模索
外灯の並ぶ
長い陸橋
小さな電球の光が
途切れ途切れの
線を 描き
暗闇の中
赤いテールランプが
辺りを照らし
滲じんでいる
【裏切り】
脳裏に渦巻く
裏切りの意味
裏切り者と
裏切られる者
どちらが
哀れなのだろうか
そして
何度 裏切られたら
終わるのだろうか
五十嵐と
初めて
出会った場所は
研修センターだった
就職が 決まり
入社式までの
数週間
研修センターに
集められた時だ
支給される昼食
食堂の中で
五十嵐に
声を 掛けられた
……もう
10年以上 前の事だ
親しみやすい
人間では ない俺に
声を 掛けてきた
五十嵐
今なら
理解出来る
五十嵐は
根本と俺を
重ねていたのだろう
そして
大学時代の
後輩を
紹介してくれた
五十嵐
どんな言葉で
後輩に 俺の事を
伝えたのだろうか
人より勝る
取り柄も なく
面白みも
何もない俺に
五十嵐が
連れて来た女性は
妻である
【真由美】
女性に奥手な俺と
軽快な会話もなく
寄り添い続けた
唯一の女性は
真由美しかいない
何もかもが
仕組まれた罠に
思えてしまう
五十嵐は
真由美に
誰を
紹介したのだろうか
俺ではなく
俺に重ね合わせた
根本では
ないのだろうか
真由美と過ごした
7年間すべてが
根本のものだったかも
しれない
俺は 根本の幸せまで
奪い取ってきたのでは
ないだろうか
行動力のある
五十嵐が
職場で 学んだ
技術を 活かし
独立の話が
浮上した時
俺は 賛成も反対も
しなかった
五十嵐が 抱く
夢と憧れへの
【挑戦】
輝かし
未来予想図を語り
床に額を 擦り付け
何日も 頭を
下げ続ける
五十嵐の姿に
根負けしたのは
真由美だった
真由美が
涙を滲ませ
五十嵐の為に
頭を 下げた心に
揺さ振られたのを
覚えている
肩書だけの
共同出資者として
連帯保証人に
署名したが
俺は 会社を辞めず
経営に携わる事も
協力する事も
何も せずに
経営難に苦悩する
五十嵐を
見て見ぬふりをして
見捨てた
それは
嫉妬だった
気が する
夢も希望も
見つけ出せない
俺が 抱いた
五十嵐への
嫉妬だったのだろう
五十嵐の為に
真由美が
流した涙すら
疑い出してしまう
繋がらない
携帯電話
殺害日の呼び出し
【五十嵐】と【真由美】
このゲームは
いつから
始まって
いたのだろうか
この計画を
実行する為に
嘘偽りの結婚を
したのだろうか
……7年間
裏切られて
いたのだろうか
根本の為に
鳴咽して
泣き崩れ落ちた
宮内
……俺の為に
涙を 流す人は
いるのだろうか
帰る場所すら
失った俺は
根本の為に
用意された
根本が 住むべき
場所へ
帰るしか
残されていない
死ぬべき者は
【多村 雅一】
根本ではなく
俺なのだろう
俺に残された
償いの道は
ただ
ひとつ
警察に出頭し
根本の潔白を
晴らし
根本を 宮内へ
返す事
【信じるしかない】
そう告げた
宮内の言葉に
答える事が
残された道
後は
黙秘を 続けばいい
口を閉ざした
貝殻のように
生命を失った
貝のように
犯罪者は
俺 ひとりで
いい
偽りの愛でも
俺の命を
引き継ぐ
掛け替えのない
結晶を
産み育てた事実は
真実だと
信じたい
………例え
子種が
俺のものでは
なくても
『パパ』
そう呼んでくれる
娘達の声は
確かに
俺に向けられた
言葉だったはずだ




