燐乃宗二。干渉するタイプの故人
紅実島。それは紅葉が絶え間無く舞い続ける島。別名秋島。春には桜と共に紅葉が舞い、夏には海の飛沫と共に紅葉が舞い、冬には雪と共に紅葉が舞う。そんな島がこの日本に存在する。その島で産まれる子は皆女だった。俺はその島で生まれ育った唯一の男。もちろん、この島に男子がいないわけでは無い。産まれた男子が俺だけだった。
この島で初めての男である父が死んでから今日で5年。俺は2人目の男としてこの島にいる。
「み〜くるん。何してんの?」
「おお。七海。何してるって、墓参り以外に何してると思うんだよ。」
「ああ。そういえば今日だったね。宗二さんの命日。」
燐乃宗二。それはこの島で初めて産まれた男の、俺の名前だ。そして、この少年、燐乃聖来の父親だ。更に言うと、この聖来と一緒にいる栗色の髪に蒼眼の少女は衣氷七海。息子の幼馴染だ。
「でさ〜みくるん。今日始業式だよ?」
「ああ。知ってるよ。そろそろ行かないとな。」
「うん。」
聖来は俺の墓参りを終えて学校へと向かった。今日は聖来たちが通っている学校、篠橋紅凛学園の二学期の始業式だ。聖来たちはこの学園の一年だ。
校長の挨拶も終わり、今日はこれで学園は終了だ。
「みーくん。今日さ、僕と一緒に帰ろうよ。」
「ああ。いいぞ。でもどうした。歌織にしては積極的過ぎないか?」
城峰歌織。聖来のクラスメイトで中学からの付き合いだ。赤毛のショートカットでとても外交的な聖来たちの友達。
「ふっふーん。駅前に美味しそーなクレープの移動販売が来ているらしいんだ。でね〜。」
「デートしてやるから奢れと。」
「そういうこと。さっすがみーくん。分かってる〜。」
「分かったよ。デートに付き合ってやるし、クレープも奢ってやる。」
「みーくん!それじゃあ、僕がみーくんのことが好きで、更に食い意地張ってるみたいじゃ無いか〜。」
「え?違うのか?」
「い、いやっ。違うわけでも、ない、けど。って〜〜〜〜〜〜〜〜っ!! ///」
そうして、赤面しながら膨れている歌織を連れて聖来は駅へと向かった。
ちなみに、篠橋紅凛学園では下校中の寄り道、買い食いは校則で禁止されている。
「う〜〜〜ん。美味しい♪」
「そりゃ良かったな歌織。」
「うんっ。買って正解だったよ。」
「歌織よ(キリッ)。」
「? どしたの?あっ。もしかして一口欲しい?あーんしてあげようか?あーん。」
「いや、そうじゃ無くて……。ああやっぱいいわ。じゃあ一口貰おうかな。」
「うんっ。いいよ。みーくんが買ってくれたんだしね。はい、あーん。」
「なんだ、わかってたのか。じゃあいいか。 あーん。」
「聖来は駅前の、しかも人が多い時間で、周囲のボッチどもにまるで見せつけるかのように美少女とイチャイチャしていた。」
「じゃあさ、じゃあさ、みーくんのも一口頂戴。」
「ああ。いいよ。はい。」
「ん。あーん。うん。みーくんのも美味しい。」
「更には恋人で無い男女が周囲の誤解を集めるための最上級の行動までするという、ウザさ前回の行動に走っていた。」
「さっきからうるさいぞ陽華。」
「だってぇ。せら兄が女の子とイチャイチャして鼻の下伸ばしているんだもん。」
「別に鼻の下伸ばしてなんかないよ陽華。おかしな誤解だよ?」
燐乃陽華。聖来の妹で俺の可愛い娘だ。よくもまあ茶髪に大きな黒眼と可愛いく育ってくれたよ。我が娘よ。
「へっきちっ。うーん、誰かが噂しているのかな。」
「どうせ、父さんが上でよくも可愛いくなってくれたな娘よ、的なこと言ってんだろ。」
その通りだぞ。息子よ。ほぼ一緒だぞ。しかも、行が上っていうのと、上(天国)と。ピッタリだぞ。
「相変わらず、陽華ちゃんはみーくんのこと好きだね〜。」
「べ、別にそんなんじゃあ無いもん。ただ、せら兄が……。」
「うん?みーくんがどうかしたのか〜い?」
「〜〜〜〜〜〜っ。」
「あはは。照〜れちゃって。か〜わいいっ。」
「ん〜〜〜〜〜。とにかくっ。帰るよせら兄。」
「ちょっ。引っ張るなよ陽華。じゃ、じゃあまたな〜歌織。」
「うんっ。バイバーイ。あと、今日はありがとね〜。」
「ねぇ。せら兄はどうなの?」
「ん?何がだ?」
「歌織先輩のこと。」
聖来は帰宅途中、歩きながら陽華にそんな事を尋ねられていた。
「ああ。うん。歌織な。それがどうかしたのか?」
「どうかしたじゃ無くて、気付いてるんでしょ。歌織先輩がせら兄のことが好きだって。」
(うーん。そうなんだよな。俺ってギャルゲーの主人公じゃ無いから、こういうの鋭いんだよな。)
「うん。まあ気付いてるけど、特に何も言われてないし。なんとも。」
「歌織先輩のことは好きなの?」
「うーん。どうなんだろうな。今はそんな気無いけど。」
「あ〜。そうだよね。せら兄はホモだから、女の子には興味無いんだよね。」
「ホモでは無いよっ!?男より女の子に興味あるからねっ!?」
「そんなに否定しなくてもいいよ。ほら最近そういうの多いし。ね。」
「いや、いやいや。ね。じゃ無いよっ!?」
聖来と陽華は相変わらず仲がいいな。この分だと、家族は大丈夫だな。俺がいなくても。
いや、寂しくなんかないよ。俺だって大人だし。兄妹が仲良くて、家計も大丈夫だから俺なんかいなくてもとか卑屈になって無いから。いや、でもやっぱ寂しいなこれは。ああ〜寂しいな〜。
寂しいな〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ。
そして、帰宅。え?俺、無いてなんかないよ。ぐすんっ。うん。全然泣いてない。いやむしろ楽しかったぐらい?
「ひーちゃん。聖来。お帰りなさい。今日は一緒だったのね。妬けちゃうわ。」
「ただいま、飾美ちゃん。」「ただいま、お母さん。」
「あらあら、ひーちゃん。聖来みたいに飾美ちゃんで良いのよ。」
「う、うん。」
「ねー飾美ちゃーん。今日の晩御飯何?」
「あらふうちゃん。今日はねぇ。シチューよ。」
「やったー。ありがと。あ、ひーちゃん、みく。お帰り。」
「うん。ただいまふう姉。」「ただいま。」
これで燐乃家のメンバーは全員だ。
母、燐乃飾美46歳
長女、燐乃風華17歳高3
長男、燐乃聖来17歳高2
次女、燐乃陽華15歳高1
「あらあら、誰かしらね。私の年齢を勝手に公開している故人は。」
飾美よ。すごく怖い。ていうかごめんなさい。本当にすいません。
「まあいいかしら。そろそろご飯だから二人とも着替えてらっしゃい。」
「「はーい」」
「さーて。ご飯にするわよー。」
「「「はーい」」」
「やっとご飯だよ。私もうお腹空いちゃって大変だったよ。」
「ふう姉はお昼食べないからそんなんなんだよ。」
「そうね。聖来の言う通りかしらね。ふうちゃんは何でお昼要らないの?はっ。も、もしかして私のお弁当美味しくない?」
(やばっ。鼻血出そう。飾美ちゃん可愛過ぎるっ)
「いや、そうじゃ無くてさ。私あんまりお昼食べないから要らないと思ってるんだけど、結局夕方にお腹空いちゃってるからなの。」
「そう?私のお弁当が美味しくないからじゃ無い?」
(やめて〜っ。可愛い。何この可愛い生き物?)
「う、うん。っていうか、飾美ちゃんの料理私大好きだよ。ね?ひーちゃんもみくもそう思うよね?」
「うん。もちろん俺も大好きだよ。」
「私ももちろん大好きだよ。お母さんの方が好きだけど。」
「本当に?」
可愛いっ。マジ可愛いっす。娘よ、ナイスだ。眼を潤ませて戸惑いながらも少し嬉しそうなかつ安堵したような表情。マジ天使っ。ほんっとにマジ天使!やはり持つべきは妻と娘だな。息子なんか要らん。
だが、しかしっ!聖来なら話は別だっ。あいつはなかなか可愛い顔してるからな。女装すれば俺も平気だっ!
可愛い息子。うん。新しい境地の開拓に…
「「「「そろそろ黙ってて父さん!さっきからうるさい!」」」」
しゅん。怒られちゃいました。
てへぺろっ☆
でも、良いんです。めげないんです。俺は家族を愛しているからっ!その愛が続く限りっ!俺はこっちで妻は作らんっ!
「あの人なんで普通のことを大袈裟に言ってるんだろ。」
「本当に。ひーちゃんの言う通りね。私、怒っちゃいそう。父さん死んでて良かった。生きてたら、私は今頃柵の内にいそうだわ。」
我妻は怒らすととても恐ろしいのです。少し黙って近親そ…一家団欒を眺めておこう。
「父さん今度はいかがわしい展開を期待しているけど。どうする?聖来。」
「どうする?じゃ無いよ飾美ちゃん。っていうか何?3人とも満更でもないような顔するのやめて!ダメだよ。そんな事すると完全にR18作品になるから。その前に法に触れるよ⁉︎」
「どうしたの?みくさっきからおかしいよ。R18って言って、現実じゃ無いみたいに言ったり、法に触れるって現実のことみたいに言ったり。」
「せら兄今日は寝たら?もし不安だったら私が添い寝してあげるよ?」
「あらあら。ひーちゃん?抜け駆けは、め。だよっ?ね?」
なんか俺の思わぬ方向へと話が進んでいるんだが。……まあ、いいか。近親相…一家団欒は微笑ましいしな。
と、いうわけでやっちゃいなさい。我が息子よ。腹を括れ。そして、
漢になれぇぇぇぇぇぇぇえええええ!
「黙りやがれぇぇええ!クソ親父!」




