整頓
………確か
…給料日
銀行のATM機で
返済振り込みを
して
……いつも通り
銀行の隣りにある
煙草屋の自販機で
……煙草を買った
……
………
金融機関なら
振り込み先の
銀行名も
支店も
簡単に
調べがつく
一年以上
同じ支店から
振り込まれていれば
尚更だ
数カ月
銀行の前で
監視していれば
俺の行動パターンは
だいたい 解るだろう
…銀行を出て
煙草屋の自販機で
煙草を買い
…そして 必ず
銀行の駐車場で
………煙草を吸う
銀行の裏側にある
駐車場
いつも
数台の車が
止まっているが
あまり 人と
鉢合わせる事が
なかったからだ
人影の少ない
銀行裏駐車場
………頭を殴り
意識の薄れた
無抵抗の男一人
車の中へ
押し込むのは
簡単な事だろう
……ワゴン車ならば
……車の鍵を
刺し込んだ時に
後頭部を殴り
ワゴン車に
押し込める
男二人居れば
充分 可能だ
一瞬 意識が
飛んだ時にでも
クロロホルムで
口を塞ぎ嗅がせれば
意識が すぐに
戻る事は ない
…ワゴン車と
俺の車に 別れて
運転すれば
二台同時に
根本のアパートへ
向かえる
そして
根本の部屋へ
俺を運び込み
俺の車を
アパートの前に
駐車し
ワゴン車で
去ったのだろう
……ここからが
問題だ
……まず 最近に
何が あった?
…………メールだ
メールが 届き
着信音で
目覚めたはずだ
メールを確認すると
一通目のメールは
“テレビを見ろ”
…この時点で
報道番組に
殺人事件が 流れていた
給料日が 25日なら
当然 26日になる
……22日 午後9時
死亡推定時刻
翌日 発見された
可能性が ある
23日…殺人事件発見
そして 24日
司法解剖の結果が
明確なものとなり
《絞殺》が
正式に 発表されるだろう
警察による
聞き込みや
情報収集
本格的な
捜索が 始まり
常連客を 探し回る
千葉県警が
東京に住む
[多村 雅一]を
捜索する頃は
………25日頃
俺は すでに
拉致された事で
逃走者として
自宅には
帰宅していない
…筋書き通り
容疑者として
出来過ぎた状況を
作られていた事に
なるだろう
………いや
待て
何か 忘れている
………なんだ?
携帯電話を開け
メールを
読み返す
二通目のメール
“殺人容疑者になり
逃亡してみませんか”
………そうだ
俺は この時点で
容疑者になる
選択を 迫られたはずだ
………もし
[NO]と
選択していたら
………どうなって
いたんだ?
携帯電話を
テーブルに置き
腕を組むと
電気ポットの
湯が沸いたらしく
珈琲を運ぶ聡美が
テーブルに
カップを置き
「お待たせ」
隣りの座椅子に
座る
「……なぁ 聡美
もし 俺が
身代わり犯人に
ならないと
答えていたら
……どうなる?」
コンビニ袋から
チョコレートを
取り出し
「……そうね
まず 私と
出会う事は
確実に
なかったわね」
封を開けた
チョコレートを
差し出した
確かに
その通りだ
逃亡する事もなく
自宅に帰り
警察に
任意同行を求められ
事情聴取されたとしても
殺害日のアリバイが
曖昧でも
[栗原 智子]との
接点が ない
会社に聞けば
殺害日以外は
出社している事実と
社員寮生活
[栗原]に逢いに
千葉まで
出掛けていれば
社員寮の住民は
不信感を抱くだろう
逆に言えば
不信感を抱く理由は
まったく ないに
等しい
ましてや
借金まみれの
俺が 千葉まで通う
余裕すらなかったと
証言したかも
しれない
それが
事実だとしても
報道番組で
[多村雅一]
名前と顔写真が
流れ
《容疑者》にされ
無断で会社を
休んだとしたら
事実は 確実に
ねじれ曲がる
……多額の借金を
抱えた俺に
不信感を抱き
事実無根の状況が
浮上するだろう
会社側も
営業に回っている
時間帯を 調べるかも
しれない
…………疑わしげに
チョコレートの
包み紙を広げ
テーブルの上で
擦っていた聡美が
「でも
有り得ないわね
多村さんが
逃亡者に
ならないなんて」
「………何故だ?」
「だって 報酬 一億よ
断る人 いるかしら」
「……そうだな」
「どんなに働いても
一億円なんて 大金
手に入らないもの」
「……家族を
犠牲に してもか?」
チョコレートの
包みで 小さな
紙飛行機を
折った聡美が
「三日間ならね」
紙飛行機を
飛ばした




