捜索
メールに書かれた
根本の実家
住所を辿り
着いた場所は
木造建築の
古い貸家が
密集していた
この貸家の中に
根本が暮らした
家屋が あるのだろう
平屋建ての
小さな貸家
根本は
どんな少年時代を
過ごして
きたのだろうか
背丈の低い
垣根が並び
錆び付いたトタンの
囲いが ある
貸家の一角
敷かれた砂利が
車のタイヤに
えぐられ
剥き出しになった
土が見えていた
……あまり
裕福な家庭では
なかったのかも
しれない
ゆっくりと
車を走らせながら
眺めた
根本の実家の
印象は
物悲しいものだった
近くの小さな
公園脇に
車を 停め
シートを倒す
「……根本…か…」
会った事もない
ただ 似てると
言うだけの男に
何故か 情が
沸いて来る
幼少時代の根本が
あの小さな貸家で
笑い 泣き 怒り
育ってきた姿が
脳裏に浮かぶ
「…他人の空似か…」
助手席に
座っていた
聡美が 体を
前に起こし
「写真 貸して」
「写真?」
「根本の写真よ
女性と写っていた写真
近所の方に
聞いてみる」
返事を待たずに
セカンドバックを
開けた聡美は
写真を 取り出し
「行ってくるね」
背中越しに
言葉を告げて
車を 降りた
砂利を踏む
聡美の足音が
離れて行く
何故 そこまで
行動する
意味が あるのか
正直 わからなかった
根本の住所を
本屋で買った
地図で探す
番地まで
明確に記入されて
いない
片手に乗る地図
だいたいの場所を
指差すと
散らばった印が
一カ所に まとまる
小中学校の
幼馴染みの家
そんな所だろうか
ボールペンで
印の上に
×印を書き込む
そして
年賀状を取り出し
×印を書いた
住所の年賀状に
×印を 書き込んだ
残った年賀状は
……多分
高校時代の友人達
[根本の写真]
女性と並び
無表情で写る
根本の顔
[白縁の古い写真]
聡美に言われ
改めて
写真を見た時
根本と並ぶ女性が
とても
若々しく見えた
あの写真は
高校生の根本
かもしれないと
そんな気が
していた
学生時代
この町で過ごし
あの小さな貸家で
暮らした時が
根本にとって
一番いい思い出
なのだろう
×印の年賀状を
省き
残った年賀状の
文章を 読み
そして 一枚
繊細な文字の
年賀状に
目を止める
送り主
[宮内 利生]
…ミヤウチ トシオ
……男か
苦笑しながら
年賀状の束から
[宮内]のハガキを
探し出して
抜き取る
全部で五枚
宮内からの年賀状が
あった
窓を叩く
音が聞こえ
顔を向けると
ドアを開けた
聡美が 車の中へ
外気の冷たい空気と
一緒に 入ってきた
「……寒い」
ガクガクと
震えながら
暖房の熱風に
手をかざす
「何してたの?」
区分けした
年賀状の束が
あちこちに
置かれているのを
疑問に思ったのだろう
[宮内]の
年賀状を残し
他の年賀状を
ひとまとめにして
セカンドバックに
しまい込んだ
「根本情報は
集められたのか?」
少し意地悪く
訪ねると
浮かない表情で
助手席のシートに
もたれた聡美が
「いい情報では
ないけどね」
重い溜息を
零した
「根本一家と
長い付き合いのある
年配のおばさんに
会ったの
……貸家の周り
うろうろしてたら
『どちらさん?』って
向こうから
声掛けらちゃった
…不審者だと
思われたみたい」
「……それで?」
不審者には
触れずに
話を進めると
横目で睨む聡美が
話を続ける
「先月 根本の母親が
亡くなられて
根本家は 貸家を
引き払ったんだって
……それでね
亡くなるまで
病院に
長期入院してたらしいわ
末期癌だって」
「……癌か」
「……でね
保険に
加入していなかった
らしいわ
高額な医療費を
根本が 支払って
いたみたい
親孝行な息子だったて」
聡美は
根本の写真を
眺め
溜息をつき
「癌治療費って
どれくらい
掛かるんだろう」
「……さぁ」
「長期入院だと
かなり高額の料金に
なるわよね
……根本一人で
払い続けて
いたのかしら」
高額医療が適応され
戻り金が あったと
予想しても
病院側に支払う額が
減る訳ではない
想像を超える
巨額な金額を
毎月支払って
いたとしたら
給金だけでは
足りず 金融機関に……?
……根本の自殺は
借金苦なのか?
…いや
違う
【身代わり殺人犯】
報酬として
賞金を 受け取る
予定だとしたら
……借金苦で
自殺など
しないだろう
……借金
やはり
【俺】と【根本】の
共通点は
…………借金だ
金融機関に
流れている
ブラックリストから
偶然にも
似過ぎている
俺達が
【選抜】された
確率が 高いのでは?
「……聞いてる?」
聡美の声に
慌てて
聞き返す
「……え?」
「だから 根本の母親が
入院してた病院を
教えて貰ったのよ
入院費の支払い
残っているか
確認してみる?」
「………そうだな」
「じゃあ まず
病院の電話番号
調べて……」
「………病院側は
教えてくれるのか?」
聡美は
疑いもなく
平然と
「親戚のふりして
掛ければ いいのよ
『久雄の体調が悪く
代理人として
支払いに行くので
支払い残金を
知りたい』
とか
適当に 言えば
大丈夫よ」
呆気に取られる
何処から
そんな悪知恵が
思いつくのだろう
そして
意外にも
簡単に病院側から
解答が貰えた
『全額返済済み』




