016 ゴリラ故の知能指数
どんな選手にも必ず衰えは存在する。しかし、全盛期とまではいかないが、それでも成績が好転して復活する選手も確かにいる。もしかするとミラベルもその内の一人ではないかとチビは思っていた。
「ミラベルさん。守備もいいし打撃もいいから1軍に上がるのは確定的ですね」
「うーんどうだろう。本当に衰えた私を上げてくれるのかな」
ミラベルは半信半疑のようだ。
「大丈夫ですよ。ミラベルさんなら」
「どうしてそう思うの?」
「だって2000本安打を放った名選手を2軍で飼い殺しなんて……それは絶対に無いですよ。監督だって本当は使いたい筈です」
チビは必死に慰めの言葉を探していた。確かにミラベルがここまで好調なのに1軍に呼ばれないのは何かしら訳があるかもしれないと思っている。しかし、それを認めるのはどうかと思うのでチビも前向きに物事を考えるようになっていた。
「そうね。励ましてくれてありがとうチビちゃん」
「いえいえ。どういたしましてー!」
憧れの名選手に褒められて嬉しくなったチビは猫耳をパタパタと動かして喜びを全身に感じていた。
「それで、ゴリちゃんの事だけど」
唐突に、彼女はゴリスケの事を語り始めた。
「え。ゴリスケ君がどうかしたの?」
「あの子、ちゃんと野球のルールを分かっているのかしら。この前も間違えて三塁に走りだそうとしていたし」
どうやらゴリスケがあまりにもクルクルパーなので心配になっているようだ。
「どうでしょうね。僕も分からないです」
ハッキリ言って、ゴリスケは何をしでかすか分からない。いきなり強い力で握手をされた時もあれば、あまりにも豪快なハイタッチで骨折しそうになった時もある。彼に悪気があるわけではないので危険人物では無いが、それにしても彼は何をするにしても豪快過ぎるのだ。