておきの奥義を身にまとっている。それはかつての野球には無かったものであり、元々は野生動物だったという事が影響しているのは確実だ。先程、一塁まで跳躍して内野安打に成功したパコは、このように人間離れしたジャンプ力を持っている。これは元がカンガルーのパコにしか出来ない芸当である。
すると、猫であるチビに何が出来るのかという疑問に繋がる。特に跳躍力が強い訳でもなければ、力そのものがあるという訳ではない。走るスピードも他の動物よりかは遥かに劣るし……と、平凡の中の平凡なのだ。それでも軒並みいる選手以上の活躍をめざし、5ツールプレイヤーになる事を夢見ているのだから驚きである。
その闘志だけは一人前という事だ。
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そして、ようやくチビの打順に回った。二番バッターであるチビの役目とはやはり犠牲バントだ。それもチビのバント成功率は100%という異常な成績を叩きだしている。バントの技術だけなら両リーグでもナンバーワンと言われるぐらい優れているのだ。
そんな彼だからこそ二番を任せられている。古来より二番バッターは犠牲バントでつなぐという風習があり、22世紀の今でもそれは変わっていない。二番に強打者を置けるのはよっぽどチームが恵まれている時だけだり、基本的にはどの球団にも二番に非力なバッターを置いている。
そしてバントが得意な選手で、なおかつ非力な選手に共通しているのが左バッターという事だ。ところが、チビは両打ちの選手なので文字通り左打席だろうが右打席だろうが相手投手に応じて変える事が出来るのだ。
「集中しないと」
チビはそう呟きながらベンチを見ると、やはりバントのサインが出ていた。チビは静かに頷いたと思うと、バントの構えを見せて打席に立つ。
すると、相手投手から投げられた速球に見事タイミングを合わせて三塁線に転がしたではないか。これによりパコは二塁へと進んで送りバント成功。これでワンアウト二塁となりチャンスに恵まれる事となった。
全てはチビのおかげである。




