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意外性



珈琲を口に含み

黒い床に落ちた

小さな紙飛行機を

眺めていると



「ニュースやるわよ」



聡美が

リモコンの

ボリュームを

上げた




画面に 原稿を読む

アナウンサーが

殺人事件の内容を

読み上げると

テロップに

[容疑者 遺体発見]

の文字が 出る



…そして

容疑者の親族として

顔を伏せた上半身が

写し出されたのは





……母だった



……何故だ?



…何故 妻ではなく

……母なんだ





大学生になり

一人暮らしを

始めてから

今まで




10年以上

一緒に 暮らしていない

母が ……何故

マイクを

向けらているんだ




実家の近所が映り

見覚えのある

顔見知りの主婦が

過去の俺を 語り




数秒後には

アナウンサーの顔が

映し出され

原稿を 読み終えた




チャンネルを

回す聡美が

ニュース番組を

探したが



やはり

情況は同じく

実家が

映り込む画面下に



[故多村雅一 自宅前]



レポーターが

当然のように



『多村雅一容疑者

自宅前より

お伝えしました』





………容疑者

…自宅……前…?




……会社への

配慮なのか?






……意外な結果に

茫然自失に なった




…………

……




携帯電話の

短縮番号を

押す




『……現在

お客様の都合により

この電話番号は

使用停止しております』




何度も

同じアナウンスが

流れる




携帯電話に

表示された

《真由美》の文字




………何故だ



「繋がらないの?


奥様でしょ?

私の携帯から

掛けてみる?」




聡美が

携帯電話を

差し出した




「……解約…されてる」



「解約?なんで?」



「……わからん」




報道陣に

追い回され

顔を隠し

疲れ切った妻を

画面を通して

確認したかった




俺の電話に

出られない

理由を

確信する為に……




しかし

予想外の映像が

流れ



そして

唯一の

連絡手段まで

失った




いったい

妻に何が あった




本気で

俺が 死亡したと

思っているのか?



妻と交わした

最後の会話




妻は

迷いもなく

告げた言葉は




  『信じてる』




……確かに

そう 答えた




わずか 数十時間後

遺体確認を

した妻




簡単に

夫の死を

受け入れるだろうか




………遺体確認?




実際に 妻が

遺体確認

したのか?




報道陣に

囲まれたのは

母だ




遺体確認は

母が 行ったのかも

しれない



………何故?




鞄から

メンソールの

煙草を

取り出した聡美が




煙草に火を点け

煙りを 吐き出し




「聞いてもいい?」



「ん?」



「奥様とは

上手く いってたの?」




聡美の真剣な

眼差しに

胸を射抜かれる



謎解きの

キーワードを

隠していては

解答は 出ない



縦横のマスを

埋め合わせ

答えを 導く

クロスワード




今更

聡美に

隠す必要も

ないだろう




これだけ

醜態を曝したのだから



「妻とは 別居している」



「……別居」



「…夫婦不仲で

別居した訳では ないよ」



「……単身赴任?」



「…そうだな

単身赴任と言えば

格好が つくが


……借金だ」



聡美が

煙草を吸い込み

溜息混じりに

煙りを 吐き出す



「金額は?」



「……八千万」



驚いて

目を見開いた

聡美が 顔を向け



「八千万!?」



繰り返した




冷静さを

取り戻すように

ゆっくりと

落ち着いた声で



「借金が 原因で

別居したのは 何故?」



煙草の箱を

逆さに

テーブルの門で

数回 叩き



煙草を一本

取り出し

口に くわえる



「…返済額が

給料を 上回る


家族四人

生活するには

厳しくてな


いくら切り詰めても

生活費に足が出る



……妻も 懸命に

やり繰りしてくれたが

限界を超えていて


精神的に 参っていたよ」



「…そう…なんだ

……大変だったね」



「だから

妻の実家に

妻と子供達を

預けた


別居理由は

そんな所だ」



「……奥様の実家に


……実家へは

多村さんが 決めたの?」



「いや 妻の方だが


妻と言っても

正式に 預かると

決めたのは


妻の両親かもしれない


妻が両親に相談し

見兼ねた両親が

提案してくれた


…そんな感じだな」




灰皿に煙草を

押し当て

煙草を 消す聡美が

両肘をテーブルに

立て頬杖を つく



「……奥様は

相当 苦しかったのね


別居して

どれくらい?」



「……半年…かな」



「…半年…か

半年……半年ねぇ」



唇を尖らせ

不満そうに

呟く



「…半年に意味が

あるのか?」



頬杖を

ついたまま

顔を向けた

聡美が 鼻を鳴らし



「女性ってね

離婚して 半年経てば

再婚できるのよ」




チョコレートの

包みを 開き

口の中へ

投げ入れた聡美が

続ける



「離婚してればの話よ


もし離婚してたと

想定するとね


つじつまが

合うじゃない」



「つじつま?」



「報道番組で

容疑者の遺族として

多村さんのお母様が

画面に映し出されても

仕方ないわ


…独身者の身内ならね」




……離婚…?



………離婚届か!



「……その可能性

…有り得るな」



「…どう言う事?」



「契約させられた

妻の父親に


……妻と子供達を

預ける時


三年間で 借金返済の

目通しが つかなければ

離婚を 承諾する契約書


『離婚届』を

……書かされた」



「………それって

……口実じゃない?

『離婚届』

書かせる為の嘘」



「……冗談だろ

…………」






……そうなのか?



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