表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/36

模索




外灯の並ぶ

長い陸橋

小さな電球の光が

途切れ途切れの

線を 描き




暗闇の中

赤いテールランプが

辺りを照らし

滲じんでいる






【裏切り】




脳裏に渦巻く

裏切りの意味




裏切り者と

裏切られる者




どちらが

哀れなのだろうか




そして

何度 裏切られたら

終わるのだろうか




五十嵐と

初めて

出会った場所は

研修センターだった




就職が 決まり

入社式までの

数週間

研修センターに

集められた時だ




支給される昼食

食堂の中で

五十嵐に

声を 掛けられた




……もう

10年以上 前の事だ




親しみやすい

人間では ない俺に

声を 掛けてきた

五十嵐




今なら

理解出来る




五十嵐は

根本と俺を

重ねていたのだろう




そして

大学時代の

後輩を

紹介してくれた

五十嵐




どんな言葉で

後輩に 俺の事を

伝えたのだろうか




人より勝る

取り柄も なく

面白みも

何もない俺に

五十嵐が

連れて来た女性は




妻である

【真由美】




女性に奥手な俺と

軽快な会話もなく

寄り添い続けた

唯一の女性は




真由美しかいない




何もかもが

仕組まれた罠に

思えてしまう




五十嵐は

真由美に

誰を

紹介したのだろうか




俺ではなく

俺に重ね合わせた

根本では

ないのだろうか




真由美と過ごした

7年間すべてが

根本のものだったかも

しれない




俺は 根本の幸せまで

奪い取ってきたのでは

ないだろうか




行動力のある

五十嵐が

職場で 学んだ

技術を 活かし

独立の話が

浮上した時




俺は 賛成も反対も

しなかった




五十嵐が 抱く

夢と憧れへの

【挑戦】

輝かし

未来予想図を語り




床に額を 擦り付け

何日も 頭を

下げ続ける

五十嵐の姿に




根負けしたのは

真由美だった




真由美が

涙を滲ませ

五十嵐の為に

頭を 下げた心に

揺さ振られたのを

覚えている




肩書だけの

共同出資者として

連帯保証人に

署名したが




俺は 会社を辞めず

経営に携わる事も

協力する事も

何も せずに




経営難に苦悩する

五十嵐を

見て見ぬふりをして

見捨てた




それは

嫉妬だった

気が する




夢も希望も

見つけ出せない

俺が 抱いた

五十嵐への

嫉妬だったのだろう




五十嵐の為に

真由美が

流した涙すら

疑い出してしまう




繋がらない

携帯電話




殺害日の呼び出し




【五十嵐】と【真由美】




このゲームは

いつから

始まって

いたのだろうか




この計画を

実行する為に

嘘偽りの結婚を

したのだろうか




……7年間

裏切られて




いたのだろうか




根本の為に

鳴咽して

泣き崩れ落ちた

宮内




……俺の為に

涙を 流す人は

いるのだろうか







帰る場所すら

失った俺は




根本の為に

用意された

根本が 住むべき

場所へ




帰るしか

残されていない




死ぬべき者は

【多村 雅一】





根本ではなく

俺なのだろう




俺に残された

償いの道は




ただ

ひとつ




警察に出頭し

根本の潔白を

晴らし




根本を 宮内へ

返す事




【信じるしかない】




そう告げた

宮内の言葉に

答える事が




残された道




後は

黙秘を 続けばいい




口を閉ざした

貝殻のように




生命を失った

貝のように





犯罪者は

俺 ひとりで

いい





偽りの愛でも

俺の命を

引き継ぐ




掛け替えのない

結晶を

産み育てた事実は




真実だと

信じたい




………例え

子種が

俺のものでは

なくても




『パパ』




そう呼んでくれる

娘達の声は




確かに

俺に向けられた

言葉だったはずだ



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ